雷
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雷
- (かみなり)自然現象の一種。別称、稲妻(いなずま)・いかづち。本項で述べる。
- (かみなり)日本の名字の一つ。
- (いかづち)関西鉄道に在籍した蒸気機関車・形式14の愛称。国鉄2100形蒸気機関車を参照。
- (いかづち)旧日本海軍が保有した駆逐艦の艦名。雷 (雷型駆逐艦)(初代)、雷 (吹雪型駆逐艦)(2代目)を参照。
- (いかづち)日本相撲協会の年寄名跡のひとつ。雷 (相撲)を参照。
雷(かみなり)は、自然現象の一種で、上空と地上の間に電位差が生じた場合に放電により閃光や轟音が引き起こされる現象である。主に天気が雨の場合に発生しやすい。季語としては夏を表す。日本式天気図においては、「過去10分以内に雷電または雷鳴があった状態」を雷としている。また、特に地上への落雷を伴う場合は雷強しとすることもある。
古語や方言などでは、いかづち、ごろつき、かんなり、らいさまなどの呼び名もある。
雷そのものの事を稲妻(いなずま:古来の表記は「いなづま」)とも呼び、雷の光を稲光(いなびかり)、雷光と呼ぶ。稲妻は秋の季語である。稲妻・稲光の語源については、日本では稲が開花し結実する旧暦(太陰暦)の夏から秋のはじめにかけて、雨に伴い雷がよく発生するため、稲穂は雷に感光することで実るという俗信が生まれた。そこから雷を稲と関連付けて、稲の「つま」すなわち「いなづま」(日本の古語では「つま」は男女を問わず配偶者の意味)、稲光と呼ぶようになったといわれている。
雷を発生させる雲を雷雲と呼ぶ。雲内での放電を雲間放電 (cloud to cloud lightning; CC; inter cloud lightning; IC; cloud flash; CF)、雷雲から地面への放電を対地雷 (cloud to ground lightning; CG) と呼ぶ。対地雷には、上向きと下向き、正極性 (+CG) と負極性 (-CG) の分類があるから、対地雷は結局4種類ある。
近年(1980代~)では、レッドスプライト等の雷雲上空の発光現象も発見されている(中間圏発光現象)。
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[編集] 雷と神話
古来より、雷は神と結びつけて考えられることが多かった。
ギリシャのゼウス、ローマのユピテル(ジュピター)は天空の雷神であり、最高神である。マライ半島のジャングルに住むセマング族でも雷は創造を司る最高神であり、インドシナから南中国にかけては敵を滅ぼすため石斧をもって天下る神として落雷を崇める。欧米ではカシが特に落雷を受けやすい樹木とされたので、ゼウス、ユピタス、北欧神話のトールの宿る木として崇拝した。欧州の農民は住居の近くにカシを植えて避雷針がわりとし、また犬、馬、はさみ、鏡なども雷を呼びやすいと信じたので、雷雨が近づくとこれらを隠す傾向があった。雷雨の際に動物が往々紛れ出ることから雷鳥や雷獣の観念が生まれた。アメリカ・インディアンの間では巨大な鳥を雷獣と考え、その羽ばたきで雷鳴や稲妻が起こると伝えられた。
日本神話においても、雷は最高神という扱いこそ受けなかったが、雷鳴を「かみなり(神鳴り)」ということからもわかるように、雷を神々のなせるわざと見なしていた。天津神の一人で天孫降臨の前に葦原中国を平定したタケミカヅチ(建御雷、武甕槌)はそういった雷神の代表である。雷(雷電)を祭った神社に「雷電神社(上州板倉雷電神社など)」「高いかづち神社」などがあり、火雷大神(ほのいかづちのおおかみ)・大雷大神(おおいかづちのおおかみ)・別雷大神(わけいかづちのおおかみ)などを祭神としている。
日本では方言で雷を「かんだち」とも言うが、これは「神立ち」、すなわち神が示現する意である。先述した稲妻の語源が示すとおり、雷は稲と関連がある。霊異記や今昔物語にあるように、雷は田に水を与えて天に帰る神であったため、いまでも農村では雷が落ちると青竹を立て注連縄(しめなわ)を貼って祭る地方がある。
また、雷よけに「くわばら、くわばら」と唱えるのは、菅原道真(天神・天満宮参照)の屋敷が京都の桑原にあり、そこはどんなに落雷があっても一度も雷の被害を受けなかったためと伝えられるが、これは後世の作り話である。元来は桑の木が神聖な力を持つという信仰があったためであると考えられる。
