移動体通信
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移動体通信(いどうたいつうしん、mobile communication)とは、片方または両方の端末が移動することのできる(通信線路に接続されていないかつ固定無線局でない)電気通信の総称である。移動通信とも言う。
上記の定義によれば、業務無線・特定小電力無線・第三者無線・市民バンド・アマチュア無線なども移動体通信に含まれることになるが、電気通信事業者によって公衆に提供される移動体通信サービスに限定される場合もあり、定義があいまいである。特に第三者無線や移動体通信サービスの場合、基地局主導によるマルチチャネルアクセス無線技術を用いている。また他の種類でも方式や程度の差は有るものの、マルチチャネルアクセス無線技術が適用される場合が増えている。
目次 |
[編集] 概説
移動体通信は、固定通信と比較して、地域のおかれた状況を強く反映する。軍事用に電波が多く使用されているため周波数不足になっている地域、固定通信よりも早く裕福な層に普及した発展途上国、人口密度が低く1つの基地局当たりのサービスエリアを大きくした方が経済的な地域、利用者端末の密度が高く周波数利用効率の向上が強く求められる地域など、それぞれに適した技術が導入されてきた。
機器の大量生産によるコスト低減・国際ローミングなどのサービスの向上・デジタル化によるマルチメディア化などの高度化を行うために、国際標準の確立を目指して努力が行われたが、2005年現在、同一の用途でいくつかの標準が並立している状況である。また、各国の周波数利用状況の差で割り当てられている周波数にも差がある。
[編集] サービスへの課金方式
サービスへの課金方式として、発信者または受信者のみが料金を負担する単方向課金と、双方が分担して料金を負担する双方向課金がある。
携帯電話の音声通話・回線交換データ通信の場合、世界的には双方向課金が主流で、日本は発信者単方向課金である。PHSの場合は世界的に発信者単方向課金である(これはアジア各国で導入されている理由の一つとされる)。
また、携帯電話・PHSのショートメッセージングサービスは、世界的に発信者単方向課金が主流で、米国は双方向課金である。携帯電話・PHSのパケット通信は世界的に双方向課金である。
[編集] 移動体通信網
衛星電話などごく一部を除き、移動体通信網は、基地局相互間や非移動通信先などには有線通信を行い、基地局と移動局間に無線通信を使用する。
携帯電話・PHS(接続型《独自型》)・衛星電話等においては独自の電話網を構成し、公衆交換電話網と相互接続している。なお、PHS(活用型《依存型》)はISDN方式の公衆交換電話網に依存している。
端末の位置登録が必要であるなど経路選択を移動体網側で行う必要があるため、固定通信網からの発信の場合なるべく近くの移動体関門交換機へ接続される。また、音声圧縮方式の変換や無音圧縮の機能が移動通信網側の関門交換機に搭載されているのが一般的である。
端末の電源投入時に、基地局にアクセスして位置登録を行う。また、基地局のサービスエリアを跨ぐときは、位置情報の更新が行われる。通話中に基地局のサービスエリアを跨ぐときには、ハンドオーバー処理が行われる。また、端末のGPS受信機や無線LANアクセス機能を利用して、より精密な位置情報を得て各種付加サービスを行うものも存在する。
1990年代よりVoA(Voice over ATM)が使用されるようになった。また、2000年代に入りコスト低減のため移動体データ通信網のIP over ATMから完全Internet Protocol化と共に、VoIP化が徐々に進行している。→PHSも参照のこと。
[編集] 移動体通信サービスの比較
[編集] アナログ音声通信
アナログ携帯電話・自動車電話・船舶電話が主なものである。周波数帯域利用効率が悪いため、デジタル方式への移行が進められている。2000年までに日本では廃止。
1979年に、世界初の小ゾーンセルラ方式自動車電話が日本でサービス開始され、電子工学の進歩によって徐々に端末(電話機)が小型・軽量化して携帯電話となっていった。
| 略称 | 搬送波間隔(kHz) (インタリーブ) | 制御信号伝送速度(kb/s) | 特徴 | サービス開始 | 利用地域・事業者 |
|---|---|---|---|---|---|
| NTT方式 | 25 | 0.3 | 小ゾーンセルラー方式自動車電話としてに世界初のサービス開始 | 1979年 | 日本 : 日本電信電話公社 |
| NTT大容量方式 | 12.5 (6.25) | 基地局に3セクターアンテナ使用。ハイキャップ(Hicap)とも呼ばれる。 | 1988年 | 日本 : NTTドコモとIDO・1999年3月廃止 | |
| NMT | 25 | 1.2 | 450MHz帯域を使用するものは、基地局あたりのサービスエリアが広いため人口密度が低い地域に向く | 1981年 | 北欧・東欧・中東・ロシア |
| AMPS | 30 (15) | 10 | 基地局に6セクターアンテナ使用。AT&T・モトローラが提案 | 1983年 | 北米 : 2005年現在、需要の少ない地域での2Gのローミング用として使用されている。 |
| NAMPS | 15 (7.5) | ||||
| TACS | 25 (12.5) | 8 | 英国向けに搬送波間隔を変更 | 1984年 | 英国・フランス・スイス・スペイン・シンガポール・中国・香港・アフリカの一部 |
| JTACS | 日本向けに上り下りの周波数を逆にし、55MHz間隔化 | 1989年 | 日本 : DDIセルラー・IDO、2000年9月廃止 | ||
