潜水艦
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潜水艦(せんすいかん、Submarine)とは、水上のみならず、水中も航行することのできる軍事作戦用の船舶を指す。第二次世界大戦においてはサイズに応じて潜水艦、潜水艇、特殊潜航艇と様々に呼ばれた。民間で使用される海底探査や水中遊覧用の船舶は「潜水艇」や「潜水船」と呼ばれる。
軍備は、その大小を問わず安全保障上の問題から性能や仕様などには不明な点が多いが、その中でも隠密行動を身上とする潜水艦は機密事項が多い。最大潜航深度は最たる軍事機密事項である。
目次 |
[編集] 機能と任務
潜水艦は最大で水深300~800m程度に潜航し、好きな時に好きなところから攻撃できる隠密兵器である。潜航した状態で巡航する場合は、水上船舶との衝突を防ぐため水深約100m付近を航行している。この隠密性を利用して下記内容の任務が与えられる。
- 敵に気付かれずに監視網を突破できる。 第一次・ 第二次世界大戦ではドイツの潜水艦が、水上兵力では圧倒的に優勢であったイギリス海軍の警戒線を突破して大西洋や地中海へ進出した。第二次大戦中にドイツへ往復した日本潜水艦もある。
- 敵対国の港湾に接近・侵入し、偵察・情報収集を行う。
- 敵の予想進路上に潜み、待ち伏せ攻撃を行う。
- 戦略ミサイル搭載原子力潜水艦による核抑止力。原子力潜水艦は浮上することなく行動しつづけることができ、その行動の隠密性は非常に高い。この原子力潜水艦に長距離核ミサイル (SLBM) を搭載すれば、万一核戦争が勃発し地上基地が敵の先制攻撃で壊滅した場合でも、無傷で強力な反撃力を温存できる。自国がこのような反撃力を保有すれば敵は先制攻撃を決断できず、核戦争は起こらないというのが核抑止力の理論。
- 隠密性の高い潜水艦を探知し攻撃するのは、やはり潜水艦が有利であると言われている。そこで敵の戦略ミサイル潜水艦を攻撃する任務や、自国の艦隊を敵の攻撃型潜水艦から護衛する任務を与えられている。アメリカ合衆国の機動部隊には必ず攻撃型原子力潜水艦が1隻ないし2隻随伴していると言われている。
- 特に小型の潜水艇は、外洋航行力には欠けるものの、沿岸など地形の複雑な場所に隠れると極めて探知されにくい。このため、敵の支配水域に侵入して情報収集に当ったり、スパイを送り込んだり、捕えた敵を海岸付近で収容して誘拐したりすることに用いられる場合もある。
[編集] 種類
[編集] 攻撃潜水艦
厳密には、任務や大きさ等に応じ、艦隊型潜水艦、航洋潜水艦、沿岸哨戒潜水艦、対潜潜水艦(SSK)などに分けられるが、全て敵の水上艦艇や潜水艦などを探知し撃沈する事を任務とする潜水艦であるので、本項では一括して扱う。
攻撃潜水艦は米海軍式にSSと略される事が多い。原子力機関を搭載した物は、この後ろに原子力(Nuclear)を表すNを付けてSSN(攻撃型原子力潜水艦/攻撃原潜)と呼ばれる(ロシア海軍式に略すとそれぞれPL、PLAになる)。
かつては敵水上艦に速力・防御力・探知能力などで劣ったため、敵の巡洋艦や駆逐艦とまともに戦うには分が悪く、主に待ち伏せ攻撃や港湾での情報収集、特殊部隊投入、物資輸送、商船を相手とする通商破壊などに投入された。
隠密性に優れる潜水艦は敵に気付かれずに監視網を突破できる。その利点を生かし、第一次・第二次大戦ではドイツの潜水艦が、水上兵力では圧倒的に優勢であったイギリス海軍の警戒線を突破して大西洋や地中海へ進出した。第二次大戦中にドイツへ往復した日本潜水艦もある(遣独潜水艦作戦)。
大日本帝国海軍は艦隊決戦用に潜水艦を建造・整備し、太平洋戦争中は敵主力艦攻撃へ重点的に投入したが、やはり目だった戦果が上げられないまま多くが撃沈されていった。
しかし第二次大戦以降、ソナーや各種電子機器、通信装置の性能向上、さらに原子力機関の登場により画期的に性能が向上し、現在では強力な戦闘力を持つ最強の軍艦として、かつての戦艦に匹敵する地位を獲得した。
また、攻撃目標は水上艦船から主に敵潜水艦を攻撃目標とするようになった。隠密性の高い潜水艦を探知し攻撃するのは、やはり潜水艦が有利だからである。そこで敵の戦略ミサイル潜水艦を攻撃する任務や、自国の艦隊を敵の攻撃型潜水艦から護衛する任務を与えられている。米海軍の空母機動部隊には必ず攻撃型原子力潜水艦が1隻ないし2隻随伴していると言われている。
