車掌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
目次 |
[編集] 概要
主たる業務には、走行中の車内の犯罪や迷惑行為の防止、車内の案内放送(車内放送・車内チャイム)、車内改札、ドアの開け閉め、出発・到着時の安全確認・出発合図などがある。
事故など緊急の際には、後方の列車に自列車の存在を知らせて停止手配をとり併発事故を防止(列車防護)したり、車掌弁(車掌室の非常用ブレーキレバー)を扱って列車を停止させるなど、乗客の安全を確保する役割も持つ。このため運転業務に従事する係員を意味する赤地を胸章や腕章などに採用することが多い。
急ぎの乗客で切符を購入できなかったときや、(ワンマン列車からの乗り換え、無人駅からの乗車などにより)切符を持っていない乗客の為に、携帯型の発券端末機を使用した切符類の販売(一部の往復割引切符も含む)も業務の一環として行われている。 特急列車などでは随時、オレンジカードの販売も行われる。また、無人駅(有人駅でも、深夜早朝等で、駅係員不在になる場合も含む)での到着の際は使用済みの切符の回収も行う。
乗客へのサービスを専門に行う「乗客専務車掌」(私鉄など一部は旅客専務車掌)というものがある。これは純粋に運転業務を行う車掌が、乗客の増加によって精算業務などに手が回らなくなり、その名のとおり乗客への直接的なサービスを第一とした乗務員の役職として、設けられたものである。 主な業務は車内での乗り越し精算、他会社への連絡乗車券、プリペイド式乗車カード(パスネットなど)の発売などである。なお、現在では、パスネットやスルッとKANSAI、SuicaやICOCAなどの普及によって車内精算の必要性がほとんど無くなり、多くの会社で廃止されている。
[編集] 車掌の職に就くにはどうすれば良いのか
事業者によって異なるが、入社して営業職:駅員として数年間勤務し、車掌への昇格試験を受ける必要がある。合格すると見習い生として机上講習・実地訓練を受け、成業試験に合格して正規に車掌になる。
鉄道事業者では駅員からの昇進コースのひとつに位置づけられており、車掌としての実務経験を積んでから運転士や助役への昇格試験を受ける者も多い。国鉄では車掌から専務車掌を経て車掌長というコースも存在した。
[編集] 乗務位置
鉄道の場合、車掌が乗務をする車掌室は通常、列車の最後部にあるが、特急列車などでは中間部に設けられている場合もある。
なお、ケーブルカーについてはこの例に習わない。車両先頭の乗務員は、運転士ではなく車掌である。 また、運転士は山頂駅にいる。これは機関部が山頂駅にあるためである。
[編集] 乗務人数
たいていの場合は1列車に対して1人だが、特急や新幹線などの編成が長い列車や乗客の多い列車などでは2人ないし3人といった複数人が乗務し、仕事を分担している。国鉄時代の優等列車では車掌長と専務車掌(と運転車掌)の組み合わせで乗務することが多く、夜行列車では案内や寝台の組み立て・解体を担当する車掌補も乗務していた。
[編集] 電報略号
電報略号で車掌のことを「レチ」という。これは「列車長」の略である。 ちなみに専務車掌は「カレチ」(リョカクセンムレチの略)。 国鉄時代は他に荷物列車を担当する荷扱い車掌を「ニレチ」、車掌長を「レチチ」(レチチョウまたはチーフの略)と呼んでいた。
[編集] 歴史
日本の鉄道の初期には実際に列車長と呼んでいたが、「社長」と混同する恐れがあったので「車掌」と呼ぶことになったと言われている。
1980年代中ごろまでは、貨物列車にも車掌が乗務し、列車分離などの事故時に列車防護措置を行っていた。しかし、車両の信頼性向上・列車防護無線装置や鉄道無線装置やデッドマン装置の整備により運転士だけの乗務となった。
1960年代より前は、バスや路面電車にも車掌が乗務して乗車券の販売や検札・安全確認などを行った。
[編集] ワンマン運転について
