自転車道

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自転車道(じてんしゃどう)とは、自転車の通行の安全や、自転車利用によるレクリエーションを目的として、自転車を自動車交通から分離するために設けられた道路または道路の部分を指す。日本の道路行政当局や関係団体において、機能面から大きく2種類に分類されている。

A種の自転車道は、交通の安全と円滑を主目的とし、日常生活で利用される自転車交通を対象としたものであり、多くの場合それ自体独立した道路ではなく、道路の一部として自動車等のための車道に併設される。道路構造令道路交通法に定められた「自転車道」は、工作物によって区画され、車道だけでなく歩行者のための歩道からも分離されたもので、道路交通法により自転車以外の通行は認められていない。自転車道の設置されている道路において、普通自転車は自転車道を通行することが原則として義務づけられている。

B種の自転車道は、スポーツやレクリエーションとして自転車を利用すること(サイクリング)を主な目的とした道路を指す。この場合道路法にいう「自転車専用道路等」として整備されることが多く、一般にサイクリングロードとも呼ばれる。日本においては自転車専用であることは例外的で、歩行者の通行も認められていることがほとんどである。「自転車道」は、こういった道路の路線名の一部として使用される場合もある。

サイクリングロード (札幌市
自転車道(川崎市川崎区
「自転車専用」(325の2)の道路標識
「自転車及び歩行者専用」(325の3)の道路標識

目次

[編集] 歴史

日本での自転車道の法制化の過程で、特にオランダ、デンマーク、スウェーデンでは自転車道は完備に近く、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツといった諸国でも自転車道の整備が進んでいると認識されていた<ref name="kokkai_1969-07-15">1969年7月15日 参議院建設委員会における「自転車道の整備に関する法律」についての審議</ref>。

  • 1951年: 日本自転車産業協議会の事業計画が、自転車道路の必要性に言及する<ref name="sano-bunkasi">佐野裕二『自転車の文化史 : 市民権のない5,500万台』、文一総合出版、1985年 ISBN 4829911077</ref>。
  • 1964年: 徳島市左古町に自転車道(併設型、A種相当)が設置される。日本初の自転車道と考えられる<ref name="jidokyo-third3">自転車道路建設促進協議会『交通戦争に第3の道路を 3』、1968年</ref>。翌1965年には、高知市電車通りに歩道を改造した自転車道が設置される。これら法制化以前の自転車道は、所轄警察署の要請により国道事務所が事故多発地点に設置した。
  • 1965年: 国会に自転車専用道路の建設や法制化を求める請願が寄せられ始める。
  • 1967年: 4月、自転車道路建設促進協議会が発足。
  • 1967年: 10月、神奈川県青少年サイクリングコース(金目川サイクリングコース)が開通。専用道路型、B種相当のさきがけとなる<ref name="jidokyo-third3">自転車道路建設促進協議会『交通戦争に第3の道路を 3』、1968年</ref>が、道路法上の道路とは認められず、「施設」扱いとされた<ref name="sano-bunkasi">佐野裕二『自転車の文化史 : 市民権のない5,500万台』、文一総合出版、1985年 ISBN 4829911077</ref>。
  • 1968年: 8月、東京・神宮外苑サイクリングセンター開設。初の自転車公園であり、休日の公道で自動車等の通行を禁止する交通規制を実施し、サイクリングに開放したもの。自転車道路建設促進協議会が自転車道のサンプルと位置づけ、警視庁・明治神宮など関係各方面に働きかけ実現した。初の歩行者天国に先立つ。1970年には常設の代々木公園サイクリングコース、1975年には休日の交通規制によるパレスサイクリングが開設されたほか、東京以外の各地にも広がる。
  • 1968年: 9月、財団法人自転車道路協会が発足。自転車道路建設促進協議会からの改組。同月、同協会は太平洋岸自転車道構想を含む全国一周自転車道路網構想を建設大臣に陳情。
  • 1970年: 「自転車道の整備に関する法律」が制定される。道路構造令道路交通法に「自転車道」などの規定が加わる。「交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法」に自転車道の整備に関する規定が盛り込まれる。これら新規定により自転車を自動車交通から分離する方向性が固まる。道交法改正に伴い「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」が改正され、「自転車専用」(325の2)と「自転車及び歩行者専用」(325の3)の道路標識が定められる。
  • 1971年: 道路法が改正され自転車専用道路、自転車歩行者専用道路の規定が加わる。
  • 1973年: 大規模自転車道の整備が始まる。
  • 1974年: 建設省都市局長・道路局長通達「自転車道等の設計基準」が発せられる。
  • 1980年: 自転車の安全利用の促進及び自転車駐車場の整備に関する法律(「旧自転車法」)が制定・公布され、自転車道・自転車歩行者道の整備、自転車専用車両通行帯の設置など「良好な自転車交通網の形成」を図る規定が盛り込まれる。

