電車

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電車の一例</br>南海6300系電車</br>先頭部の屋根にあるパンタグラフから電気を取り入れる。
貨物電車の一例</br>JR貨物M250系 (空車状態)

電車(でんしゃ)とは、「自走式電動客車」、および事業用車を含む「自走式電動貨車」の略語である。

単独、または複数の客・貨車に動力となる電動機を装備し、かつ、それらを制御する運転台を有し、急勾配線区などを除く通常の運転に際し、機関車などの動力車を必要としない鉄道車両である。

機関車のみが動力車である動力集中方式に対し、小型の動力を各車に分散配置することから、気動車と共に動力分散方式と呼ばれる。

英名にについては下記#「EC」と「EMU」を参照。

日本語の「電車」という言葉は、電動機を駆動するための電力が車両外部から供給され、集電装置により取り込むものと、車載の蓄電池を動力源とする車両のみを指し、車上の内燃機関発電機を稼動させ、それにより得られた電力で電動機を駆動するものは含まない。また、電車によって編成された列車電車列車)も「電車」と呼ばれる。

本項では無軌条電車(トロリーバス)車両については割愛する。

目次

[編集] 概要

主として旅客用として用いられるが、荷物車郵便車事業用車両の中にも電車の分類に含まれるものがあり、また貨物電車も少数ながら存在する。

日本の旅客輸送では、電化区間では新幹線を始め、都市周辺の通勤路線や地方の在来線に至るまで電車主体の運行であり、非電化路線の気動車とともに動力分散方式が主流となっており、機関車牽引の列車は寝台列車およびイベント用などの一部の臨時列車以外には殆ど見られない。世界では機関車牽引、または推進による動力集中方式が主流であるが、日本と同様に電車などの動力分散方式が見られるのは、勾配や急カーブの多い路線を有するということで共通するイタリア国鉄や、ホームの有効長に限りがあり、起・終点での頻繁な折り返しのある地下鉄、都市中心部の中量輸送手段であるピープルムーバーなどの例がある。

日本では都市部の鉄道がほとんど電車で運行されているため、「鉄道」を意味する言葉として用いられることが多く、一般人の会話のみならずテレビ番組などのメディア、果ては鉄道職員の案内放送においてさえ、気動車や客車による列車を「電車」と紹介する誤用が見られる。特にメディアにおいては、貨車までも電車として紹介するケースすら見られる。

この援用で、私鉄・近距離で運行されるものに「京成電車」・「京急電車」・「湘南電車」・「名鉄電車」・「阪急電車」・「阪神電車」などのように「電車」を路線名の代わりに用いられることがある。特に関西地区では案内表示板にまで「~電車」が用いられるほどだが、関東地区などの場合一部の看板以外ではあまり用いられない。

なお、2006年4月1日一畑電気鉄道が鉄道事業を子会社の一畑電車に分離して、「電車」を社名に含む鉄道事業者が久々に復活した(戦前には大津電車軌道など、「電車」を社名に含む鉄道会社がいくらか存在した)。

また、国鉄JRの、主に大都市近郊で、主要駅のみに停車し比較的中・長距離を走るものを「列車」、短距離を走り各駅に停車する物を「電車」と呼んで区別することがある。前者はかつて機関車牽引列車のみであった一方で、後者は比較的早い時期から電車により運転されたことの名残であるが、現在はどちらも旅客列車は電車で運転されることがほとんどである。

一方、地方では国鉄~JRを「汽車」・「列車」と呼び、私鉄路面電車を「電車」として区分することもある。地方においては営業距離の短い私鉄の方が電車の導入が早かったことに起因しているが、特に後者には気軽に乗れるものを指す意味が含まれているとされる。東北北海道などでは国鉄線の列車本数が少ないこともあり、日常的に「電車」を含めた列車全体が「汽車」と呼ばれていた。テレビメディアの影響で「電車」と呼ばれる機会も増えてきたものの、現在のところ「列車」「(単に)JR」という呼称が一般的である。またJRによる通勤・通学を「汽車通」と呼ぶなど、「汽車」も根強く残る。

