農業機械

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農業機械(のうぎょうきかい)は、機械の一種であり、酪農業畜産業を含む農業 の現場で、人にとって苦痛、困難、不可能な作業を補助、代行するもの。農機(のうき)と略される。


目次

[編集] 農業機械の定義について

農業機械とよく似た意味をもつ言葉として農具農機具がある。

[編集] 農具

トラクターの一例

農具と農業機械とのちがいとして、

  • 農具は主として人力、畜力により作動する、比較的単純な構造をもつ道具を指す
  • 農業機械内燃機関電動機などを動力とする、比較的複雑な構造をもつ機械を指す

という点を指摘できる。農具と農業機械の区別は厳密なものではないが、

  • 農具 - 耕すための(くわ)、収穫するための(かま)、
  • 農業機械 - 耕すためのトラクターとロータリーカルチベーター、収穫調製するためのコンバイン

という分類に異議を唱える人は少ない。足踏み式脱穀機や、水力風力を動力とする精米機を農具と見なすか、農業機械と見なすか、は微妙な問題、あるいは各人の好みの問題である。

[編集] 農機具

農機具と農業機械のちがいは、農具と農業機械のちがいより一層曖昧である。人によっては、農業機械(農)と農の総称として農機具ということばを使う。

[編集] 法律上の定義

農業機械化促進法では、農業機械の定義は与えられていない。この法律は「農機具」、「農業機械化」、「高性能農業機械」を

農機具
耕うん整地、は種、肥培管理、有害動植物の防除、家畜又は家きんの飼養管理、収穫、調製加工その他農作業(これに附随する作業を含む。以下同じ。)を効率的に行うために必要な機械器具(その附属品及び部品を含む。)
農業機械化
動力又は畜力を利用する優良な農機具を効果的に導入して農業の生産技術を高度化すること
高性能農業機械
農作業の効率化又は農作業における身体の負担の軽減に資する程度が著しく高く、かつ、農業経営の改善に寄与する農業機械

と定義している。不思議なことには、この法律は「農機具」と「農業機械化」を定義し、「高性能農業機械」の定義に「農業機械」ということばを使いながら、「農業機械」の定義を与えていない。

農業機械のなかには、車両の形態をしているものもある。これらのなかには、道路運送車両法道路交通法にいう軽車両、小型特殊自動車、大型特殊自動車にあたるものもある。詳しくはこの記事の節「車両としての農業機械」を参照。

[編集] その他

軽トラックはよく農業に利用されるが(農家では資材や機材、収穫物の運搬に使われる)、これらは一般には農業機械と見なされていない。野球場の整地やゴルフ場の管理にはよく、トラクターが用いられるが、トラクターは農業機械に分類される。

カントリーエレベーターのような農業用の施設を農業機械に含めることもある。

[編集] 農業機械の特徴

農業機械の特徴として、車両の形態をするものが多いということが挙げられる。農業機械が車両の形態をするのは、農作業の対象である大地や植物を移動させることができないので、機械のほうを移動させて目的の作業を行うより仕方がないからである。この記事の節「車両としての農業機械」も参照のこと。

農業機械は雨の中、土や泥の上で酷使されるので、ある程度頑丈、堅牢につくられる。近年まで、堅牢性の観点から電子制御や電気モーターが嫌われ、カムやリンク、チェーンやベルトによる機構が好まれる傾向があった。

現在日本で発売されている乗用トラクターコンバインは電子制御を搭載している。自動車で採用された技術の1世代、2世代前にあたる、成熟した技術が用いられる。これは、悪条件下での信頼性を優先することや、農業機械では自動車排出ガス規制NOx規制が適用されないこともある。

一部の農業機械は、価格のわりに使用頻度が低いことで特徴づけられる。使用頻度が低くなるのは、農作業が季節的なものだからである。日本の本州中部の稲作農家の場合、100万円の田植機を使うのは1年に5日間、200万円のコンバインを使うのは1年に2日間、ということも珍しくない。

日本では、大型のコンバインハーベスターの価格は1000万円程度であり、大型トラック建設機械の油圧ショベル、工作機械マシニングセンタの価格に匹敵する。しかるにコンバインハーベスターは年間数十日しか稼働せず、トラックや油圧ショベルやマシニングセンタが年間数百日稼働するのとは対照的である。

[編集] 車両としての農業機械

農業機械のなかには、車輪またはクローラーを備えるなど、車両の形態をしているものもある。

トラクターやコンバインのように、車輪やクローラーをもち原動機によって移動できるものには、道路運送車両法にいう大型特殊自動車、小型特殊自動車として道路法にいう道路を運行できるものもある(ナンバープレートをつけているもの)。ただし、これを道路で運転するためには、道路交通法第3条にいう大型特殊自動車または小型特殊自動車を運転できる運転免許が必要であるし、その車両が自動車損害賠償責任保険に加入していることが必要である。