[編集] 法令上の定義

[編集] 広義の自転車道

1970年に制定された「自転車道の整備に関する法律(以下「整備法」)」にいう「自転車道」は、以下のように定義され、法令上最も広義である。

  • もつぱら自転車の通行の用に供することを目的とする道路の部分(第二条第三項第一号)
  • 自転車及び歩行者の共通の通行の用に供することを目的とする道路又は道路の部分(第二条第三項第二号)

これにより整備法の「自転車道」は、次に挙げる自動車等からは構造的に分離され、歩行者とは分離されているとは限らない自転車の通行空間の総称とされる。この場合の自転車道の総延長は2004年現在、76,848キロメートル<ref name="npa20061130-1">警察庁 自転車対策検討懇談会『自転車の安全利用の促進に関する提言』2006年11月30日、9ページ </ref>となる。

  • 自転車専用道路等(道路法第三章第六節)
    • 自転車専用道路(道路法第四十八条の十三第一項)
    • 自転車歩行者専用道路(道路法第四十八条の十三第二項)
  • 自転車道(道路構造令第二条第二号)
  • 自転車歩行者道(道路構造令第二条第三号)

これらは「自転車道等」と総称されることもある。また、自転車道等といった場合には、道路法上の道路でない道路や自転車レーンを含む場合がある。

[編集] 狭義の自転車道

道路構造令第二条第二号
専ら自転車の通行の用に供するために、縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画して設けられる道路の部分
道路交通法第二条第一項第三号の三
自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分

道路交通法・道路構造令の自転車道(本節以降では単に「自転車道」といった場合この意味で使う)は、「縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画」された道路の部分であり、自動車等のための車道の各側に一体となって建設され、独立した道路ではない。なお道路構造令上の車道は「(自転車道を除く。)」と明記されているが、道路交通法の自転車道は「車道の部分」である。ただし道路交通法でも、第三章の交通方法の適用上、第十六条第四項により「自転車道と自転車道以外の車道の部分とは、それぞれ一の車道」として別個に扱われる。

普通自転車は「自転車道が設けられている道路においては、自転車道以外の車道を横断する場合及び道路の状況その他の事情によりやむを得ない場合を除き、自転車道を通行しなければならない」(道路交通法第六十三条の三)と義務づけられている。自転車道は、前述のように自転車道以外の車道(以下単に「車道」という場合、自転車道を含まない)と別個に扱われるため、通行すべき左側部分も別個になり、双方向通行となる。また、普通自転車は進行方向右側にしか自転車道がない場合でも、そこを通らなければならない。また、自転車であっても、四輪以上のもの、サイドカーが取り付けてあったりリヤカー等ほかの車両を牽引するものは自転車道を通行できない(道路交通法第十七条第三項)。これらの自転車は、車道を通行することになる。自転車以外の軽車両も同様である。モペッド原動機付自転車であるため、やはり自転車道でなく車道を走行する。

[編集] 自転車道の要件

自転車道は、縁石線、さく(柵)などの工作物や植樹帯といった分離施設によって区画されていることが要件である。

道路交通法第二十条第二項の規定による車道上の車両通行帯のうち、道路標示等により「自転車専用」と指定されたものは、工作物ではなく区画線や道路鋲によって区画されているため、自転車道には該当しない。「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(自転車法)」で自転車専用車両通行帯と称され、一般に「自転車レーン」と呼ばれるが、この部分は依然、車道の一部分であるため、車道全体で見た左側通行の規制を受ける。

道路交通法第六十三条の四第一項により普通自転車が通行することができるとされた歩道に、「普通自転車の歩道通行部分」の道路標示(114の2)がある場合、この部分は「歩道の自転車レーン」と俗称されることがあるが、自転車道には該当しない。また従来歩道とされていた部分を工作物で分離したものであっても、車道上に設けられたものではないので自転車道とはいえないとされる<ref name="mlit-sankou1">国土交通省 『社会資本整備審議会 都市計画・歴史的風土分科会 都市計画部会第6回都市交通・市街地整備小委員会議事要旨 : 参考資料1 自転車等に関する法令等の規定』 </ref>。

[編集] サイクリングロード

一般に「サイクリングロード」と呼ばれるものは、B種の自転車道つまり道路法の自転車専用道路等として整備されることが多い。自転車(または自転車および歩行者)の通行のために独立して設けられる道路である。整備法の第六条第一項では、道路管理者としての市町村に自転車専用道路等の設置について努力義務を課し、同第二項では河川や国有林野の管理者が協力するものとしている。同第三項では国が財政支援の努力義務を負うこととしている。国の支援策としては、大規模自転車道整備事業が知られている。