また、冷戦終結後はソ連海軍の脅威が無くなったため、米海軍の潜水艦は主任務を潜水艦の攻撃及び護衛から、巡航ミサイルを用いての対地攻撃や、敵対国の港湾に侵入しての偵察・情報収集、特殊部隊の投入・回収などに主眼を移すようになった。
映画では潜水艦同士の戦いがよく描かれるが、今のところ現実には潜水艦同士が水中で戦闘を行ったケースは記録されていない。厳密には第二次大戦時、浅深度を航行中のUボートの、水上に突き出したシュノーケルを潜望鏡で目視して雷撃したケースがあるが、実質水上艦艇に対する雷撃と変らないため、潜行中の艦同士の戦闘とは言いがたい。ホーミング魚雷実用以前の潜水艦は、水中を三次元に移動する目標を攻撃することが困難であり、また現代でも潜水艦を保有する国同士の本格的な戦闘例が少ないためといえる。
[編集] 弾道ミサイル潜水艦
潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載し、敵国への核攻撃を目的とする。略称はSSBであるが、その性質上、原子力推進が取られるので、SSBNの略称しか見られない。米俗語で「ブーマー」と呼ばれる。通常動力型の弾道ミサイル潜水艦(SSB)は一時期は存在したが(ソ連海軍のゴルフ級)、原子力推進が普及した現代では見られない。
弾道ミサイルの射程が短かった冷戦初期はともかく、現代でもわざわざ潜水艦にSLBMを搭載する目的は、
- 原子力潜水艦は浮上することなく行動しつづけることができ、その行動の隠密性は非常に高い。この原子力潜水艦にSLBMを搭載すれば、万一核戦争が勃発し地上基地が敵の先制攻撃で壊滅した場合でも、無傷で強力な反撃力を温存できる。
と言う理由から。自国がこのような反撃力を保有すれば敵は先制攻撃を決断できず、核戦争は起こらないとされる(相互確証破壊戦略)。このための核抑止力を保持する目的がある。
任務上、核戦争が始まると真っ先に敵が攻撃して来るので、極めて生存性・静粛性が重視される。このため、定期的な浮上を必要とする通常動力推進は使えず、原子力推進が取られる。従来はSLBMの発射時に浮上する必要があったが、最近のものは潜航したまま発射できるものが増えている。
[編集] 誘導ミサイル潜水艦
誘導ミサイル潜水艦(SSG)は、巡航ミサイルを搭載しての対地攻撃を目的としたもの。冷戦終結による核抑止力の重要性が低下したため、米海軍では一部のSSBNを対地攻撃用に改造した改オハイオ級などが現れた。 ソ連海軍も冷戦期にSSGを保有していたが、こちらは米空母機動部隊攻撃用に対艦ミサイルを搭載していた。
[編集] 特殊潜航艇
排水量数十トン、乗員数名程度の超小型潜水艦。
兵装搭載力や航続力が小さく外洋航行力には欠けるものの、小型のため探知され難く、特に水深が浅く障害物の多い海域では探知・攻撃される可能性が低い。そのため、沿岸警備や待ち伏せ攻撃に使用される。第二次大戦時には真珠湾攻撃に使用された日本海軍の甲標的や、戦艦ティルピッツ攻撃に使用された英海軍のX型潜航艇などを始めとして各国で特殊潜航艇が製造され、それなりに活躍した。
現代でもその利点を生かして、敵の支配水域に侵入して情報収集に当ったり、スパイを送り込んだり、捕えた敵を海岸付近で収容して誘拐したりすることに用いられる場合もある。平時にも特殊潜航艇は領海に不法侵入して活動を行うので、冷戦期のソ連特殊潜航艇は西側諸国にとって厄介な敵であった。特に旧ソ連、旧ユーゴスラビアでの開発が著しく、北朝鮮は旧ユーゴスラビアから技術を移入して潜航艇建造に努めてきた経緯がある。一方で、イタリアにおいても一部企業が特殊作戦用の潜航艇を建造しており、同海軍は採用していないものの、旧ユーゴスラビアや中近東諸国、コロンビアなどに輸出された実績がある。
1996年の韓国の江陵浸透事件では、北朝鮮工作員がサンオ級潜航艇による韓国国内侵入に成功しており、侵入作戦用器材としての潜航艇の有用性を証明している。
[編集] 構造
[編集] 船体形状
潜水艦の船体は、水上航行に適した船型のものと、水中航行に適した涙滴型・葉巻型・鯨型の外形をしたものに分けられる。第二次大戦頃までの潜水艦は水中行動力が低く、水上航行をしている事が多かったので水上で航海しやすい船型の船体をしていた。
