組織 (社会科学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
社会科学における組織(そしき、Organization)とは、個人では成し遂げられない目標を達成するための、複数の人々による協働・手段・システム(体系)をいう。バーナード(『経営者の役割』、1938年)による「意識的に調整された、2人またはそれ以上の人々の活動や諸力のシステム」という定義が有名。
目次 |
[編集] 概要
人間等の集団あるいは共同体が、一定の目的または意思を達成するために、指揮管理と役割分担が定められ継続的な結合が維持されているとき、その集団は組織あるいは団体と呼ばれる。集団の活動を組織化するためには何らかの管理の方法が存在せねばならない。管理は少数者の強力なリーダシップによる場合もあるし、集団の合議による場合もあるが、構成要素に変動があっても組織の自律的な活動を維持するためには、代表選出や総会運営などの組織運営のための諸規範を備えることが不可欠となる。現代の大企業や政府は多数の階層からなる複雑な組織構造を有している。
[編集] 組織の特徴
組織は人々の集まりではあるが、集団や群衆とは区別される。組織には、集団や群衆には存在しない、以下のような特徴がある。
[編集] 共通の目標
組織には、組織に属する成員(メンバー)間で共有される、共通の目標が必要である。共通の目標がなければ、同じ時刻・同じ場所に居て同じ行動をとる人々の集まり(例えば劇場に集う観客など)も、組織とは言わない。
[編集] 分業と調整のメカニズム
組織には、複数人で共通の目標を達成するにあたって必要な組織全体の仕事やタスクの分業と調整を行うメカニズムが必要である。共通の目標が人々によって共有されていても、個々人が個別的に仕事を遂行するならば、それは組織とは言わない。
- 分業:組織全体の仕事を分割し、個々人に割り当てること
- 調整:分割され個々人に割り当てられた仕事を統合し、組織全体の仕事として完成させること
[編集] 組織構造
組織が大きくなる(組織を構成する成員の数が増える)につれて、組織は機能や目的に従って何らかの構造を持つようになる。構造は組織図などによって明示化されることもあれば、暗黙的に生じることもある。
[編集] 公式組織と非公式組織
一般に、組織には階層構造が存在し、公式に定められた権限関係が存在する。公式に定められた階層構造や権限関係は、組織図によって表される。組織図によって表されるような公式的で明示的な組織構造を、公式組織と言う。例えば「社長 - ○○部 - ××課」などの権限関係は、組織図に明示化される公式組織である。
公式組織とは異なる、成員間の個人的・人間的なつながりから生じる組織構造を、非公式組織と言う。例えば趣味や飲み会を通じて生じる、公式的には確認することのできない個人的なつながりを言う。非公式組織は、公式組織には存在しない成員間のつながりや公式組織とは異なる種類の関係を組織にもたらし、組織全体の情報伝達やコミュニケーションに影響を与える。
[編集] 組織・団体の類型
社会科学における組織・団体の分類の方法としてはさまざまな論点があるが、ひとつの見方としては、公的組織(公法人)と民間組織(私法人・私人)という分類がある。公法人とは公の事務を行うことを目的とする法人で、官公庁や地方公共団体が該当する。
民間組織はさらに営利組織と非営利組織とに大別される。営利組織とは、組織が外部的経済活動によって得た利益を構成員へ分配することを目的とした組織で、その典型は企業である。
非営利組織は、広く社会の公益に資することを目的とする公益団体と、組織の構成員の利益に資することを目的とする共益団体とに分類される。前者には任意団体や教育機関、後者には労働組合や農業協同組合が含まれる。
[編集] 組織論
社会科学上の組織を研究する学問を組織論あるいは組織科学という(一方で生物学上の組織 (生物学) (生物組織)を研究する学問を組織学という)。組織論は社会学、政治学、心理学、経営学などによる学際的な研究である。組織運営のあり方に関する論はプラトンの『国家』をはじめ古代からみられたが、現代的な組織論は、20世紀の初期、軍隊や工場のような組織が巨大化するにつれて関心が強まり本格的に研究されるようになった。
マックス・ヴェーバーは合理的な組織にみられる特質を官僚制であると指摘した。近代官僚制は、権限範囲の明確化、組織の階層化、組織の専門化、文書によるコミュニケーションなどを特徴とし、優れた機械のような技術的卓越性があると考えられた。同じころフレデリック・テイラーは、工場労働者を機械の一部のようにとらえて管理する科学的管理法を提唱し、大量生産体制の確立に貢献し労働コストの削減に成功した。
だが科学的管理法のもとで労働者が強いられる単純作業は過酷なものであった。エルトン・メイヨーは1927年からの5年間にホーソン実験と呼ばれる実地調査を行い、労働者の勤労意欲の維持が組織活性化に不可欠であることを明らかにする。この流れを受けたチェスター・バーナードは、組織の成立には、個人の努力を組織目的に寄与する意志「協働意志」と、目的なしに組織は生まれないから「共通の目的」、さらに組織の諸要素を結合する「コミュニケーション」の3つの要素が必要であると論じた。
近年の組織論では、組織は外的・内的な混乱や緊張に絶えず直面しており、それを解決するための新しい考え方や行動様式を選択し採用していくことで創造的に進化していると捉えられている。例えば、カイゼンを大きな特徴とする日本企業は、労働者を機械の一部ではなく問題解決者と位置づけ、生産現場におけるボトムアップ型の小集団活動を行うことで行動様式を継続的に革新し、生産性向上を達成している。野中郁次郎はこのような組織のあり方をナレッジマネジメントと呼んでいる。
[編集] 関連項目