近年、路線バスや路面電車ではワンマン運転が主流となっており、車掌が乗務することはほとんどない。ただ、路線の道路事情や、観光案内、レトロ感の演出のため、車掌を乗務させている例もある。
広島電鉄では、連接車両に車掌が乗務している。車両の長さと利用者の多さから、運転士横の扉だけでは運賃徴収がさばききれないこと、またホームの安全監視を強化する目的がある。広島電鉄の車掌乗務列車では、ドアの開閉、運賃徴収は運転士と分担、回数カード、一日乗車券の販売、両替なども担当する。また、ブザーによる発車合図も行うほか、前述のホーム安全確認、自動放送を補完する意味で車内放送も担当している。そのほか、土佐電気鉄道の外国電車でワンマン機器を搭載していない車両では、車掌が乗務している。
神戸交通振興が運行しているKOBE CITY LOOP(観光周遊バス)ではレトロ感の演出と観光案内のため車掌が乗務する。運賃収受、1日乗車券の発売のほか、ドア扱いも担当する。仙台市営バスやじょうてつバスにおける狭隘路線通行の安全確保の見地から係員が添乗する路線があるが、これは「保安要員」といい、車掌とは違う。しかし、この2社も保安要員添乗以前は車掌として添乗していた。ワンマン化の際の認可条件として添乗が求められていた。
一部の鉄道路線では、運転上は「ワンマン運転」扱いだが、多客時の運賃収受対応、車内精算のために(旅客専務または特別改札)車掌を乗務させていることもある。また、不正乗車防止のための特別改札車掌が乗務する例もある。この場合、案内放送やドア扱いは運転士が行う。また、ツーマン運転ができる列車では、非常に混雑した場合、運転扱いをする車掌が臨時乗務し、ツーマン運転とすることもある。
[編集] 出発合図について
車掌は列車の出発準備ができたとき、出発させるとき、運転士に出発合図を送ることになっている。
- 客車列車(機関車牽引)の場合
- 日本のJRの客車列車では、車掌が運転士を無線で呼び出したうえ、通告により出発合図を送る。
- 例:
- 車掌:「こちらxxxx列車車掌。運転士さんどうぞ。」※xxxxには通常列車番号が入る。
- 運転士:「こちらxxxx列車運転士です。どうぞ。」
- 車掌:「xxxx列車発車!」
- (運転士:「xxxx列車発車了解。」)省略されることもある。
- 客車列車でも、JR四国のトロッコ列車のように、後述の車内ブザー式合図ができるように信号線を引きとおしてあるものもある。かつては北海道内の一部の普通客車列車(主に札幌圏)でもこの方式で行われていたことがある。
- JR以外の客車列車では、それぞれの会社の運行規則に従った合図を行う。無線通告式のほか、長笛による合図、車掌が緑旗をふり、運転士が目視確認後発車する、など様々である。
- JRグループの客車以外の列車(電車・気動車)
- 車掌が乗務する列車のうち、気動車列車および、北海道、四国、九州(九州新幹線も含む)の電車列車では、車掌が運転士に、長音一声のブザーを鳴らして出発合図を送っている(車内ブザー式) 。
- 東日本、東海(飯田線は車内ブザー式)、西日本では、旅客列車においては、全ての乗降扉が閉じている事を知らせる知らせ灯の点灯を運転士が確認することにより、車掌の出発合図とみなしている(知らせ灯式)。
- 上記いずれの方法も、発車直後に急に乗る人が現れた場合や、戸じめランプは点灯している(車両側面の開扉ランプは全消灯)が、ドアに物が挟まっている、その他事情で発車支障が発生した場合、発車合図取消の合図(ブザー乱打)の合図を送り、列車を停止させる。非常かつ緊急時には、非常停止スイッチ、車掌ブレーキ弁を操作し、非常ブレーキをかけて列車を停止させる。
- 団体・回送列車の運転や旅客扱いを行わない運転停車の際に行う出発合図は車内ブザー式による。