| NTACS | 12.5 (6.25) | 1991年 |
[編集] デジタルコードレス電話
家庭では、コードレス電話、屋外では事業者の基地局に接続できるものである。多数の出力の小さい基地局を設置するマイクロセル方式である。周波数帯域利用効率が良いため、音声符号化方式に音質の良いものが使用でき、より速いデータ通信も可能である。
| 略称 | 搬送波 | 変調方式 | 音声 | 特徴 | 利用地域・事業者 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 間隔(kHz) | 伝送速度(kb/s) | チャネル | 伝送速度(kb/s) | 符号化方式 | ||||
| DECT | 1782 | 1152 | 12 | GMSK | 32 | ADPCM | 欧州 | |
| PHS (ARIB RCR STD-28) | 300 | 384 | 4 | π/4 DQPSK | アジア諸国・日本 | |||
| 高度化PHS (ARIB RCR STD-28) | 電波状態が不安定な場合に、安定性の高い変調に切り替わり、電波到達度が向上。 | 日本 : ウィルコム。 | ||||||
| 192 | BPSK | 16 | ||||||
[編集] デジタル携帯電話
デジタル携帯電話は、自動車電話の端末を小型化したものであるため、コードレス電話として開発されたPHSとは異なり、電波の出力も強く(基地局の出力はPHSが最大0.5Wに対し、携帯電話では最大25W)、利用可能なエリアも広い。
反面、周波数帯域利用効率が劣るため、音声符号化方式に圧縮率の高いものを使用しているため音質が悪く、大都市の大きな鉄道駅(ターミナル駅)の周辺や繁華街など人通りの多い場所では、利用者に対して通話用のチャネル数が少なく輻輳が生じやすいなどの欠点も有する (日本においては、3G《第三世代携帯電話》は2G《第二世代携帯電話》と比較して、エリアはそれほど広くなく、また利用者数には余裕があり逼迫等の問題は起きていない)。
- Gは世代(Generation)を表す。
第二世代携帯電話(2G)と呼ばれている、デジタル携帯電話がある。
| 略称 | 搬送波 | 変調方式 | 音声(ハーフレート) | 特徴 | 利用地域・事業者 | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 間隔(kHz) (インタリーブ) | 伝送速度(kb/s) | チャネル(ハーフレート) | 伝送速度(kb/s) | 符号化方式 | ||||
| GSM | 400 (200) | 270.833 | 8 (16) | GMSK | 22.8 (11.4) | ACELP, RPE-LTP (EVSELP) | 多重化チャネル数が多いため基地局設備が安価。 | 2005年現在、210以上の国や地域で使用されているデファクトスタンダード(日本と韓国は不使用) |
| PDC | 50 (25) | 42 | 3 (6) | π/4 DQPSK | 11.2 (5.6) | CS-ACELP, VSELP (PSI-CELP) | 多重化チャネル数が少ないため、端末の瞬時最大空中線電力を小さくでき、電池の容量当たりの待ち受け・通話時間を長くすることが容易。 | 日本 : NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、ツーカーが採用。auは2003年3月廃止。 |
| D-AMPS | 60 (30) | 48.6 | 3 (6) | π/4 DQPSK | 13 (6.5) | ACELP, VSELP (CELP) | AMPSと周波数帯域を共用できる。 (IS-136/IS-54) | 北米 |
第三世代携帯電話(3G)と呼ばれている、通信速度が速く、周波数帯域利用効率の良いものもある。高速データ通信の拡張規格も開発されている。
| 略称 | 帯域幅(MHz) | チップレート(Mcps) | フレーム | ガードバンド | 基地局の精密同期 | チャネル分離 | 拡散符号 | 電力制御(回/秒) | 変調方式 | 音声 | 制御・端末位置登録 | 特徴 | 利用地域・事業者 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 長(ms) | スロット数 | 伝送速度(kb/s) | 符号化方式 | ||||||||||||
| cdmaOne (IS-95) | 1.25 | 1.2288 | 20 | 16 | 要 | Walsh Code (128) | M系列のLong PNとShort PNとを組み合わせ | 800 | π/4 DQPSK | 1.2 ~ 9.6 | EVRC, SMV | ANSI - 41 | 米国クアルコム開発の2.5G | 米国・韓国・日本 : au | |
| CDMA2000 (IS-2000) | 3G | ||||||||||||||
| W-CDMA | 5 | 3.84 | 10 | 15 | 不要 | Orthogonal Variable Spreading Factor Code | Gold 系列 | 1500 | 1.95 ~ 12.2 | GSM - Adaptive Multi Rate | GSM - MAP | 欧州・日本 : NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、イーモバイルサービス中。第三世代への世代交代が進むなか、新たなデファクトスタンダードになりつつある。 | |||