しかし第二次大戦以降は、電動機・蓄電池など推進装置の大幅な性能向上や、原子力機関の登場により潜水艦の水中行動力が画期的に上昇したために、水中航行に適した円筒型の形状となった。 世界で初めて円筒型船体になったものは、1953年にアメリカが建造した水中高速試作実験艦アルバコアで、その効果が確認されて以後、バーベル級から涙滴型船体が採用されていった。
円筒型の船体は水中での抵抗が少なく、また強度も高いので、船体に高い圧力がかかる深海での潜航には不可欠な形状である。円筒型の中でも、最も抵抗が少ないのは涙滴型であるが、艦内空間の大きさや建造のし易さでは葉巻型に分がある。また、水上航海し易いように浮上時の乾舷確保を狙った形状が鯨型である。
[編集] 船体構造
潜水艦の船体構造は、大きく単殻式と複殻式に分けられる。単殻式は、船体そのものを耐圧構造としたもの。複殻式は、乗員が乗り込み、兵装や機関などの主要部品を搭載する部分(内殻)の外部を外殻で覆って、魔法瓶のように二重構造としたもの。内殻と外殻の間を海水や燃料などの液体で満たしておけば、水圧は内殻にそのまま伝わり、外殻には伝わらない。したがって、内殻のみを耐圧構造とすればよい。単殻式船体と比べ、複殻式の特徴は、
- 外殻と内殻の間を燃料や海水を入れるスペースにできるので、航続力や予備浮力を大きくすることができる。
- 外殻と内殻が離れているため、外部に漏れる騒音を減らす事ができる。また、被弾時に外殻や間の海水・燃料が爆圧を吸収するので、内殻へのダメージが少なくなり、艦の耐久力を上げる事ができる。
- 単殻式より船体が大型化し、複雑な構造になりやすい。
- 船体側面部のソナー(コンフォーマル・ソナー/フランク・アレイ・ソナー)を取り付けるのが難しくなる。
などである。他に、単殻式船体の側面に非耐圧構造の張り出しを設けて、そこを海水や燃料を入れるタンクとした半殻式(サドル・タンク式及び部分複殻式)と呼ばれる、両者の中間を取ったものも造られ、第二次大戦時の潜水艦に多く見られる。 他に特殊な船体形状として、外殻の内部に2つの内殻を連結したような形状の、伊四〇〇型潜水艦やタイフーン級SSBNなどがある。
[編集] 材料
艦体構造材(船殻材)には深深度への潜航を可能とするため主に高張力鋼が用いられ、材質自体も絶えず改良が加えられている。一方ロシア(旧ソ連)で1970年代から1980年代にかけて建造されたアルファ級をはじめとするいくつかの艦級で、潜航深度の一層の増大と磁性を持たないという特徴を生かしてチタニウム合金が使用された。しかし加工が困難であることや音波の反射性が高いこと、そして高張力鋼を使用した場合に比べて格段にコストが高いことなどから一般化していない。
[編集] 潜水・浮上機構
潜水艦は、浮上している時は浮力が船体重量(重力)を上回っている状態で、潜航したい時は船体のタンクに海水を注入することで船体重量を増加させ、浮力と船体重量を等しくさせることで沈降する。
海水を入れるタンクにはメイン・バラスト・タンク(メイン・タンク、バラスト・タンクなどと略される)、ネガティブ・タンク、トリム・タンクがある。メイン・タンクは、海水や空気を注排出することで艦の浮力を調整するタンクで、ネガティブ・タンクは潜行時の補助に使う耐圧構造のタンクである。トリム・タンクは前後に二箇所あって、前部タンクと後部タンクの水量を変えることで艦前後の重量バランスを変化させ、艦の前後の傾き(トリム)を調整する。
潜航時はまず、メイン・タンクの上部にあるベント弁(タンク内の空気を排出する弁)を開く。すると、メイン・タンク下部にあるフラッドホールと呼ばれる穴から海水がタンク内へ流入し、メイン・タンク内が海水で満たされ、潜水艦は浮力と重力が釣り合った状態になり海面下に沈下する。その後、トリム・タンクや舵を操作して艦首を下げ、目標深度まで前進する。
目標深度到達後は、水中で艦を水平状態に保つ(トリムをとる)必要がある。つまり、潜舵・横舵を水平に保った状態で、艦体の水平がとれるようにする。具体的には、トリム・タンク内の海水の注出入して艦のトリムをとることになる。同じ潜水艦でも、個々の場合で積載状態が異なり重量バランスが変わるため、こうした操作が必要になる。
なお、潜水艦の潜航深度能力は最重要機密であり、一般に公開するときは深度計が見えないように目張りをしてしまうほどである。一般に発表される潜航深度は参考程度の価値しかないが、それらのデータによれば、攻撃型潜水艦の潜航深度は300~600m程度、戦略ミサイル原潜が100~500m程度である。武装した潜水艦の潜航深度記録は、1985年にチタン合金船殻の旧ソ連原潜K-278が記録した1027mで、K-278はこの深度で魚雷発射が可能であったと言われている。当時このような深度に潜む潜水艦を探知し攻撃する能力はアメリカも有していなかった。
