生活保護

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生活保護(せいかつほご)とは日本憲法第25条に規定する理念(生存権)に基づき、が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに自立を助長することをいう。


目次

[編集] 生活保護の原則

生活保護は次の原則に則って適用される。

  • 無差別平等の原則(生活保護法第2条)
  • 補足性の原則(生活保護法第4条)
生活保護は、資産(預貯金・生命保険・不動産等)、能力(稼働能力等)や、他の法律による援助や扶助などその他あらゆるものを生活に活用してもなお、最低生活の維持が不可能なものに対して適用される。
民法に定められた扶養義務者の扶養、その他の扶養は生活保護に優先して実施される。
  • 申請保護の原則(生活保護法第7条)
  • 世帯単位の原則(生活保護法第10条)
生活保護は世帯を単位として要否を判定し、その程度を決定する。

[編集] 生活保護の種類

生活保護は次の8種類からなる。

生活困窮者が、衣食、その他日常生活の需要を満たすための扶助であり、飲食物費、光熱水費、移送費などが支給される。主として第一類と第二類に分け計算され、第一類が個人ごとの飲食や衣服・娯楽費等の費用、第二類が世帯として消費する光熱費等となっている。
  • 教育扶助
生活に困窮する家庭の児童が、義務教育を受けるのに必要な扶助であり、教育費の需要の実態に応じ、原則として金銭をもって支給される。
生活困窮者が、家賃、間代、地代等を支払う必要があるとき、及びその補修、その他住宅を維持する必要があるときに行われる扶助である。原則として金銭をもって支給される。
  • 医療扶助
生活困窮者が、けがや病気で医療を必要とするときに行われる扶助である。原則として現物支給(投薬、処理、手術、入院等の直接給付)により行われ、その治療内容は国民健康保険と同等とされている。なお、医療給付は生活保護指定医療機関に委託して行われるが、場合により指定外の医療機関でも給付が受けられる。予防接種などは対象とならない。
  • 介護扶助
要介護又は要支援と認定された生活困窮者に対して行われる給付である。原則として、生活保護法指定介護機関における現物支給により行われる。介護保険とほぼ同等の給付が保障されているが、現在普及しつつあるユニット型特養、あるいは認知症対応型共同生活介護、特定施設入所者生活介護は利用料(住宅扶助として支給)の面から制限がある。
  • 出産扶助
生活困窮者が出産をするときに行われる給付である。原則として、金銭により給付される。
  • 生業扶助
生業に必要な資金、器具や資材を購入する費用、又は技能を修得するための費用、就労のためのしたく費用等が必要なときに行われる扶助で、原則として金銭で給付される。平成17年度より高校就学費がこの扶助により支給されている。
  • 葬祭扶助
生活困窮者が葬祭を行う必要があるとき行われる給付で、原則として、金銭により給付される。

これらの扶助は、要保護者の年齢、性別、健康状態等その個人または世帯の生活状況の相違を考慮して、1つあるいは2つ以上の扶助を行われる。

[編集] 生活保護の支給例

平成17年度の基準(第61次改訂生活保護基準額表より)

  • 東京都特別区内在住(1級地の1) 4人世帯 41歳(障害者1級、傷害年金無)、38歳、12歳、8歳、妊娠中(7ヶ月)
    • 第1類 38,180円(41歳) 40,270円(20-40歳) 42,080円(12-19歳) 34,070円(6-11歳)
    • 第2類 55,160円(4人世帯)
    • 各種加算
      • 妊婦 13,810円(妊娠6ヶ月以上)
      • 障害者 26,850円(障1・2級/国1級)
      • 特別介護料 12,090円(世帯員)
      • 児童養育加算 5,000円(第1・2子)
    • 住宅扶助 (最大)69,800円
    • 教育扶助 2,150円(小学校) 4,180円(中学校) 学級費等(最大)610円(小学校) 740円(中学校)

合計 344,990円 ※小中学校の教材費、給食費、交通費等は実費支給。

  • 東京都特別区内在住(1級地の1) 単身世帯 31歳
    • 第1類 40,270円(20-40歳)
    • 第2類 43,430円(単身世帯)
    • 住宅扶助 (最大)53,700円