| 略称 | 帯域幅(MHz) | チップレート(Mcps) | フレーム | 端末間の精密同期 | 特徴 | 利用地域・事業者 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 長(ms) | スロット数 | ||||||
| TD-CDMA | 5 | 3.84 | 10 | 15 | 不要 | 慶應義塾大学理工学部中川正雄教授を中心に開発 | |
| TD-SCDMA | 1.2288 | 要 | 中国・電信科学技術研究院、ドイツ・シーメンスなどが開発 | 中国規格 | |||
| TD-SCDMA (MC) | マルチキャリア・米Navini Networksのシュー・グアンハンが提案 | ||||||
[編集] その他のサービス
[編集] 移動体通信の周波数
移動体通信に適した周波数帯域は限られている。また、軍事・航空・船舶の保安用無線通信などとの競合もある。そのため、固定無線の光ケーブル化、より高い周波数の活用・他の用途に使用されている無線局との共用の技術開発などが行われている。
電波は周波数が低いほど電波が回折しやすく、遮蔽物が入り組んだ場所や、室内、車内でも受信しやすくなり、不感地帯の減少に繋がる。このため基地局の増設の必要が少なく済み、設備投資の費用が安くなる。反面、低い周波数ほど、無線局免許の関係上、周波数帯域を広く取りにくいため、通信速度の高速化が困難になる。
[編集] 各地域別周波数帯域利用状況
| 周波数GHz | 日本 | 欧州 | アジア | オセアニア | アフリカ | ラテンアメリカ | 北米 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 0.2 | テレビ地上波放送 VHF帯 ch.9 - ch.12 無線呼び出し デジタル地域防災無線 アナログコードレス電話(子局) | ||||||
| 0.3 | アナログコードレス電話(親局) | T-GSM380 | |||||
| 0.4 | アマチュア無線(430MHz帯) デジタル空港無線電話 テレビ地上波放送 UHF帯 ch.13 - ch.17 地上デジタルテレビジョン放送 | T-GSM410 CDMA450 GSM450 NMT450 GSM480 | CDMA450(一部) | ||||
| 0.5 | テレビ地上波放送 UHF帯 ch.18 - ch.34 地上デジタルテレビジョン放送 | ||||||
| 0.6 | テレビ地上波放送 UHF帯 ch.34 - ch.51 地上デジタルテレビジョン放送 | ||||||
| 0.7 | テレビ地上波放送 UHF帯 ch.51 - ch.62 地上デジタルテレビジョン放送 | GSM710 GSM750 | |||||
| 0.8 | PDC : NTTドコモ (mova) W-CDMA : NTTドコモ (FOMAプラスエリア) cdmaOne/CDMA2000 1x (EV-DO含む) : KDDI (au) 第三者無線 : 全国移動無線センター (mcAccess e) | T-GSM810 CDMA2000 国際ローミング GSM850 | CDMA2000 GSM850 D-AMPS AMPS W-CDMA | ||||
| 0.9 | GSM900 NMT900 T-GSM900 | ||||||
| 1.2 | アマチュア無線(1.2GHz帯) | ||||||
| 1.4 | PDC : ソフトバンクモバイル、KDDI (ツーカー)、NTTドコモ(movaデュアルバンド、関東・東海シティフォン、関西シティオ) 第三者無線 : 日本移動通信システム協会 (NEXNET) | ||||||
| 1.5 | |||||||
| 1.7 | W-CDMA(FDD :上り) : NTTドコモ (FOMA)、イー・アクセス、W-CDMA事業者向け追加帯域 | GSM1800 (DCS1800)(FDD :上り) | WCDMA1721(FDD:上り)予定 | ||||
| 1.8 | W-CDMA(FDD :下り) : NTTドコモ (FOMA)、イー・アクセス、W-CDMA事業者向け追加帯域 高度化PHS(TDD : 1.8) : ウィルコム (W-OAM) PHS | GSM1800 (DCS1800)(FDD :下り) | |||||
| 1.9 | PHS W-CDMA(FDD :上り) : NTTドコモ (FOMA)、ソフトバンクモバイル (SoftBank 3G) CDMA2000 1x(FDD :上り) : KDDI | DECT | PHS(一部) CDMA2000 1x (PCS : KTF、LGテレコム) | CDMA2000 GSM1900 D-AMPS W-CDMA | |||
| 2.0 | TD-CDMA(TDD : 2.0) : アイピーモバイルが参入計画中 | ||||||
| 2.1 | W-CDMA(FDD :下り) : NTTドコモ (FOMA)、ソフトバンクモバイル (SoftBank 3G) CDMA2000 1x(FDD :下り) : KDDI | WCDMA1721(FDD:下り)予定 | |||||
[編集] 関連項目
- 無線アクセス : データ通信を主としたものの概要
- Next Generation Network : Internet Protocolを用いたマルチメディアサービス実現する次世代電話網
- Fixed Mobile Convergence : 固定・移動体通信を統合した通信サービス