国鉄が運行していた都市部の「電車線」の列車は、古くは鉄道院時代の「院電」、鉄道省時代の「省電」を経て、「国電」の通称で親しまれており、昭和30年代頃までは、中・長距離用の「列車線」に比べ、運転本数が多く便利なことから「便電」、また、職員を中心に「国鉄においても下駄のように気軽に乗れる」ことから「下駄電」の愛称も用いられていた。

なお日本における電車の沿革は、日本の電車史も参照のこと。

[編集] 「EC」と「EMU」

ケルン中央駅に並ぶ
ICE 3(左)とタリス 2
ロシアの新旧EMU
ER2K(左)とER2

電車は、2通りの英訳がなされる。

  1. Electric Car 略称:EC
  2. Electric Multiple-Unit 略称:EMU

「Electric Car」は、通常、路面電車等で用いられる単行、もしくは2、3両程度の、軽便な軌道用の車両を指す。しかし、日本ではその導入の由来、発展の経緯から、すべての電車を「Electric Car」としている。

一方、「Electric Multiple-Unit」は、主にヨーロッパ圏で使用される言葉であり、「Multiple-Unit」には、動力分散方式という意味がある。しかし、TGVとその派生車両や、ICE 1、2のように、無動力の客車を編成両端の、ほとんど機関車とも言える動力車ではさんだものや、逆にオランダ国鉄のように、客車列車の一端の電気機関車に若干の客席を設けたものなど、日本での分類には当てはまらない形態も多い。TGVやICE 1、2の中間車は、通常の機関車による牽引・推進運転には対応しておらず、必ず専用の動力車と固定編成が組まれるが、日本では通常、この形態を「電気機関車+客車」の、動力集中方式として認識される場合が多い。

また、新幹線用電車は「Trunc line Electric Car」(略称:TEC)であり、このことからも、日本式の「電車」は「EC」であり、「EMU」と混同するのは好ましくない。

[編集] 構造

※ここでは、電車すべてに共通的な内容についてのみ述べる。下記「電車の分類」の項で掲載されている各記事も参照されたい。

[編集] 動力

線路上空に設けられた架線、または線路脇に設けられた第三軌条に接した集電装置(架線の場合は大半がパンタグラフで、ごくまれにトロリーポールまたはビューゲル、第三軌条方式の場合は集電靴)から、また、蓄電池式のものは蓄電池から電流を車両内の回路へと取り入れる。取り入れられた電流はまず断流器を通り、制御系(後術)の各機器へと流れる。交流電流を使用する場合は、制御系を通る前に整流器を通り、交流を直流に整流する。

続いて制御系の各機器を通った上で駆動系へと電流が流れる。流れた電流により、動力台車に設置されている主電動機を駆動することにより、電車が走行する。古くから用いられている一般的な電動機は、回転運動を歯車により車軸へ伝達し、車軸が回転することにより走行するが、リニアモーターを用いた電車の場合は、動力台車内の可動電磁石と線路上の固定電磁石(リアクションプレート)を使い、直線運動を起こさせることにより走行する。

[編集] 制御

複数車両が連結された場合でも、通常は総括制御である。すなわち、先頭車の運転席に設けられたマスター・コントローラー(マスコン)を操作することにより、2両目以降の車両にも電気信号によって指令が送られ、編成中のすべての車両の電動機の駆動や電気ブレーキが可能となる。ただし、直接制御方式の場合は、総括制御を行わず、2両目以降の車両にも運転士が乗り、先頭車の運転士からの指示に従い、協調運転を行う必要がある。ただし、車両間に高圧線を引き通し、総括制御を行った例もある。