合計 137,400円

[編集] 実施機関

生活保護の実施機関は、原則として、都道府県知事市長及び福祉事務所を管理する町村長であり、これらの事務は法定受託事務である。なお、福祉事務所を管理していない町村(ほとんどの町村)においては、その町村を包括する都道府県知事がこの事務を行う。

また、都道府県知事、市町村長の下に社会福祉主事が置かれ、知事・市町村長の事務の執行を補助し、民生委員は市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力するものとされる。

社会福祉法では、生活保護を担当する現業員、いわゆるケースワーカーを市部では被保護世帯80世帯に1人、町村部では65世帯に1人を配置することを標準数として定めている(社会福祉法第16条)。

これら実施機関では原則として国が示す実施要領に則り保護を実施しているが、都道府県単位において解釈の差が出ており地方の裁量とも言える差が出ている。

[編集] 保護施設

都道府県・市町村は、生活保護を行うため、保護施設を設置することができる。なお、市町村が保護施設を設置する場合、都道府県知事への届出が必要である。また、保護施設が設置できるのは、都道府県・市町村のほか、社会福祉法人日本赤十字社だけである。

[編集] 保護施設の種類

保護施設には、次の5種類がある。

  • 救護施設
  • 更生施設
  • 医療保護施設
  • 授産施設
  • 宿所提供施設

[編集] 生活保護の対象者

1946年の旧生活保護法においてはすべての在住者を対象としたが、1950年の改訂で国籍条項が加わり、日本国内に住む日本国籍を持つ者のみが対象とされた。その後1954年の厚生省社会局長通知「正当な理由で日本国内に住む外国籍の者に対しても、生活保護法を準用する」を根拠として保護を実施している。判例上もこの条項を適法とする判断が多いが、先進国で外国籍の者を生活保護対象にしている国は少ない。(米国は外国籍の者に生活保護は支給されない)外国籍の者は生活保護法上の行政処分に対する行政不服審査法に基づく不服申し立てはできない。

[編集] 被保護者の権利と義務

審査の結果、生活保護費を受給できると認められた者を被保護者という。被保護者は次のような権利を得るとともに、いくつかの義務を負う。

  • 不利益変更の禁止 - 正当な理由がない限り、すでに決定された保護を不利益に変更されることはない(生活保護法第56条)。
  • 公課禁止 - 受給された保護金品を標準として租税やその他の公課を課せられることはない(生活保護法第57条)。
  • 譲渡禁止 - 保護を受ける権利は、他者に譲り渡すことができない(生活保護法第59条)。
  • 生活上の義務 - 能力に応じて勤労に励んだり支出の節約を図るなどして、生活の維持・向上に努めなければならない(生活保護法第60条)。
  • 届出の義務 - 収入や支出など、生計の状況に変動があったとき、あるいは居住地または世帯構成に変更があったときは、速やかに実施機関等へ届け出なければならない(生活保護法第61条)。
  • 指示等に従う義務 - 保護の実施機関が、被保護者に対して生活の維持・向上その他保護の目的達成に必要な指導や指示を行った場合(生活保護法第27条)や、適切な理由により救護施設等への入所を促した場合(生活保護法第30条第1項但書)は、これらに従わなければならない(生活保護法第62条)。
  • 費用返還義務 - 緊急性を要するなど、本来生活費に使える資力があったにも関わらず保護を受けた場合、その金品に相当する金額の範囲内において定められた金額を返還しなければならない(生活保護法第63条。主に、支給されるまでに時間がかかる年金などが該当する)。

[編集] 生活保護世帯数の推移

厚生労働省の社会福祉行政業務報告によれば、生活保護を受けている世帯の数(被保護世帯数)は、1980年度の746,997世帯から1992年度には585,972世帯にまで減少していたが、その後増加に転じ2004年度は998,887世帯と1980年度の約1.3倍に増加している。2005年度には、一月の平均被保護世帯数が100万世帯を突破した。

被保護世帯を世帯類型別に見ると、障害者世帯・傷病者世帯、母子世帯、その他の世帯は1980年頃から1990年代半ばまでは減少傾向にあったが、バブル崩壊による経済の悪化によって増加に転じている。被保護世帯の中で、高齢者世帯は趨勢的に増加しており、1980年度は全体の30.2%であったが2004年度には46.6%とほぼ半数を占めるようになっている。

生活保護世帯の増加は2001年に発足した小泉内閣の下で、政府が進めてきた構造改革によって所得格差が拡大していることの証拠として指摘されることがある。しかしバブル崩壊による景気後退によって既に被保護世帯数の増加が起こっていたことや、人口構造の高齢化による高齢者世帯での被保護世帯数の増加という要因もあり、被保護世帯数の増加をもって格差が拡大していると言うことは難しい。

[編集] 生活保護をめぐる問題

生活保護をめぐる問題としては、不正受給の問題と水際作戦、地域較差、保護水準の妥当性、生活保護現業員の配置実態、意識の問題がある。

[編集] 不正受給

何らかの方法によって、実際に支給されるべき金額以上の保護費を不正に受給すること。代表的な不正受給の例として、不正就労をはじめとした収入の申告違反を伴ったものがある。所得税の源泉徴収による申告をしない雇用主の下での現金払いによる就労や、友人の名義を借りた不正就労による賃金の受給、オークションや中古リサイクル店などへの売却金、仕送りの受け取り、主ではない未成年受給者(主に高等学校在学生)のアルバイト収入、生命保険解約返戻金や事故などによる賠償金、ギャンブルによる配当金など、これらは本来、すべて収入として福祉事務所に申告するべき物であり、通常はその収入分を減額した金額で保護費が支給される。もっとも、申告した収入が正当な労働による収入である場合の必要経費や、事故賠償金の一部を治療費に当てるなど、生活費に用いる資産ではないことが明らかな場合は、その分を収入認定から控除することができる。ただし、その判断は福祉事務所で行うため、あらゆる収入は必ず福祉事務所に届け出なければならない。過失によりこの申告を怠ったため、結果的に保護費が過剰に給付される場合もあるが、この型の不正受給者の多くは、故意に収入申告を怠って保護費の不正受給をはかっているとの指摘がある。 また、世帯単位の原則を悪用し、偽装離婚等によって同一世帯で暮らしながら個々に受給をはかるなどのケースも多い。

不正受給が過失によるものであるなど、再犯の可能性が低いものについては、生活保護法第63条による不正受給金額の返還命令が行われ、悪質な場合は同78条による徴収の実施や同85条に基づく罰則規定が適用されることとなる。また、保護の廃止が検討されることもある。

悪質な不正受給が跡を絶たない理由には、福祉事務所が積極的な不正追求を行う担保となりうる法令的根拠の整備が乏しいことにも原因があるという指摘がある。現状、近隣住民からの苦情や告発があっても刑事告訴にまで発展するケースは稀であり、警察も積極的に立件に乗り出さなかったという行政側の体制の不備を指摘する声もある。 もっとも、悪質な不正受給は、言うまでもなくその行為を行う被保護者に非があることから、より厳格な受給決定手続や啓蒙の必要性が唱えられている。 これに関係し、昭和50年代の北九州小倉の不正受給事件などで明らかになったように、不正受給者には暴力団その他の特定団体が絡む件も多く、不正受給を是正しようとするケースワーカーに有形無形の圧力も加えられることもあり、また不正受給の方法が被保護者同士の情報交換やインターネットなどによって広範囲に知れ渡る事例もあり、不正受給抑制の制度的な担保が望まれている。

近年はホームレスに保護を受けさせ、受けた支給金を騙し取るグループの存在が指摘されている(NHKクローズアップ現代2007年3月7日放送「狙われた生活保護」)。

[編集] 水際作戦

水際作戦とは、申請の受付窓口である福祉事務所がなかなか申請書を交付しないと言う申請者側が主張する福祉事務所の行政態度について、生活保護者の保護を目的の一つとする市民団体等が名づけたものである。生活保護扶助費用の1/4および現業員の給与が地方自治体予算からの支出となるため、財政状況が厳しい自治体に強く見受けられると言われている。

福祉事務所においては、通常生活相談に来た人に対し、失業したら失業保険が受給できないか60歳以上の場合や病気、ケガなどをした場合は各種年金を受給できないかなどの、他法優先の制度の趣旨説明の他に就労の可不可、扶養義務者の扶養義務などについて説明を行う。このとき、福祉事務所が生活保護申請書をなかなか交付しないとの主張を、全国生活と健康を守る会連合会<ref>しんぶん赤旗 2006年10月14日</ref>や日本弁護士連合会<ref>日本弁護士連合会ウェブサイト 人権擁護大会宣言・決議集 2006年10月6日</ref>などが行っている。最後の頼みとして相談に来た相談者に、「稼働能力がある」(「稼働能力がある」だけでは保護しない理由にはならず、「稼働能力があり、それを活用できる場があるにもかかわらず、稼働能力を活用しようとしない」場合にはじめて却下が可能となるものである。つまり、稼働能力を有していても、それを活用できる場がない場合や、求職活動をしていても職が得られない場合は保護の要件を欠けるものではない。)、「扶養義務者がいる」(生活保護法4条2項は「民法に定める扶養義務者の扶養は保護に優先して行われるものとする」と規定しているが、この「扶養義務が保護に優先する」とは、保護受給者に対して実際に扶養援助が行われたら収入認定してその援助の金額の分だけ保護費を減額、または保護を廃止するという意味であり、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」とする4条1項とは異なり、扶養自体は保護の前提要件ではない。まだ扶養義務者に援助を求めていない場合でも、そのことのみを理由に保護申請を却下することはできない。申請者がまだ扶養義務者に援助要請をしていなくても、要保護状態であれば保護を開始し、保護開始後に福祉事務所が扶養期待可能性に応じて扶養義務者に受給者への援助の可否を照会すればよいものである。この点、1946年制定の旧生活保護法では、「扶養義務者が扶養をなしうる者」は実際に扶養援助がなされていなくても保護の要件を欠くとされていたが、1950年制定の現行生活保護法ではこの欠格条項は撤廃されている。)「ホームレスである」(申請時に住所を有していないことが保護しない理由にならないことは言うまでもない。)、「現住居の家賃が高すぎる」(申請時点で住宅扶助基準額を超える家賃の住宅に居住しているとしても、そのこと自体は申請者の要保護性とは何の関係もなく、保護を開始してから転宅費を一時扶助して基準額以内の住居に転居させるべきものである。)などを理由に窓口で申請自体を断念させているという事例が多いとされている。この問題は朝日新聞(2006年7月16日付け)や2006年1月15日放送の日本テレビNNNドキュメント「ニッポン貧困社会 生活保護は助けない」や2006年11月30日放送の報道ステーション、そして2007年2月25日放送のNNNドキュメント「その先は孤独死 行き詰まる生活保護」で「ヤミの北九州方式による水際作戦」のようにマスコミでは多く報じ、県議会や国会でも取り上げられた。北九州市は「報道ステーション」の放送内容に抗議した<ref>北九州市公式サイト掲載の抗議文</ref>が、07年2月に行われた市長選挙で、これまでの市の生活保護行政を批判した候補者が前市長の後継者を破って当選した。北橋健治・新市長の下で、第三者による検証委員会が設置され、市の保護行政の検証が進められている。 福祉事務所がこのような対応を行う背景として、所謂「123号通知」(厚生省社会局保護課長・監査指導課長通知 昭和56年11月17日社保第123号「生活保護の適正実施の推進について」)の存在が指摘されている<ref>「123号通知」自体は、暴力団関係者が絡んだ不正受給を契機として、申請書に添付する関係書類などを定めたものである。なお、この通知については2000年3月31日付け社援第15号厚生省社会局保護課長・監査指導課長通知によって、同意書(実施機関が金融機関や保険会社に対して、申請者が資産の有無等を調査することに同意したことを証明する文書)の提出が必ずしも必須ではないなどの改正が行われている。また、2001年6月以降は地方自治法第245条の9第1項に基づく「事務処理基準」とされた。</ref>。ただし、議員などが同席したり弁護士やPSWなどが同席すると申請書の交付が比較的容易になされたりすることなどから、申請書の交付の遅延による申請の遅れにつき、審査請求において初回相談日を申請日と見なすと判断された事例もある。

なお、この問題に対して日本司法支援センター(法テラス)は、2007年4月から生活保護申請時に弁護士が同行する事業を始めると発表した。

セーフティネットとしての生活保護という制度を否定してはならない」と生活と健康を守る会や日弁連で叫ばれている。 もっとも、一方では別方向から生活保護制度を危惧する声も上がっている。これは、セーフティネットとは、保護法の趣旨にもあるとおり最後の手段であるのに、一部援護団体が、働く意欲のない人や、働けるのに働こうとしない人、また他に扶養等の手段がある人等にも「これは権利であるから」と安易に申請を勧め、その結果、生活保護に頼る人間を増やしているなどの指摘に関連がある。 また、ホームレスを施設に入所させて生活保護を受給させ、保護費を中間搾取する民間団体が問題化したり、民間の賃貸住宅の保証人となって一時家賃を立て替え、保護費からの取り立てをはかる保証人会社(保護費は行政が支給するものであるので、この場合は回収不能リスクがなくなる=必ず取り立てられる)などが問題となっており、制度のほころびが表面化している。

そもそも、戦争終結直後の膨大な生活困窮者を救済するためにGHQが指示して制度を創設した頃とは社会状況が根本的に異なっているとの指摘もあり、セーフティネットとしての生活保護の再検討が叫ばれることも多い。 生活保護制度自体の再検討までいかなくとも、現在の現金支給という方法ではなく、アメリカの数州で行われているような食料切符制度(バウチャー)などへの変更はしばしば新聞紙上を賑わせている。

また、この『水際作戦』に加えて、2006年度を以って老齢加算と母子加算が廃止されたことも生活保護を受ける人たちの負担となっている。

[編集] 地域較差

保護率(人口に対する生活保護受給者数の割合。パーミルで表す)の地域較差についても大きな問題とされている。全国的に見ても保護率が高い大阪府、受給世帯数が多い東京都、福祉立県を目指している長野県などでは、比較的優遇されていると言われている。

全国的に見ても保護率が低い富山県や保護増加率が低い福岡県では、上記水際作戦だけでなく、法のぎりぎりの範囲まで申請を却下されたという悲痛な声が生健会などで報告されている。扶養照会(福祉事務所が申請者・受給者の三親等以内の親族に対して扶養が出来ないかを確認する事務手続き)を逆手にとって、電話で朝な夕な多数の電話攻勢をして月一万円の援助なら可能という回答を理由にして「扶養義務者による扶養可能」と、本来扶養可能の判断基準は生活保護の最低生活費が基準になるのにもかかわらず、無理矢理扶養可能としたりなどの行為が生健会に多数報告されている。また酷い場合には扶養義務者ではない友人に扶養や支援をさせようとした例もある。これら富山県の被害者となった受給者などからの悲痛な叫びがネット上の掲示板で書きつづられることもある。もっとも、これら苦情については、援護団体に寄せられた苦情であって信憑性が薄いとの指摘がされていたが、国会で取り上げられたこともある。また社会的事情から、ある程度審査を厳しくする必要性もあるとの指摘もある。審査を甘くした場合、つけは生活保護の原資となる税金を納めている層に確実に転嫁されるからである。(前段落で批判された福岡県内のある福祉事務所では、自動車保有が禁止されていた時代に、8,900の保護世帯において約1,800台の自動車保有が確認された(つまり8,900件の保護世帯のうち、1,800件あまりが結果的に不正受給となった)ことがある。いうまでもなく、自動車保有が禁止された生活保護世帯が自動車を保有し交通事故を起こした場合には、賠償能力が殆どない。この場合、非難されたのは自動車保有を見逃した行政側であった。)

厚生労働省が発表した平成17年の厚生労働白書によると、富山県の保護率が全国一少なく、保護率の高い北海道や大阪府との差が数倍であった。このことについて、一部の保護者の援護団体は、富山県の生活保護支給抑制策に起因していると富山県を非難している。 もっとも、富山県の生活保護率の低さは、勤労者世帯の実収入の高さ(全国1位)、平均貯蓄率の高さ(全国2位)、持ち家比率・住宅延べ面積の高さ(全国1位)、世帯当たり自動車保有台数の多さ(全国2位)などにみると、その実質的豊かさに起因するとの見方が強い。また、富山県の保守的な県民性(NHK全国県民意識調査)からは、生活保護の受給を恥と感ずることが多いので、生活保護受給率の低さは、決して富山県の政策に起因するものとは言えないとの指摘もある。

[編集] 保護水準の妥当性

バブル崩壊後の「失われた10年」といわれる長期不況のため、社会の低所特層の収入水準が低下し、また生活保護の支給額が上昇したため、低所得層と生活保護受給者においては所得額が接近した。そのため、生活保護を受けている方が働くよりも収入が増える場合も多く、国民の反感を買っている。

実際に、何十年も年金を払ってきた世帯の年金支給額よりも、生活保護受給者の方が受給額が多いこともよく見られる。2006年2月時点で受給世帯が100万世帯を超えており、現状の生活保護水準が妥当かという問題が提起されている。さらに、生活保護受給者の親に育てられた子供の意識改革が進まず、親子数代にわたって生活保護を受給するケースも多く見られ(「ケースの子はケース」)、生活保護のありよう自体にも疑問が示されている。また、医療経費が現物支給となっており、医療保険料等もかからないことから<ref>診察や治療にかかった費用については、被保護者ではなく福祉事務所へ直接請求され支払いされる。このため、「医療費は無料」と誤解されるケースが散見される。詳細は#生活保護の種類医療扶助を参照。</ref>、申請時の困窮事由がなくなっても稼働を抑えて受給を続ける者も多いが、そのような受給者に対して実施機関は指導はできても強制力を持たない。生活保護受給水準の世帯を減少させる政策(自立保護、就労援助、所得向上等)とともに、セーフティネットとしての生活保護制度の本質自体にも議論が行われているのが現状である。

また、生活保護法第一条の目的規定は、「この法律は、日本国憲法第二十五条 に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」としている。しかし、実際には外国籍の住民にも生活保護は、支給されている。侵害留保の原則からいえば違法といえないのかもしれないが、「国民」という文言の解釈からは、外国籍の住民を支給対象に含めることに疑問の余地がある。なお、東京高裁平成9年4月24日判決は、「国民」の解釈を日本国籍を有するものに限定するのではないと解釈している。

[編集] 現業員の配置実態

厚生労働省は、平成17年厚生労働白書の中で生活保護現業員(ケースワーカー、地区担当員など、福祉事務所によってその名称は異なる)の配置数不足が増加傾向にあることを発表した。2000年の配置定数に対する現業員不足数は354人であったが、2004年には1198人になっており、約3.4倍となっている。また、東京都は2004年6月に「生活保護制度改善に向けた提言」の試案を発表<ref>東京都福祉保健局ホームページ > 報道発表 > 旧福祉局 > 平成16年6月17日</ref>し、その中で保護率の増加に現業員の配置が追いついておらず一人当たりの担当世帯数が増加していることを指摘した。同時に、現業員の経験不足や社会福祉主事の資格を持つ担当者の低下をも示している。地方自治体の職員にとって生活保護事務は事務処理の膨大さ(単に訪問業務をこなせば良い訳ではない)や安全面([10 担当職員への暴力行為]参照)から敬遠される傾向の高い業務の一つであり、結果的に社会人としても公務員としても経験が不足している新人職員が配置されることも少なくない。

現業員の配置定数は、1951年に制定された社会福祉事業法(現・社会福祉法)から変更されておらず、その間にも介護保険制度の創設など現業員の業務は増加している。また、生活保護の他方優先の原則によって、現業員には広範な福祉制度に対する高い知識力が求められる。これら現業員の質をいかに高めるかについても大きな課題となっている。

[編集] 意識問題

生活保護の一番の問題は、受給している人と受給していない人の意識の差が大きいという意見がある。受給していない人の中には、「私はこんなに苦労しているのに、受給者は国からお金を貰って楽をしている」「私は苦しんでいるのに・・・」「羨ましい」との意見を持つものがいる。一方、受給者側はいよいよ仕方なく受給することになってしまった人が多く、不正受給をしている人を除けば、傷病・老齢などにより就労が困難で収入がなく、最終手段として受給に至るケースが大半である。ただし、これについても「年金掛け金を払わず、単に老齢という理由のみで支給されるのは、国民の平等感を損ねる」との批判もある。実際に、年金で暮らす高齢者より、年金掛け金などを払わずに生活保護を受けている方が受給額が多い場合も多く、問題化している。 また、被保護者は保護費受給の権利を得るとともに様々な義務を課せられ、生活に制限を受ける(生活保護法第56条~第63条)。生活保護の受給を恥だと考え、申請をしないことにより最悪な事態に陥ってしまうケースもある。逆に、生活保護の受給を、国民の納税義務と一体化していない単なる権利だと考え、安易に申請し財政を圧迫する現象も見受けられる。

[編集] パチンコとの関連

生活保護を受給している人で、理由もなく借金を抱えている場合は、パチンコ依存症の可能性が高いという<ref>2006年6月30日付配信『子を車に放置 パチンコ依存症の親たち』(all about)</ref>。

[編集] 生活保護をめぐる訴訟

生活保護をめぐる訴訟として「朝日訴訟」が有名である。

[編集] 担当職員への暴力行為

従来からあった問題であるが、ここ数年(平成17年以降)においても、生活保護担当職員が傘の先で突かれたり(東京都)、出勤途中に顔を刃物で切られたり(岡山市)、泥酔して訪れた受給者に刃物で刺されたり(神戸市)、果ては刺殺されたり(長崎県)といった行政対象暴力が頻発している。
最近(平成19年度)では福祉事務所へ刃物を持った男が訪れて一般市民も巻き込む騒ぎとなり、福祉事務所職員が常備されていたさすまたで男を制圧した(熊本市)。このように、暴行・傷害にまでは至らないまでも、刃物や木刀・バールなどによって福祉事務所職員や市役所というパブリックスペ-スの安全が脅かされる状況は全国的に見られ、さすまたなど防犯グッズを常備している福祉事務所も少なくない。
上記の各事例は新聞報道のあったものばかりであり、実際に発生した事件はさらに多数に上るといわれている。特に熊本市の事件と同様の事例は、報道されることがないだけで、実際には頻発している。

[編集] 地方分権と生活保護

2005年、国(厚生労働省)と地方との間で「三位一体の改革」の一環として、生活保護費の国と地方自治体との負担率を変更しようとの議論が行われた。

現制度では支給される保護費について国3/4、地方1/4の割合で負担しているが、これを国1/2、地方1/2に変更しようとするものである。さらに住宅扶助の一般財源化(地方交付税交付金に含めて国が交付)、保護基準(最低生活費)を地方が独自に設定することができるようにしようとした。

厚生労働省の主張は、生活保護行政事務の実施水準が低いところは保護率が高い水準にあり、保護費の負担を地方に大きく負わせることで生活保護行政事務の実施水準を向上させざるを得ない状況にして、国と地方を合わせた保護費の総額を減らそうというものである。

しかしながら地方六団体は、憲法第25条で国が最低生活の保障を責任を持っていること、最低生活を保障するという事務は地方自治体に裁量の幅がほとんどないこと(幅を持たせるとすれば、最低生活費を下げるあるいは上げるということになる)、仮に現段階での地方の負担増に合わせて税源を移譲されたとしても今後保護世帯数が増加すればその分が総て地方の負担となること、等から猛反発した。福祉行政報告例第1表~第4表並びに第6表の生活保護関連統計の国への報告を停止する行動に出た自治体もあった。

保護率が高い地域を都道府県ごとにみると、北海道、青森、東京、大阪、福岡、沖縄等であり、地域経済が活発ではない地域(北海道、青森、沖縄)、過去の炭坑閉鎖の影響を引きずる地域(北海道、福岡)が主である。その反面、東北地方の中でも青森県が突出して保護率が高い、四国では保護率が高い県(高知、徳島)と低い県(香川、愛媛)に明確に分かれる等、単に経済状況だけでは説明しきれない面もある。

保護率の高低は、経済状況だけでなくその地域の世帯の状況(1世帯当たりの世帯員数、3世代同居比率等)や県(道)民性、住民の意識(権利として主張する、恥だから受けたくない)等様々な要因が絡み合い、一概に言い切れるものではない。

なお、この問題については後に撤回され、現行どおりの負担割合とすることで決着した。

[編集] 関連項目

  • 社会保障
  • 公的扶助
  • 所得格差
  • アメリカ合衆国では日本の生活保護に相当するものとして現在Aid to Families with Dependent Children(AFDC 扶養児童の為の家族手当て)に替わってTemporary Assistance for Needy Families(TANF 貧しい家庭のための一時給付)が支給されている。ただし、TANFはAFDCに比べて期間が一時的となり、就職しているのが受給要件である。

[編集] 脚注

<references/>

[編集] 参考文献

  • 『How to 生活保護 暮らしに困ったときの生活保護のすすめ【介護保険対応版】』 現代書館 東京ソーシャルワーク編、ISBN 4768434223
  • 『これが生活保護だ 福祉最前線からの検証』 高菅出版 尾藤廣喜・松崎喜良・吉永純編、ISBN 4901793101
  • 『母さんが死んだ しあわせ幻想の時代に』 社会思想社 水島宏明著 ISBN 4938536412

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