軍事以外の潜水艇の深度世界記録は、1960年にアメリカのトリエステ2号が出した深度10,916mである。トリエステは深海での調査研究を目的としており、防御面やソナー対策など様々な性能が外殻に求められる軍事用の潜水艦に、当然ながらこれほどの潜航深度能力をもつものはない。
[編集] 舵・スクリュー
潜水艦は海中で三次元の運動を行う必要があるため、水上艦と違って縦舵の他に横舵と潜舵を付けている。第二次大戦時頃までの潜水艦は、水上航行している時間が長かったことから水上航行に適した配置であった。また、水中での最高速度が低かったため、大型の舵を付けていた。
その後、潜水艦は殆ど水中航行するようになり、水中での最高速度も大幅に向上したため、縦舵や横舵は水中航行に適した十字型やX字型の配置になった。また、潜舵は従来艦首部に配置されていたが、艦首部はソナーをはじめ音響装置のスペースになったために、騒音を減らすため艦橋側面に付けられるようになった(セイル・プレーン式)。ただし、ロシアは北極海などでの作戦を考慮して、艦首部に取り付けていた(バウ・プレーン式)。
潜水艦のスクリュー・プロペラは、水上航行を中心とした時代は小口径のプロペラを複数付ける形式がとられていた。効率を考えると、小口径プロペラを高速回転させるより大口径プロペラを低速回転させる方が、同じエネルギーでも推進効率が高い。しかし、大口径プロペラでは水上航行時に空回りしてしまうので、小口径プロペラを使わざるを得なかった。後、潜水艦が水中航行を中心とするようになってからは涙滴型船体を採用したため、大口径プロペラを装備するようになった。
潜水艦の推進器に関する問題で最も厄介なものが、キャビテーションと呼ばれる現象(プロペラ、特に周速が速い先端部付近の海水の圧力が低下することで海水が気化し、水蒸気の気泡が発生する現象)である。キャビテーションが起こると、プロペラ付近で水蒸気の気泡が破裂し、その音を敵に探知されてしまうからである。この現象を抑えるために、ハイスキュー・プロペラと呼ばれる特殊なプロペラや、ポンプジェット式推進装置を採用している。
プロペラの加工には高度な工作機械が必要とされるが、冷戦時代、東芝グループ企業である東芝機械がソ連に輸出した工作機械が、ソ連原潜用プロペラの加工に使われ、それによってソ連原潜の静粛性が向上したのではないか、との疑惑が持ち上がった(東芝機械ココム違反事件)。このため東芝がアメリカで糾弾の対象となり、東芝製ラジカセをハンマーで叩き壊すデモが行なわれたり、同社製品の不買運動が行われた。
だが、1990年代初めのソ連崩壊以降の情報公開により、これは「濡れ衣」であったことが明らかにされた。旧ソ連の潜水艦のプロペラ音の静穏化は、アメリカの潜水艦探知能力をソ連海軍が過小評価していたことを、ソ連の情報機関が確認したので改善された、という実に単純な理由からであった。工作機械の納入先も明らかになっており、プロペラとは無関係な部署であることもはっきりしている(にも関わらず、未だに、この「静粛化神話」を信じている者は多い)。軍事オタクの間では、これは当時日本が開発中であったFSXの設計に横槍を入れるためにアメリカが仕組んだ陰謀であると囁かれている。
[編集] 機関
潜水艦は、登場以来長らくディーゼル機関と電動機を併用していた。この方式には直結式とディーゼル・エレクトリック方式がある。直結式はディーゼル機関、電動機(発電機兼用)、スクリューを直結したもので、水上航行時にはディーゼル機関を、水中航行時は電動機で航行する。ディーゼル・エレクトリック方式は、水上航行時はディーゼル機関で発電機を回してその電力で電動機を動かし、水中航行時は蓄電池の電力で電動機を動かす。前者は水上航行時に高速が出せるが充電効率が低かった。そのため、潜水艦の水中航行が主流となった第二次大戦後には、充電効率に優れる後者が主流となった。