秋田県では、「農耕車限定」の大型特殊自動車運転免許の技能試験が行われている。

マニュアスプレッダーのような動力をもたないものには、道路運送法にいう大型特殊自動車、小型特殊自動車、軽車両として、自動車トラクター家畜に牽引されて道路法にいう道路を走ることができるものもある。

なお、ナンバープレートなしで道路を走る農業機械を見かけることがある。これには二つの場合がある。道路運送車両法、道路交通法に違反して、道路法にいう道路を運行している場合と、農道や旧来の里道、圃場などのように、道路法にいう道路ではない場所を走行している場合である。

発展途上国には、トラクターで荷車を牽引し、人や荷物を運ぶ自家用自動車のかわりに使う農民もいる。また、兵庫県淡路島では、改造されたトラクターが人や荷物を載せて走っていて、「農民車」と呼ばれている。日本でも、1970年代まで耕耘機で資材や収穫した農作物を載せたリアカーを牽引していた光景が、農村部で多く見られた。

農業用ではないが、カナダ製小型水陸両用車ARGOも道路運送法上は農業機械の部類に含まれている。

[編集] 農業機械の分類

農業機械の種類は非常に多い。農業の形態が多様であり、農業の形態、季節によって農作業が多様であるため、農業機械もまた多様である。

以下では、作業の種類、作物の種類、機械の形態による分類を試みる。

[編集] 作業の種類による分類

  • 汎用的な農業機械 - トラクター
  • 耕耘・整地に用いる農業機械 - プラウ(すき)、ハロー、ローラー、ロータリー耕耘機、代かき機、鎮圧機、均平機、うね立機、みぞ切り機
  • 耕土・造成・改良に用いる農業機械 - 抜根機、心土破砕機、みぞ掘り機、モールドレイナ(暗渠せん孔機)、穴掘機、バックホー
  • 施肥に用いる機 - マニュアスプレッダー(たい肥散布機)、スラリースプレッダー、ライムソーワー(石灰散布機)、プランタ(点播機)、施肥播種機、
  • 播種・移植に用いる農業機械 - 田植機、野菜移植機、トランスプランタ(移植機)、散播機
  • 防除・管理に用いる農業機械 - 噴霧機、動力噴霧機、ミスト機、散粉機、動力散粉機、散粒機、動力散粒機、煙霧機、航空散布機(航空防除)、土壌消毒機、刈払機、管理機、スピードスプレーヤー、凍霜害防除機、中耕除草機、シンナ(間引機)、動力ポンプ、スプリンクラー(潅水装置)
  • 収穫に用いる農業機械 - バインダーコンバイン、野菜収穫機、モーアー、ヘイベーラー、ロールベーラー、ウィンドローワ、脱穀機、ビーンカッター(豆類収穫機)、とうもろこし収穫機、コーンシェラ、ばれいしょ収穫機、ビート収穫機、甘藷堀取り機、甘藷つる切り機、さとうきび収穫機、らっかせい収穫機、亜麻収穫機、たまねぎ堀取り機、栗用脱穀機、らっかせい脱穀機、摘採機、条桑刈取機、特用作物堀取り機、振動収穫機、ホップ摘花機
  • 収穫物の乾燥と調製に用いる農業機械 - 乾燥機籾すり機選別機精米機、牧草乾燥機、鶏糞乾燥機、特用作物乾燥機、精穀機、モーアー、ヘーコンディショナー、ヘイテッダ・レーキ、フォレージハーベスター、ヘーベーラ、ヘープレス、ロードワゴン、ヘーローダ、ベールローダー、飼料さい断機、フォレージブローワ、サイレージアンローダー、飼料粉砕機、フィードチョッパー、ルートカッター、飼料配合機、飼料成形機
  • 家畜の管理に用いる農業機械 - 自動給餌機、搾乳機、牛乳冷却機、給水機、温水機、尿散布機、畜舎清掃機、固液分離機、糞尿処理装置、保温機、エッグリフター、洗卵選別機、畜舎消毒機
  • 育蚕に用いる農業機械 - 稚蚕共同飼育濕温調整装置、動力ざ桑機、稚蚕用自動飼育装置、壮蚕用自動飼育装置、条ばらい機、収けん機、まゆ毛羽取り機
  • 蔬菜果樹園芸(畑作)に用いる農業機械 - マルチャ、磔耕栽培装置、ハウス暖房機、蔬菜洗浄機、深層施肥機、動力剪定機、ツリータワー、果樹園用ロータリーカッター、選果機、樹園地内運搬用機、管理機
  • に用いる農業機械 - 蒸し機、粗じゅう機、じゅうねん機、中じゅう機、精じゅう機
  • 花卉特用作物に用いる農業機械 - 剪枝機、ラミー剥皮機、い草選別機、チューリップ選別機、らっかせい脱皮機
  • 林業に用いる農業機械 - 刈払機チェーンソー、集材機
  • 運搬搬送に用いる農業機械 - トレーラー、穀物用搬送機、フロントローダー