このほかに道路法による道路には該当しない施設扱いの“いわゆる自転車道”なども、サイクリングロードと呼ばれる。

[編集] 設計基準

各種の自転車道の幅員は、道路構造令により定められている。自転車道は2メートル以上を原則とし、やむを得ない場合1.5メートルまで縮小できるとされる(第十条)。自転車専用道路は3メートル以上——やむを得ない場合2.5メートルとされ、自転車歩行者専用道路は自転車専用道路より広い4メートル以上とされる(いずれも第三十九条第一項)。

設計速度は、A種・B種の違いに応じて差異がある。まちなかの道路に併設される環境からスピードが制限されるA種の自転車道では、通常の自転車の速度と考えられた時速15キロメートル、専用道路で快適な走行が目的となるB種の自転車道では時速30キロメートルとされた。これらの規定速度を確保する設計が不経済とされる場合には、双方とも時速10キロメートルとされた<ref name="road.or.jp_jidokyo">日本道路協会『自転車道等の設計基準解説』、1974 ISBN 4889501029。自転車道路協会『交通戦争に第3の道路を 12 : 自転車道の計画と設計』、1974年。</ref>。

[編集] 現状と問題

前述したように、自動車から構造的に分離された自転車の通行空間の総延長は76,847キロメートルとされるが、このうちの91.8%にあたる70,536キロメートルは「自転車歩行者道」である。設計の上で自転車の通行を意識しているとはいえ、運用の上では自転車には歩行者を優先する義務と、常に徐行する義務が課せられる「自転車通行可の歩道」にすぎない。本項では自転車道とサイクリングロード(自転車専用道路等とそれに類似したもの)の現状について述べる。

[編集] 都市交通の中の自転車道

都市交通の中での自転車専用の通行空間であると考えられる自転車道の延長は、1,199キロメートルに過ぎず、歩道延長155,786キロメートルの100分の1にも満たない。自転車道の設置に際しては、自動車から自転車を分離し、混合交通による自動車の速度低下を防ぐことも意識されてきた。反面、設置・管理が高コストであり、自転車道の存在自体が自動車交通の障害になりかねないと考えられた。車道の幅員確保や歩道の設置・拡幅(幅員が3メートル——1970年から1993年までは2メートル——以上の歩道を設置することで、自転車歩行者道として、普通自転車を歩道に上げることも可能になる)が優先され、自転車道の設置が進まなかったことも否定できない。

自転車の歩道通行については、双方向通行が認められていることと、車道との間の分離施設によって、自転車が右左折する自動車からの死角に入り、自動車対自転車の交通事故を誘発する危険性が指摘されている<ref name="npa20061130-2">警察庁 自転車対策検討懇談会『自転車の安全利用の促進に関する提言 : 資料』2006年11月30日、8ページ 資料8「自転車マニュアル等における歩道通行の危険性の指摘」</ref>。自転車道は事故防止を図ることを目的として導入されたものの、歩行者と構造的に分離されていることを除いて歩道との共通点が多いことから、自転車道にも同じ問題が存在するとの見解がある。

[編集] サイクリングロードの現状

サイクリングロードの設置場所は、河川敷がほとんどで、このほかに湖沼の沿岸、海岸、鉄道廃線跡が挙げられる。

自転車専用道路等の総延長は5,113キロメートルになるが、そのうちの90.8%は自転車歩行者専用道路が占める。このほか、河川敷や堤防上に設置された河川管理道路や緊急用道路は、一般の自動車・原動機付自転車による通行を禁じていることから、サイクリングコースとして使用されている例が多い。サイクリングロードだと広く認識されている道路が、実はあくまで河川管理道路であって、サイクリングロードではないということもある。

サイクリングロードは、自転車の高速走行の快適性を重視し、ほかの道路と平面交差する箇所が市街地の一般道路に比べて少ないため、自転車の走行速度は速くなる傾向が強い。一方でこの構造的条件はランニングやウォーキングといった運動や散歩にも適しているため、歩行者の利用も多い。高速な自転車と大勢の歩行者が混在している状況で、両者の間にトラブルが多発し、主に歩行者から苦情が管理者に寄せられ、管理者としては対策として自転車に対して何らかの規制・措置を加える方向で検討しているという<ref name="funride">「サイクリングロードちょい不良(ワル)オヤジ改造計画」『funride』2006年4月号、ランナーズ(発行)、96ページ</ref>。近年サイクリングロードでは、自転車利用者に対して、スピードを落として歩行者に注意し優先するよう呼びかける標示や掲示物が目立つようになった。サイクリングロード(や類似した道路)が歩行者との混合交通になっている現状には、自転車利用者側からの批判もあるが、両者を分離して自転車専用道路歩行者専用道路を設置しようとする動きは、ほとんど見られない。

[編集] 脚注

<references />

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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