第二次大戦後は、原子力機関の登場により潜水艦の水中速力は大きく上昇、航続力は無限大にまで拡大した。原子力機関は有り余る出力を生かして海水を電気分解し、艦内へ常時新鮮な酸素を提供する。このため、燃料と排気の匂い(ディーゼル・スメル)で充満した通常動力潜水艦の艦内に比べ、原子力潜水艦は「世界一空気がきれい」と言われるほど艦内は快適である。事実吸入抗原によるアレルギー疾患をもつ人間も原子力潜水艦で潜行中には、アレルギー症状が消失してしまう。空気が完全にエアコンでコントロールされており、酸素も海水の電気分解で作られるため、花粉や埃などが存在しないためである。
常に蓄電池の残量を気にしながら、定期的な浮上を必要とする通常動力潜水艦と、無限の航続力を持ち氷の下の北極海すら航行可能な原子力潜水艦との間には、可潜艦(submersible)と潜水艦(submarine)ほどの差がある。こうして見ると、原子力潜水艦は圧倒的に優位と思われるが、欠点も幾つかある。原子力推進は、減速ギアの擦れる音や原子炉冷却水循環ポンプの騒音が発生するので、ディーゼル・エレクトリック式よりも静粛性に劣る。また、技術的水準や建造費、維持費が高く、保有できる国は限られる。日本等は技術上の問題の他、政治上の都合により保有していない。
他に近年、燃料電池やスターリングエンジンなど、通常動力潜水艦の水中行動力向上を狙った非大気依存推進(AIP)が登場している。
[編集] 乗組員
第二次大戦時の潜水艦は、居住性が劣悪であった。元々軍艦の居住性は良いとは言えないが、潜水艦は特に酷かった。船内は湿気だらけで洗濯物が乾かせず、艦内は燃料と排気とカビの臭気が充満して嗅覚がおかしくなり、就寝用のスペースが限られたため、寝台は数人で共有、弾薬庫の中で魚雷と一緒に寝ていた乗組員もいた程であった。このような環境で毎日単調な任務が延々と続くため、ブリキ病に掛かる者もいた。
そのためか、他の軍艦と比べて食事だけは恵まれており、食料不足に悩んでいた大戦末期の日本やドイツでも、潜水艦には優先的に食料が配給された。ただし、狭く環境の悪い潜水艦では新鮮な食べ物は出航後数週間で消費され、その後は似たような保存食がずっと出される事になる。
原子力機関の登場後は、居住環境は以前よりも改善された。前述のように大出力の原子力機関は電力に余裕があり、電気分解や海水蒸留を行えるので酸素や真水の確保には困らない。タイフーン級SSBNでは、プールやサウナまである。
しかし、一度出航したら数ヶ月間帰還出来ない原潜クルーは、家族との関係を保つのが困難である。米海軍では、原潜は一回の航海に付き一組は離婚するクルーが出ると言う。パートナーと関係を保つのに最も効果的な方法は性行為だとして、米海軍では妻の下着を持たせて夜のおかずにさせていると言う。
[編集] 水中音響戦
通常の艦艇と異なり、潜水艦は海中で行動する。このため、他の艦艇と戦闘システムは大きく異なっている。空気中と違って、水中では電磁波の減衰が著しいため、電波を用いるレーダーや可視光域・不可視光域での光学的捜索といった手段は使えない。その代わり、主となるのが、海洋中における音波の性質を利用した捜索・攻撃である。その主たる手段がソナーであり、ソナーによる探知と回避をめぐる技術的な蓄積と、それらを用いた対峙を総称して水中音響戦( hydroacoustic battle)と称する。この点について前提となる音波の性質や海中における音波伝播について説明する。
[編集] 音波の性質
ソナーで使われる音波(超音波)は、低周波のものと高周波のものとに大分される。
- 高周波の音波は、水中で減衰しやすいために近距離の目標しか探知できない。しかし、波長が短いため分解能に優れ、直進性が高く指向性が狭い、そのため高い精度での測定が可能になる。
以上の理由により、両者の長短をそれぞれ補うように、高周波ソナーと低周波ソナーを両方装備するのが一般的である。
音波の伝播は、海域の地形・海水の成分・温度・海流などによって複雑に変化する。そのため、日頃から海洋観測によってその海域についてのデータを集めて置くことが、水中音響戦に於ける勝利の鍵を握る事となる。
[編集] 海中での音波伝播
海の中は、単純化すると混合層、水温躍層、深海等温層に分けられる(実際には地形や海流などにより複雑に変化する)。
[編集] 混合層
混合層は海面の表面の付近に位置する海水の層で、風力や太陽熱などによる対流で海水が混ぜ合わされているので、温度が一定である。