雷神は平安時代になると、天神の眷属神として低い地位を占めるようになった。雷神は古くから美術に表現されてきたが、絵では京都建仁寺の俵屋宗達筆の障壁画、元禄時代の尾形光琳の作など、彫刻では日光東照宮、京都三十三間堂などのものが有名である。
[編集] 発生のメカニズム
雷の発生メカニズムは、主に以下のような説で説明されている。
[編集] 雷雲の発生
地表で大気が暖められることなどにより発生した上昇気流は、湿度が高いほど低層から飽和水蒸気量を超えて水蒸気が発生して雲となり、気流の規模が大きいほど高空にかけて発達する。
この水蒸気は高空に達すると氷結してあられや氷の結晶となり、上昇気流にあおられながら互いに激しくぶつかり合って摩擦されたり砕けたりすることで、静電気が生じる。この時、雲の上層には正の電荷が蓄積され、下層には負の電荷が蓄積される。
- 急激な上昇気流により低層から高空まで形成される雷雲は主に積乱雲などで構成され、熱雷(俗に夏雷)と呼ばれる。
- 同じ積乱雲でも寒冷前線上などに発生する場合、また温暖前線などで同様のメカニズムが発生した場合の雷は、界雷と呼ばれる。
- 上昇気流が台風などによる場合は、渦雷(うずらい)と呼ばれる。
[編集] 稲妻
上層と下層の電位差が拡大して空気の絶縁の限界値を超えると、電子が放出され、放出された電子は空気中にある気体原子と衝突してこれを電離させる。電離によって生じた陽イオンは、電子とは逆に向かって突進し新たな電子を叩き出す。この2次電子が更なる電子雪崩を引き起こし、持続的な放電現象となって下層へ向って稲妻が飛んでいく。
また、下層の負電荷が蓄積されると、今度は地上では正の電荷が静電誘導により誘起される。この両者の間でも、電位差がある一定を越えると放電が起きる。
これらの放電は、大気中を走る強い光の束として観測される。これは日本では稲妻と呼ばれ、地上との間の放電を特に落雷と呼ぶ。1回の放電量は数万~数十万アンペア、電圧は1~10億ボルト、電力量換算で平均約900ギガワット(=100ワット電球90億個分相当)に及ぶが、時間にすると1/1000秒程度でしかない。
この間を細かく分けると、落雷(負極性の雷)においては、雷雲から最初に伸びる光の弱い先駆放電(ステップリーダー)、大地側から迎えるように伸びるストリーマー(線条・先行放電)、両者が結合して大量の電荷が本格的に先駆放電路に流入する主雷撃、の3段階に大別され、電位差が中和されるまで放電が続く。
[編集] 雷鳴
稲妻の通り道となった部分の空気は温度が2万~3万℃にも達し、急激に膨張して、周囲に対して真空状態となる。この時の衝撃波と周囲から再び冷たい空気が流れ込む際の振動とによって轟音が発生する。これを日本では雷鳴と呼んでいる。
[編集] 雷の被害
雷の被害は、直撃雷、側撃雷、誘導雷、侵入雷等に大別される。
- 感電などによる人的な被害。雷雲発生時に野外でのスポーツ(ゴルフなど)や作業中に雷撃を受け、命を落とすことが多い。
- 変電施設などへの落雷による停電。
- 送電線への誘導雷に伴う、異常電流の発生による電気機器の損傷。雷雲発生時には電気機器をコンセントから抜くように注意を呼びかけているが、周知されておらず余り実施されていない。
- 上空を飛行中の飛行機に落雷し、機体に穴が開いたことがある。
ただし、雷は大気中に発生する現象としては、必ずしも大きな大気の撹乱を伴わないため、詳細な予報は困難であり、天気予報などにおいても予測の範囲内で注意を呼びかける(雷注意報)などにとどまっている。電力会社各社は、独自に雷雲や落雷の観測システムを持っている。
なお落雷の特性として、高いところ・先の細いところに落ちやすいことがわかっている。このことを活かして、適切な位置に避雷針を設置して落雷を誘導するという処置がとられる。建築基準法33条では、「高さ20メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。」としている。(建築基準法施行令129条の中にも同様の項目がある)都内に雷雲が発生した場合、都心で最も高い東京タワーに落雷することも多いが、周辺より高さの低い国会議事堂や、高層ビルの避雷針ではなく建物の角に落雷することもある。
[編集] 落雷から逃れる
最も確実なのは、雷注意報が出ているときは野外に出ないことである。出ざるを得ない場合、または出てしまった場合は、遠くで雷雲が見えたら室内(あるいは自動車内など)に逃げ込む。雷雲は速く発達するからである。雷鳴が聞えてからでは遅い。
45度以上に見上げる高さの木がある位置は安全と言われるが、幹や枝などに2m以上近づくと木に落ちた雷に側撃雷が発生する可能性があり危険である。