電気信号は、車両の連結面の下部に設けられているジャンパ線や連結器下部に備わる電気連結器(電連)を介して送られる。

[編集] ブレーキ

日本の鉄道車両では、法規上、2系統以上のブレーキを装備することが義務付けられているため、電車には、他の鉄道車両でも一般的な、留置用の機械ブレーキと、制動用の空気ブレーキが必ず備えられている(機械式ブレーキ以外を持たない一部の路面電車などの古典車両と、電気ブレーキのみを常用して停車直前に機械式ブレーキを用いる近年のエアレス式超低床電車を除く)。

電車の空気ブレーキは、単行電車では直通ブレーキ、連結運転が行われるようになると自動ブレーキが用いられるようになる。いわゆる高性能電車・新性能電車では電磁直通ブレーキが一般化し(日本では1950年代から)、その後電気指令式ブレーキに移行した。現役車両では主に後2者が用いられている。現在では、これらの常用ブレーキの他、常用ブレーキの異常に備え、別系統の空気ブレーキである、直通予備ブレーキが設置されている。これは事業者によっては保安ブレーキなどの名称で呼ぶ場合がある。

そのほかに、走行用電動機を利用した電気ブレーキを持つものが多く、電動機の発生電流を車上の抵抗器で熱に換える「発電ブレーキ」と、架線や第三軌条に返す「電力回生ブレーキ」に大別できる。このほかの電気ブレーキには、電磁誘導を利用した「渦電流ブレーキ」、電磁石レールに吸い付ける「電磁吸着ブレーキ」などがある。

[編集] 動力以外の電源

室内灯や冷暖房などのサービス電源用として、架線から取り入れた電力により電動発電機または静止形インバータ装置を作動させる。

[編集] 長所・短所

機関車客車を牽引する列車の方式(動力集中方式)に比較して、以下のような特徴が挙げられる。

[編集] 主な長所

  • 動輪など走行装置を多数分散させていることからのメリット。
    • 重量あたりの牽引力を大きくでき、加速性能が良い。
    • M:T比にもよるが、両数の増減による編成としての出力特性の変化が少ない。
    • 一部の電動車が故障しても、運転が続けられるため冗長性が高い。
    • 電動機を制動用発電機として使えるため、ブレーキシューやパッドの交換周期が延長でき、ブレーキダストも低減できる。また、回生ブレーキとすることで、運動エネルギーの一部を回収できるため省エネ効果が高い。
  • 自走でき、始発駅や終着駅で方向転換(折り返し)の際に機回しが不要なため、運行効率が高い。
  • 車両の重量も分散するため、線路に掛かる軸重が抑えられ、線路敷設や保線のメンテナンスコストが低い(新幹線が欧米の主流である機関車牽引の客車方式ではなく、電車方式で計画されたのは島秀雄がこの点を押したためといわれている)。

[編集] 主な短所

  • 動力を客車の床下に搭載しているため騒音や振動が客車に比べ多い。
  • 機器類の分散配置は、特に長大編成の場合、動力集中方式に比してイニシャルコスト、メンテナンスコスト共に大幅に増大する。
  • 車両ごとに役割と搭載機器が決められたユニット方式の場合、需要に応じての増車、減車が難しい。
  • 現役の電車の空気ブレーキは、ほとんどが電気指令式電磁直通ブレーキであるが、両者が混在する場合には読み替え装置が必要となる。また、電車以外では現在も一般的な自動空気ブレーキの鉄道車両と電車(203系以前の国鉄型電車などを除く)とを連結する際も、読み替え装置を用いるか電車側に自動ブレーキ機器を仮設する必要がある。
  • ブレーキ系以外に、制御回路やサービス系機器の引き通し線の規格が違っていると相互の連結が出来ないので、営業列車の分割・併合を頻繁に行なう事業者では、異系列の電車の間でこれらの規格を統一するか読み替え装置を搭載しておかないと、車両運用に大きな制約を受ける。

[編集] 電車の分類

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズに、電車に関連するカテゴリがあります。

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