通常、混合層から水温躍層へ移行するに従って緩やかに温度が下がっていくので、両者の明確な差は無い。だが、正午頃に海面温度が急上昇するなど、水温が急激に変化する事でレイヤーデプス(LD)と呼ばれる温度境界層が出現する場合があり、この現象はアフタヌーン・エフェクトと呼ばれている。
アフタヌーン・エフェクトによりLDが形成されると、混合層はサーフェイス・ダクト(SD)と呼ばれるダクトになる。SDでは音波が海面とLDでの間で反射を繰り返しながら遠距離まで伝搬していくので、SDにいる敵を、アクティブ・ソナーにより通常よりも遠距離から探知できる場合がある。ただし、LDより下の層(水温躍層)に敵がいる場合、音波がLDで反射されてしまい、音波伝播が複雑になるのでアクティブ・ソナーを利用しての探知が難しくなる。そのため、アフタヌーン・エフェクトが発生した時に潜水艦はLDの下に隠れれば、被探知を防いで敵水上艦に奇襲攻撃をかける事が可能となる。
一方、運が良ければ水上艦はLD下に潜む潜水艦を探知できる距離―ベスト・デプス・レンジ(BDR)を発見できる。 BDRはLDの距離によって変化するので、BDRをいち早く発見するのが水上艦にとって生死を分ける鍵となる。
[編集] 水温躍層
混合層の下側に位置する水温躍層では、この層は深度に比例して水温が下がるので、それにより音波が下向きに曲げられて進む。
下向きに進んだ音波は、浅海ならばその後海底で反射されて海面まで進んで行き、海面で反射されてもう一度海底まで進む・・・という事を繰り返して伝搬して行く。そのため、海底の間に音波が届かないシャドー・ゾーン(不感帯)と呼ばれる部分が形成され、ここはソナーの死角となる。
[編集] 深海等温層
深度1000mを越えた辺りから水温は一定になるので、この層は深海等温層と呼ばれる。水温が一定になる事により、音波は下向きに進まなくなる。逆に、今度は水圧により上向きに曲げられて海面方向へ進んで行く。
これにより、深度3000~5000m以上の深海では、いったん海底方向まで進んだ音波が戻ってきて再び海面に集まるので、何もない海面上で突然ソナーに反応がある現象が起こる。この海域をコンバージェンス・ゾーン(CZ)と呼び、発信源から距離27~33海里毎、幅4~5海里の区画にCZが現れる(海水の成分や温度により変化する)。CZを利用すれば自艦から27~33海里彼方にある敵艦の探知も可能(条件が良ければさらに第二収束帯、第三収束帯・・・つまり81~99海里の彼方まで探知可能)となる。そのため、パッシブ・ソナーにてCZで探知した敵を直ちに攻撃できるように対潜ミサイルが開発された。
また、深度1000m付近の水温躍層と深海等温層との間では、水温と水圧のバランスによりサウンド・チャンネル(SC)と呼ばれる音波伝播層が出現する。SCでは反射による音波の吸収・減衰が無いので、非常に遠くまで音波が伝播して行く。 クジラなどはSCを利用する事で、超音波により何千海里も離れた仲間と連絡を取っている。SCは稀に浅海でも発生する事もあり、詳しい原理は解っていない。
SCを利用すると非常に遠くの敵艦を探知できる可能性があるが、SCまで潜れる潜水艦は旧ソ連のアルファ級を除けば存在しない。しかし、曳航ソナー(TASS)を使えばそこまで潜らなくてもSCを利用する事ができる。また、SCには敵潜水艦の通過を監視するSOSUSなどの固定式海中ソナー監視網が設置されている。
[編集] ソナー
詳細についてはソナーを参照
[編集] 探知方法
ソナーでの探知には、アクティブ式とパッシブ式がある。
アクティブ式は、ソナーから探知音を出して、その音が目標に命中して反射して、跳ね返ってきた音を受信する方式である。しかしこの方式では、探知音を出すことでかなりの電力が消費されるだけでなく、発した音波によって探知が可能な距離よりも遠くまで届いた音波を逆探知され、自らの所在を暴露してしまう危険が伴う。
パッシブ式は、目標が発した騒音をそのまま受信する方式である。ただし、この方式による目標の正確な位置の測定精度はアクティブ式に劣る。また、目標が停止している場合や騒音が非常に小さい場合には探知することができない。
つまり、これら2つの方式には一長一短があり、それぞれの特性を補い合わせるように利用する必要がある。通常は、パッシブ・ソナーで目標の大まかな位置を把握しておいて、魚雷発射管制時など目標の正確な測定が必要な時に最小限の回数だけアクティブ・ソナーを使う。
[編集] ソナーの種類
潜水艦に装備されている主なソナーには、次のようなものがある。ただし各国によって装備方法は異なるので、米海軍式を中心に解説する。
- 艦首ソナー・アレイ
- 潜水艦艦首に装備される大型・大出力のソナー。球形で、表面にハイドロフォン(水中捕音機)を並べている。これにより、特定の補音器のみを使用させる事で指向性を持たせる事が可能(音源の方位が分かる)で、またアクティブモードでは位相配列レーダーと同じ原理で特定の方向にだけ音波を発信できる。
- このソナーは遠距離探知能力に優れ、広大かつ大深度の外洋で行動する潜水艦に適するが、船体前部のかなりの空間を占拠するため、魚雷発射管が船体中央部へと移動させられてしまう。広大な海域で作戦を行う米海軍、海上自衛隊、ロシア海軍の潜水艦には艦首部に大型ソナーを装備するのが一般的であるが、狭い北海での運用が中心の欧州諸国ではこの形式は余り見られない。狭い海域では、遠距離からの探知は必要なく、それより近接格闘戦が重要となるので、魚雷発射管を艦首部に配置する事が重要だからである。
- コンフォーマル・ソナー/フランクアレイ・ソナー
- 船体側面にハイドロフォンを並べて付けたもので、音波の位相(到達時間差)から三角測量を行うことで、目標の方位を探知することができるパッシブモード専用のソナー。測的時間の短縮が期待できる。潜水艦の静粛化が年々進むなかで、センサーの開口径を増大させるために装備される例が増えてきている。
- 潜水艦用曳航ソナー・アレイ(S-TASS)
- 曳航ソナーは、ハイドロフォンを船体から分離した独立ユニットに取り付けて、それを曳航索で牽引するもの。もっぱら低周波帯域のパッシブ探知に用いられる。船体のソナーと合わせると大きな基線長を得られるので、三角測量の精度の向上が期待できる。また、SCなどの船体が潜れない深海部まで吊り下げてそこで使用することもできる。船体の雑音から隔離できるので捜索距離が伸びる。
[編集] 潜水艦の対抗手段
ソナーによる探知に対しては、静粛化対策が施される。戦後の潜水艦の活動においては、以前とは比較にならないほど潜航時間の比率が増した結果、静粛化がいっそう重視されるようになった。これは、一方では敵に探知されるのを防ぐため、他方では自身のソナーによる探知(特に受聴)を妨げないためであり、攻防のいずれにおいても重要である。そこで、設計上の高度な技術的改良から、艦内床面へのゴムシート敷設や乗員のゴム底靴使用などのような単純な工夫まで、ありとあらゆる対策を実施している。
- 防振ラフト機構
- 静粛化の代表的な対策には、ラフト構造の採用がある。ラフト構造は、機関などの騒音源となる機器を船殻に直接設置せずに、浮台(ラフト)の上に搭載し、その付け根部分に吸振ゴムやサスペンションを挟んで船殻に設置する事で、騒音の吸収を狙ったもの。激しい機動時には固定する必要がある。
- 無反響タイル
- アクティブ・ソナーによる探知への対策として採用される。硬質ゴム製のタイルを船体外面に貼り付け、探信音の反響を軽減させることと、船体内部からの騒音の遮蔽が期待できる。今日では一般化した無反響タイルだが、その先駆者が旧ソ連であって、少なくとも1960年代後半には実現させていたことは意外に知られていない。
- 本質的には、大きな騒音源を抱える原子力潜水艦(冷却水循環ポンプ、タービンの減速ギア)のために考案された対策であるが、今日では通常動力潜水艦にまで広く普及してきている。被探知からの回避という点に関しては、通常動力でも核動力でも変わりはなく、むしろ航続性能の点からすれば通常動力潜水艦の方が深刻である。
- 被探知妨害機動
- LD温度境界層(数10mから最大200m程度)下への潜航
- 深深度潜航
- ナックル(急回頭によって強烈な水流を作り擬似目標とする方法。この水流はソナーの探信音も反射する)
- スパイラルターン 急旋回と急速潜航を同時に行い、擬似目標と気泡の放出で敵のアクティブソナーや追尾魚雷を欺瞞する。
- ホバリング(水中停止による魚群、水塊の擬似、海流に乗って海峡を突破するなど)
- 東西方向への逃走(磁力線に触れることを避け磁気探知からの回避)
- 対抗魚雷
- 敵の魚雷を迎撃する魚雷。
[編集] その他雑文
