義務教育
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義務教育(ぎむきょういく)とは、人(保護者・国民など)がこどもに受けさせなければならない教育のことである。学齢と関係が深い概念なので、より深く理解するには「学齢」の記事も参照。
なお、国・地域によっては、子どもに「教育を受ける義務」があると定めている場合もある。たとえば、ドイツでは子どもには「教育を受ける権利」と「就学する義務」の両方が定められている。[1]
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[編集] 世界的な歴史
学校制度がまだ存在しない古代から、現代の義務教育制度に通ずる社会制度は存在した。古くはスパルタにおける7歳から30歳の男性に対しての義務的な教育制度が存在し、自由民に対する文武両道の教育が行われていた。またシャルルマーニュは802年に、貴族の子弟に限定されない義務教育令を公布した。中世になるとルター派の諸国では民衆に対する教育に力を入れ始めたが、中でもドイツのゴータ公国のエルンスト敬虔公が1642年に公布したゴータ教育令は、現代の教育法規と同様に授業時間、学級編成、教科書などの細密な規定がなされている点でかなり先進的なものであった。ゴータ教育令では義務教育の終了は「12歳を超えるか、文字が読めるようになるまで」と定められており、一定年齢までの在学を義務付けていないという点で終了基準は課程主義であったといえる。こういった教育制度はプロイセンのフリードリヒ2世の時代まで主流であったが、基本的には下層階級の救済という目的は薄かった。
産業革命期になると、労働者階級の年少児童が工場などでの労働力として使われるようになり、劣悪な環境におかれることになった。イギリスでは19世紀前半には工場法などによって年少者の工場雇用を禁止し、19世紀後半には義務教育制度が施行されるようになった。アメリカ合衆国では、マサチューセッツ州が1852年に最初の義務教育法を制定した。ただしこれは親が貧困のために子を就学させないことを許容しているものであったため、義務教育制度の本来の対象であるはずの貧困層を救済できないものであるという批判もある。
第二次世界大戦後になると、先進国ではもはや年少者が工場での労働力に用いられるようなことは過去のものとなっており、積極的な「児童のための教育」の考え方が強くなった。もはや「教育を受ける義務」ではなく「教育を受ける権利」としての考え方に転換しているため、「義務教育制度」は「教育普遍化制度」と改称すべきだとの意見(桑原敏明)もある。
[編集] 諸国での義務教育期間
- 11年 - イギリス、ロシア(1984年の改革により)
- 10年-フランス
- 9年 - 日本、韓国、アメリカ合衆国(州によって異なる)、ドイツ
- 8年 - オランダ、イタリア
- 6年 - スペイン
- 4年 - ミャンマー(例外的に短い)
- スウェーデンの場合は7歳~16歳であるが、障害児は20歳までであるといわれる。
[編集] 日本の義務教育
現在の日本の教育については、日本国憲法の第26条第2項に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。」と定められており、この規定に基づく教育を「義務教育」と呼称している。そのため、保護者は、学齢期の人を小中学校などに通学するように取り計らう義務がある。これを就学義務(就学させる義務)という。
日本はあくまで「就学義務」であり「教育義務」という定義ではないので、諸外国によく見られるホームスクーリングは義務教育の履行とはみなされない。
また、学校教育法の第29条に「市町村は、その区域内にある学齢児童を就学させるに必要な小学校を設置しなければならない。」と定められており、これは第40条で中学校にも準用されている。そのため、市町村はこれらの学校を設置する義務がある。これを学校設置義務という。
また、国は義務教育の対象者の就学を奨励しなければならない。たとえば義務教育国庫負担金制度により義務教育の授業料を無償としたり、貧困家庭には就学援助制度を適用したりするなど、該当者の就学をなるべく保障することになっている。これを就学保障義務という。
また、義務教育の対象となる学齢期の子女が教育を受ける機会が十分なものとなるよう、事業所はこれらの児童を一般の労働者として使用してはならない(労働基準法による)。これを避止義務という。
以上の四つの義務によって日本の義務教育が成り立っているとされる。
[編集] 学齢
日本の義務教育の対象者は、4月1日時点で満6歳の人から4月1日時点で満14歳である人が該当する。この義務教育の対象年齢を(法律上の)学齢という。
これを具体化する法律(教育基本法及び学校教育法)により、その内容は、小学校(もしくは盲・聾・養護学校の小学部)における6年間の教育と中学校(もしくは盲・聾・養護学校の中学部、中等教育学校の前期課程)における3年間であると定められている。なお、義務教育の期間は学年基準ではなくあくまで年齢基準であるため、4月1日時点で15歳以上の人は、小中学校に在学していても義務教育には該当しないとされる。これを義務教育年限における年齢主義という。このため、就学猶予や原級留置や過年度入学などの理由で、14歳の年度のうちに小中学校を卒業しなかった場合は、それ以後に通学することは義務教育の範囲とはされないといわれる。ただし、すぐに通学できなくなるわけではないが、多くの場合、新入学は許可されない。詳しくは学齢を参照。
ただし、学齢超過者に対する教育であっても、俗語的に小中学校教育のことを義務教育と呼ぶ場合もある。これは法律上は正式な表現ではないが、就学義務よりも教育内容に着目した呼び方であろう。