- JRグループのワンマン列車(ワンマン運転)では、出発の可否は運転士自身が確認する。戸しめ操作を行い、上記の知らせ灯点灯による戸閉め確認のほか、ミラーなどにより、通常、車掌が行っているホームの安全確認を運転士自身が行ったうえ、更に運転士として必要な信号確認、前方確認を行っての発車となる。車掌が乗務しない回送列車の場合、ホーム確認は運転台より後方目視で行うことが多い。
- 東海道・山陽新幹線
- 出発合図は代用保安方式または伝令法により列車を出発させるときに使用されるもので、駅係員が運転士に対して行う合図となっている(普段は駅係員からの客扱終了合図によって車掌がドアを閉めることにより、運転台戸閉めランプの点灯をもって発車合図とし、運転士は車内信号、前方確認をして列車を進行させる)。
- 私鉄各社の電車・気動車列車
- それぞれの社局に運転規則に従った合図を行うが、車内ブザー式(主に関東、東北、甲信越やなど)や、ベルを短音二打を鳴らす車内電鈴式(主に名古屋鉄道、関西)などで出発合図を行う社局が多い。
- 名古屋鉄道は、新型車両では車内ブザー短音二打式による合図になっている。また、相互直通先の名古屋市交通局鶴舞線も車内ブザー式で、相互直通運転用車両は、ATC・ATS切替スイッチの位置により、同じ合図ボタンを押しても、名鉄区間では電鈴、地下鉄区間ではブザーが作動するようになっている。同様の例として、京都市交通局東西線と近鉄京都線の例がある。
いずれにしても、車掌は、原則として、列車最後部がホーム先端を通過するまでは、非常ブレーキスイッチに手をかけ、いつでも非常ブレーキがかけられるようにしながら、窓からホームを監視する。その後、ホームに異常が無い事を指差確認し、放送などの次の業務に移る。
[編集] 女性車掌
- 路面電車や路線バスに一般的に乗務する車掌は女性が多かった。しかし、当時法律により、女性の夜間労働が制限されていたため、夜間は男性車掌が乗務していた。
- 列車の車掌は、夜勤、宿直もあり、女性の深夜労働が制限されている時代は男性がほとんどの職場だった。しかし、男女雇用機会均等法の施行により、日中乗務に限る女性車掌が鉄道会社でも登場するようになる。更に、1985年の法律改正で、女性の深夜勤務、泊まり勤務が可能になり、男性車掌と共通の勤務が組めるようになると、イメージアップ戦略もあって女性車掌の数は増加した。中には、女性車掌の経験を経て運転士登用資格を得、国家試験の合格を経て、女性運転士にステップアップする事例も多くなった。
- JR西日本は関空特急はるかの運行開始にあわせて、社内外から女性車掌候補生を募集し、はるかや関空快速の車掌に登用した。当時は旅客専務車掌だったが、現在は運転扱いも行う。これをきっかけに、JR西日本各支社に女性車掌が登用された。
- 南海電気鉄道の空港特急ラピートには、運転開始当時、サービス要員として、パッセンジャーアテンダントが乗務していたが、パッセンジャーアテンダントを廃止する際、当時のパッセンジャーアテンダントが車掌資格を取得し、運転業務も扱う車掌となった例がある。この例によって誕生した女性車掌はラピートやサザン、こうやなどの優等列車に優先して乗務する仕業が組まれ、イメージアップにつなげている。同様の例は名古屋鉄道でも見られる。
- 逆に、車掌の乗務を廃止し、JRより車内改札を委託された車内販売員が改札および利用者サービスを行うことがある。
- さきがけとなったのが東海道新幹線のグリーン車で、車内販売員が改札と車内サービスにあたった。
- JR東日本の東海道線・横須賀線・総武快速線、常磐線、宇都宮線、高崎線などのの普通列車グリーン車には、従来車掌が乗務していたが、Suicaグリーン車システム導入にあわせ、車掌のかわりに、日本レストランエンタプライズのグリーンアテンダントが乗務するようになった。グリーンアテンダントはグリーン券の改札・車内発売を行うほか、飲み物などの車内販売を行う。運転扱いは行わない。
- JR九州の九州横断特急は、名目上は「ワンマン運転」となっているが、女性客室乗務員が車内改札を行う。同じく運転扱いは行わない。
[編集] 関連項目