[編集] 作物の種類による分類

[編集] 機械の形態による分類

  • 乗用型機械 - 乗用型トラクター、乗用型田植機、乗用型コンバイン
  • 歩行型機械 - 歩行型トラクター、歩行型管理機
  • 定置機械 - 穀物乾燥機、籾すり機、農用裁断機
  • 携帯式機械 - 刈払機、動力摘採機、ヘッジトリマー、背負式動力噴霧機、背負式動力散粉機、チェーンソー
  • 遠隔操作機械、無人走行機械 - 無線操縦式ヘリコプター、無線操縦式草刈り機

[編集] 農業機械の歴史

[編集] 農業機械の始まり

農具と農業機械との区別は厳密なものではなく、農具から農業機械への進歩は連続的な変化であった。それでも、18世紀の蒸気機関の発明、18世紀から19世紀にかけての産業革命が農業機械の発展に与えた影響は大きい。

ヨーロッパの農業では、早くから畜力(家畜の力)、水力風力を利用した農業機械が用いられ、改良されてきた。農業機械の発展は、農業経営の大規模化と表裏一体に進んだ。18世紀末ごろから脱穀機、刈取機がつくられるようになった。これらは当初、を動力として動作した。

蒸気機関が実用されるようになってから約50年が経った1849年には、アメリカ合衆国のアーチャンボールト(Archambault)が農用蒸気機関車を製作した。これは脱穀機に動力を供給するための移動式の蒸気機関であった。

ガソリン機関が誕生した後、1889年には、アメリカ合衆国のケース会社(J. I. Case Company)によって初めて、内燃機関を搭載したトラクターが作られた。

1885年には、刈取りと脱穀を結合(コンバイン、combine)したコンバインがアメリカ合衆国のカリフォルニア州に登場した。

[編集] 農業機械の発展

[編集] 近年の農業機械

日本の水田稲作に合った田植機ハーベスターコンバインが開発された1960年代以降、日本では農業機械が急速に普及した。現在では水田稲作の機械化は完成の域に達したという声も聞かれる。

また、1980年代から蔬菜園芸(畑作)の機械化が進展し、ダイコンニンジンキャベツタマネギなど、生産量が大きい野菜の収穫機や、野菜苗の接ぎ木ロボット、野菜苗の移植機が徐々に普及している。

現在のところ、日本で今後10年の間に急速に進歩する農業機械技術、爆発的に普及する農業機械はないと考えられ、日本の農業機械は成熟した分野であると見なされる。

[編集] 資格

[編集] 参考文献

  • 浅見与七、大槻正男、坂口謹一郎、東畑精一、盛永俊太郎(監修)、農政調査委員会(編纂)『農業理化工学(体系農業百科事典第I巻)』農政調査委員会、1966年。
  • 川村登、山崎稔、田中孝、並河清、山下律也、池田善郎『新版農業機械学』文永堂出版、1993年。 ISBN 4-8300-4071-8
  • 木谷収(編著)『生物生産機械学』コロナ社、1993年。 ISBN 4-339-07630-9
  • 農林水産省生産局長通達『農作業安全のための指針』農林水産省、2002年。[1]

[編集] 関連項目

日本の代表的な農業機械メーカーを以下に紹介する。

[編集] 外部リンク

[編集] 写真と解説

  • 農業機械博物館[2](独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター農業機械研究室)
  • 農業機械の写真データベース[3]帯広畜産大学畜産科学科食料生産科学講座生産システム制御科学分野農作業機械研究室)
  • 農業歴史館農業機械館[4](農林水産技術協会)
  • 産業技術史資料情報センター・データベース [5](独立行政法人国立科学博物館)
  • 長野県農機具仮想博物館 (Nagano Pref. Farm Machines and Implements Virtual Museum)[6](長野県農業総合試験場)

[編集] 農業機械関連の研究所・団体

  • 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター農業機械化促進業務(農業機械化研究所)[7]
  • 農業機械学会[8]
  • 日本農業機械工業会[9]
  • 社団法人日本農業機械化協会[10]
  • 農作業安全情報センター[11]

[編集] 日本の農業機械メーカー

日本の農業機械メーカーの一覧は

  • 日本農業機械工業会[12]

を参照。日本の代表的な農業機械メーカーを五十音順に列挙する。

[編集] 世界の農業機械メーカー

世界の代表的なトラクターのブランドをアルファベット順に列挙する。

  • AGCO(アグコ)、Massey-Ferguson(マッセイ・ファーガソン) / / [13]
  • John Deere(ジョンディア) / [14]
  • New Holland(ニューホランド)[15]
    • 日本ニューホランド(日本法人)[16]

[編集] 農業機械関係のマスコミ

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