[編集] 就学猶予・就学免除
学齢期に達しても、病気などによって小学校への就学が困難な児童は、就学猶予や就学免除などの手続きを受ける場合がある。この手続きを受けた場合、その年度には就学しないことになる。ただし、1979年の養護学校の義務教育化に伴い、養護学校などの障害児対象の学校が充実してきたため、近年では就学猶予・就学免除ともほとんど許可されなくなっている。
なお、少年院送致となった学齢期の人に対しても、就学猶予が行われる場合もある。
[編集] 義務教育に関わる費用
日本国憲法26条2項の後段においては、義務教育は無償とすると定められている。無償とされるべき範囲に争いがあるが、判例(義務教育教科書費国庫負担請求訴訟事件 最大判昭和39年2月26日)によれば同条の無償とは授業料の無償を意味し、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものではないとする。また判例では、授業料以外の義務教育に必要な費用については、保護者負担の軽減策を国がとることが望ましいが、立法政策の問題として解決すべき事柄で憲法の規定ではないとしている。なお、私立学校などでは、授業料の徴収が学校教育法により認められており、この限りではない。
- 参考
- 教育基本法第4条第2項
- 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
- 学校教育法第6条
- 学校においては、授業料を徴収することができる。ただし、国立又は公立の小学校及び中学校、これらに準ずる盲学校、聾学校及び養護学校又は中等教育学校の前期課程における義務教育については、これを徴収することができない。
現在は、義務教育においては義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律により、学校で使用する教科書(教科用図書)について無償で給与されている。
なお、義務教育諸学校に在学している学齢超過者については、正式な意味での義務教育を受けているとはいえないため、義務教育無償の原則に当てはまらないとの考え方もある。ただし、多くの夜間中学校においては授業料を徴収していないものと思われ、また一般の中学校でも授業料は徴収していないケースが多いといわれる。
[編集] 義務教育の段階に該当する学校
いずれも、学齢期の場合のみ就学義務が存在する。
[編集] 不登校と義務教育
近年、学齢期の児童生徒の不登校が増加している。義務教育という言葉の響きから、不登校を違法なものだと考える人もまだ多いが、上記のように就学義務は保護者などの義務であり、当事者の義務ではないとされている。こういった制度であるため、本人が自由意志で不登校を選択するのであれば、本人・保護者ともなんら罰則は課されないなお、本人が学校(小・中学校)に行きたいと希望しているにもかかわらず、保護者が通学しないようにした場合(家事を強制したり、外出させないようにするなど)は、就学義務違反となる。
不登校生徒を対象にした学校外施設として、いわゆるフリースクールが増加している。こういった施設に対しても、学校と同様に出席した場合は出席日数に算入する取り扱いが増えている。
[編集] 日本の義務教育制度の歴史
明治時代から昭和時代前期における義務教育の範囲は、実質的に初等教育(尋常小学校から後に学校種を国民学校に改組)のみであった。
1939年から男子は14歳から19歳まで青年学校への就学義務があるとされ、年間210時間の定時制教育を受けることとなった。また1944年からは国民学校令によって全日制の義務教育が8年間に延長される予定であったが、戦争のため実施されなかった。 とはいえ、これら義務教育が時代の背景や情勢に左右されることはあっても、当時の日本は 世界的に見て識字率の高い国となっていた。
1947年の学制改革により、現在まで約60年続いている義務教育制度が施行された。これは、6歳から15歳までの9年間を義務教育期間とし、小学校6年間・中学校3年間をその期間に該当させるようにしたものである。この時点で特殊教育諸学校への就学義務も定められたが、実際に養護学校の義務教育化は1979年からとなる。
1998年に中等教育学校が学校種として定められたため、これの前期課程も義務教育の課程となった。
[編集] 課題
インターナショナル・スクール(国際学校)やナショナル・スクール(外国人学校、民族学校など)をはじめとする各種学校や無認可校に子女を通わせる保護者は、義務教育を履行していないと教育委員会から通告を受ける場合がある。しかし、これらの学校に通わせたいと思う保護者もいる。
日本は義務教育制度がほぼ完成している国家であるが、学齢超過の義務教育未修了者は170万人いるといわれる。こういった人は、主に第二次世界大戦直後の混乱により、学齢期に就学できなかった人である。これらの人の行ける小中学校としては、夜間中学校や中学校通信教育が整備されているが、学校数が少ないこともあって非常に門戸が狭く、あまり効果を上げていない。また、小学校や、朝昼に授業を行う一般の中学校には、入学を拒否される場合がほとんどである。
日本の義務教育期間はあくまで年齢主義であり、学齢を過ぎたらもはや義務教育の対象とはされない。そうしたことも一因で、学齢超過者が小中学校に入学することが困難となっている。そのため、上記のような戦争による未就学者や、近年増加している不登校者が小中学校への入学を希望しても、一度学齢を超過すると入学できない場合が多いことが問題となっている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク

