計算尺

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計算尺(ヘンミ P45S)

計算尺けいさんじゃく)は対数の原理を利用したアナログ式の計算用具。棒状のものや円盤状のものがある。

ほとんどのものが乗除算および三角関数、対数、平方根立方根などの計算用に用いられる。加減算には使用しない。

1970年代頃まで、理工学系設計計算や測量などの用途に利用されていたが、関数電卓の登場で市場がなくなり、1980年頃には生産が中止された。

目次

[編集] 計算尺の構造

計算尺は固定尺、滑尺、カーソルの3部品からできている。

固定尺とは、基尺(きしゃく)ともいい、計算尺において相対的に動かないと考える部分である。下記の「計算方法の例」の図で示されている計算尺における白色の部分である。滑尺を挟んで上下に位置しているが、これら2つの部分は固定されており、お互いに動かすことはできない。

滑尺(すべりしゃく、かっしゃく)とは、中尺(ちゅうしゃく)ともいい、上下の固定尺の間に位置しており、左右に動かすことができる部分である。下記の「計算方法の例」の図で示されている計算尺における水色の部分である。

カーソルとは固定尺と滑尺をまたいで計算尺の左右に動く部分である。下記の「計算方法の例」の図で示されている計算尺における透明版の部分である。 尺をまたいで値を比較する際に用いるカーソル線が1本または複数本刻まれている。カーソル線は毛線(もうせん)と言うこともある。

[編集] 尺の名称

計算尺の主要な尺の名称と用途を挙げる。

[編集] C尺, D尺

D尺は下側の固定尺に位置している尺、C尺は滑尺に位置している尺であり、存在する位置が違うだけで目盛りの振り方は同じである。これらの尺はかけ算、割り算をはじめ、ほぼ全ての計算において利用される。

[編集] A尺, B尺

A尺は上側の固定尺に位置している尺、B尺は滑尺に位置している尺であり、存在する位置が違うだけで目盛りの振り方は同じである。これらはD尺を半分の長さにして、2本並べたものである。これらの尺は2乗、平方根の計算に利用される。

[編集] K尺

K尺は通常上側の固定尺に位置している尺である。これはD尺を3分の1の長さにして、3本並べたものである。この尺は3乗、立方根の計算に利用される。

[編集] CI尺

CI尺は滑り尺にあり、C尺を逆方向に目盛りを振ったものである。この尺はかけ算、割り算をはじめ、ほぼ全ての計算において利用される。

[編集] DF尺,CF尺 ,CIF尺

DF尺は固定尺、CF尺は滑尺にあり、それぞれD尺、C尺を<math>\sqrt{10}</math>あるいは<math>\pi</math>だけずらしたものである。CIF尺は滑尺にあり、基線がCF尺と一致するようにCI尺をずらしたものである。これらの尺はそれぞれD尺, C尺, CI尺の代わりに用いられるもので、計算時間の短縮に利用される。

[編集] L尺

L尺は10を底とする指数、対数の計算に利用される尺である。

[編集] S尺, T尺, ST尺, SI尺, TI尺等

S尺は三角関数<math>\sin</math>の計算に利用される尺であり、T尺は三角関数<math>\tan</math>の計算に利用される尺である。ST尺は約<math>0.6^\circ</math>から約<math>6^\circ</math>の三角関数<math>\sin</math>および<math>\tan</math>の計算に利用される尺である。SI尺はS尺を逆方向に目盛りを振ったものであり、TI尺はT尺を逆方向に目盛りを振ったものである。これらの尺の名称および尺の種類は計算尺によって異なることがある。

[編集] LL1, LL02, LL/3等

これらは任意の底に対する指数、対数を計算する際に利用される。これらの尺の名称および尺の種類は計算尺によって異なることがある。

[編集] 計算方法

[編集] 掛け算

以下の写真が掛け算 2×7 を行なう計算例である。

  1. まず、D尺(固定尺の下から2番目の目盛り)の「2」に、カーソル線をあわせる。
  2. 次にCI尺の「7」を、カーソル線にあわせる(下記画像)。
  3. CI尺の「10」の部分にカーソル線をあわせる。
  4. D尺の目盛りを読むと「1.4」である。位取りを換算し、答え14を得る。

計算方法の例

[編集] 割り算

6÷3の計算の例である。

  1. D尺の「6」にカーソル線をあわせる。
  2. C尺の「3」をカーソル線にあわせる。
  3. C尺の「1」に対応するD尺の目盛りを読むと、答えの2を得る。

[編集] 歴史

計算尺は様々な関数の値の対数を計算し、その比率を目盛として固定尺や滑尺に配置したものである。対数は、1614年にスコットランドのジョン・ネイピアが発表した。その6年後に、イギリスのガンターが対数尺を考案した。これは、数の対数や三角関数 sin, tan の対数などを幾何的に配置したものであり、コンパスを利用して2つの目盛の長さの加減をしていた。現在の形式の計算尺、つまり複数の尺をずらして計算をするという形の計算尺を発明したのはオートレッドであり、1632年のことである。主流となった直線型の計算尺と円形型の計算尺の両者ともオートレッドの発明である。その後、様々な計算尺が考案され、電卓(電子式卓上計算機)が普及する1980年代頃まで広く使われた。

[編集] 日本での歴史

  • 1894年 - フランスのマネーム計算尺を留学生が持ち帰ってきたのが始祖とされる。
  • 1895年 - 逸見治郎、独自の計算尺完成。
  • 1909年 - 逸見治郎、特許庁に出願。
  • 1933年 - 逸見治郎、逸見製作所(現・ヘンミ計算尺)を設立。
  • 1947年 - 唐沢英雄「計算尺の新使用法と其の活用」(矢島書房)を発刊、富士計算尺株式会社と共同で計算尺を設計開始。
  • 1959年 - 唐沢英雄(東京農業大学教授・東京写真大学教授)、富士計算尺を通じ、D尺、C尺を従来のπではなく<math>\sqrt{10}</math>で対尺を対向させた改良型対数尺を発売、同時に「計算尺・使用法の基本体系」(矢島書房)を発刊。
  • 1965年 - 唐沢英雄「計算尺の理論」(博文社)を発刊:日本の工業高等学校校長会で採用決定。
※この後1970年代まで、理工学系分野で計算尺が盛んに利用された。中学校及び高等学校の数学のカリキュラムの一部にも組み込まれた。課外活動として「計算尺クラブ」が多くの学校に存在し、全国レベルでの競技大会や検定試験も開催されていた。
  • 1980年頃 - 関数電卓の普及で、計算尺の生産中止。在庫品のみの販売となる。
  • 2005年 - 日本の有志がヘンミ計算尺の協力を得て復刻を試みる。
現在の入手方法 
2007年5月現在、コンサイス社製の円盤状の計算尺は、オンライン販売などで購入可能である。しかし、ヘンミ計算尺社製の棒状計算尺は入手困難である(伊東屋の銀座本店で一部の商品を取り扱っていたが、2007年3月現在、在庫払底のため取り扱っていない)。自作することもできる。計算尺の入手方法

[編集] 関連項目

[編集] 外部へのリンク

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