雷が近い場合、走って逃げ切れるかどうかは分からない(無論自分への落雷から逃げ切ることは不可能である)。逃げ切ったとしても落ちた場所から近過ぎると雷が曲がって近づいてくる。多少離れていても強い衝撃波を受ける。ある程度遠くにいなければ、地面に落ちた雷がそこを伝ってくる。このとき、足を開いていると地面から体を伝ってくるため、足は閉じていると良いとされている。更に、身をできる限り小さくして座ると効果はあるとされる。
[編集] 雷が落ちる場所・人的被害を受けるシチュエーション
- 雷は大抵高いもの、尖ったものに落ちるが、そういうものが傍にない場合はどこにでも落ちる。事実、海やサッカースタジアムのフィールドなどの広い場所に落ちている。
- 金属製品を身につけているかどうかは関係ない(以前は、金属製品を持たないほうがよいとされてきたが、近年関係ないことが明らかになった)。
- 家や送電線への落雷の場合、電化製品や電気を通すものを介して感電する。
- 公園などにある屋根付きの、壁のない簡単な休憩所に落ちた場合、柱に近い位置にいると屋根から伝っていた雷が飛び移って感電する。
[編集] レーザー誘雷
雷雲に向けて強力なパルスレーザーを当てて稲妻の通り道となるプラズマを発生させ、稲妻を安全な場所へ誘導することが可能である事が実験で実証されている。送電線鉄塔への落雷が原因の停電を防止する手段として期待されている。
[編集] 各地の雷
[編集] 北関東の雷
北関東地方(群馬県や栃木県)では特に夏の雷が多く「雷の銀座通り」等ともよばれる。上州(群馬県)の名物といえばかかあ天下に空っ風、それに雷である。また、やはり雷の多い宇都宮市では地域の愛称としての「雷都(らいと)」が、土産物の菓子の名前などで使われている。
[編集] 北陸地方の雷
北陸地方や新潟県などの日本海沿岸では、冬季に目立って多く発生することから冬季雷とも呼ばれる。落雷数こそ少ないものの夏季の雷より数百倍のエネルギーを持つものが確認されるほか、一日中発雷することが多く、雪やあられを伴うことが多い。また、はっきりとした落雷が無くても瞬間的な停電などの被害が出ることもある。海岸線から35km以上の内陸部では少ない。
また、冬季の雷には愛称があることが多く、雪起こし、ぶり起こし、雪雷などのような方言がみられる。
[編集] 雷に関連する故事成語
- 付和雷同
- 青天の霹靂
- 地震、雷、火事、親父
- 電光石火
- 天沢火雷風水山地
また俳句においては、「雷」「遠雷」「軽雷」は夏の季語、「寒雷」は冬の季語、「春雷」は春の季語である。
[編集] 雷に関連する作品・命名等
[編集] 小説
- 「雷桜」(宇江佐真理)
- 「雷獣伝説〈1〉闇の咆哮」/「雷獣伝説〈雪雷篇〉」(斉藤英一朗)
- 「雷神、翔ぶ」(丸山健二)
- 「雷神の剣 ― 介錯人・野晒唐十郎」(鳥羽亮)
- 「雷(いかづち)の娘シェクティ」(嵩峰龍二)
- 「遠雷」(立松和平)
[編集] 音楽
- 「雷鳴と電光」(あるいは「雷鳴と稲妻」) ヨハン・シュトラウスのポルカ
- 「雷鳴-OUT OF KONTROL-」m.o.v.e
[編集] 自動車・オートバイの車種名
- トヨタ・カローラレビン - 「レビン」(Levin)は、英語で「稲妻」を意味する語
- トヨタ・スプリンタートレノ - 「トレノ」(Trueno)は、スペイン語で「雷鳴」を意味する語
- ヤマハ・YZF1000Rサンダーエース(ThunderAce)
- ヤマハ・YZF600Rサンダーキャット(ThunderCat)
- スズキ・イナズマ
[編集] 鉄道車両
- JR貨物EH200形電気機関車の愛称、「ECO-POWER ブルーサンダー」
- JR貨物EF510形電気機関車の愛称、「ECO-POWER レッドサンダー」
[編集] 易
八卦(はっか、俗にはっけ)の中の「震」は雷に相当する。木気であり、方角としては東を指す。
[編集] 関連項目
- 避雷器
- 接地
- 雷サージ
- 大気電気学
- 雷おこし(菓子)
- エクレア
- 電撃戦
- 雷電・紫電・紫電改(日本の戦闘機)
- 雷撃(魚雷攻撃)
- 菅原道真(雷神)
- イヴァン雷帝
- 自雷也
- 雷音寺
- 雷電為右衛門
- ザ・ドリフターズ
- ドリフ大爆笑
- 高木ブー
[編集] 参考文献
- 日本大気電気学会編 『大気電気学概論] オーム社、2003年、ISBN 4-339-00751-X。
[編集] 外部リンク
| 日本式天気記号 |
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