- バラージジャマーに相当するノイズメーカーもあるが、持続が難しいとの事である。チャフに相当する昔からの手段は発泡缶で、泡が作る虚像にアクテイブホーミングさせるものだが、新しい魚雷は反射波のドプラーシフトを分析して航行していた潜水艦が動かない泡になったことで欺瞞を見破って索敵モードに戻ってしまう。それに対してデイセプションジャマーに相当する多機能デコイもあって、魚雷のアクテイブシーカーにドプラーシフトを模擬した偽反射音を遅延して返し、走る虚像を見せるらしい。ところが更に新しいスマート魚雷では長さで潜水艦とデコイを見破るものも出現するに及んで、発音アレーを曳航して潜水艦を模擬するデコイが出たという。最近キロ級にTV併用有線魚雷が搭載されていると聞き(TVは近寄らねば有効ではないが、TVを欺瞞できる音響デコイはない)行き着くところまで行った観がある。
- このような技術開発競争では米露以外の国は完全に置いてきぼりを食っていると思われるが、キロを導入している国はロシアの進んだ魚雷/機雷とデコイを使えるであろう。また中国がフランクアレー無響タイル装備の宋建造を中断し元を作ったのもAIPの問題だけでなくロシア製魚雷/機雷、デコイとのインテグレーションが全国産を目指した宋では駄目だったからかもしれない。日本のカウンターメジャーについてははるしおまで無響タイルもフランクアレーもなかったところから、実際の所、発泡缶と航走音模擬デコイ世代と観る者もいる。
[編集] 兵装
[編集] 魚雷
対艦・対潜戦闘時の潜水艦の主力兵装は魚雷である。潜水艦用魚雷の誘導方式は以下のようなものがある。
- ウェーキ・ホーミング
- 敵水上艦の航行時に発生する波の跡(ウェーキ)を感知して目標を追尾する。水上艦相手にしか使えないが、射程が長い。
- パッシブホーミング
- 魚雷のシーカーで目標の音波を受信して追尾を行う。水上水中両方で使えて、ホーミング時に敵に感知される可能性も低いが、音源を止められると誘導が出来なくなる上、欺瞞に弱い。
- アクティブ・ホーミング
- 魚雷のシーカーから音波を発信し、跳ね返って来た音波を受信して目標の追尾を行う。静止中の敵潜など目標の音源に関わらず誘導できるが、射程が短くなる。また高速移動中の魚雷のシーカーは視野が狭くなるので、ノイズメーカー・デコイや急速潜航等回避機動などの対抗手段を取られると目標をロストし易い。また、発射後のコース変更がきかないので発射照準が完璧でなければ当たらず、発射までに時間がかかる。そのため、長距離で使用する場合は別の方法での中間誘導を必要とする。
- 無誘導魚雷のように魚雷発射管から円錐状・放射状に一斉発射すると、一方の魚雷のアクテイブ探信音を、隣にある他方の魚雷が受信するので、魚雷が吸い寄せられてしまう。そのため、2-5分毎、2本づつしか撃てない。
- セミアクティブ・ホーミング
- 潜水艦のソナーから目標へ向け音波を発信し、跳ね返ってきた音波を魚雷のシーカーが受信して追尾を行う。潜水艦の強力なソナーを使用するので、アクティブ・ホーミングより射程は長いが、自艦の位置が敵に逆探知されてしまう。
- 魚雷シーカーは高速航走のために視野が狭くなるので、デコイを出されて、潜水艦に急角度で方向転換されると失探しやすいが、沈底なりホバリングしている潜水艦のソナーは速度視野狭窄に陥っては居ないし、むしろ回避機動中の標的潜の航走音を捉えているので失探・欺瞞しにくい。
- 有線誘導
- 電線によって、魚雷まで誘導信号を魚雷へ送る事で魚雷を誘導する。魚雷のシーカーが捕らえたデータを潜水艦へ送る事も出来る。射程が最も長く、中間誘導に向いている。電線が切れた場合は、自動的に魚雷のアクティブソナー・シーカーが覚醒する。だが目標に十分接近しない内に魚雷がアクティブホーミングとなった場合、前述のように目標をロストし易く、また音響誘導は欺瞞に弱い。そのため、有線魚雷で撃たれた場合、撃って来た方向へ高速魚雷を発射して、先制攻撃してきた相手を誘導線切断・回避機動に追い込むのはよく行われるという。
以上のようなものがあり、中間誘導・終末誘導などに状況に応じて使い分けられる。
セミアクティブホーミング及び有線誘導の場合、航走途中でコースや速度を変更できる。照準も回頭もすまないうちに即発射して敵潜の方向に魚雷を指向して低速静音航走開始させたあと、ソナーにより敵潜への距離、深度、ベクトルなど計測してコースを発射後に修正出来る。
[編集] 対艦ミサイル
遠距離の敵艦を攻撃出来るが、発射時に自分の位置が暴露するので余り使用されない。
[編集] 対潜ミサイル
パッシブソナーで、CZ第一収束帯で補足した敵潜水艦を攻撃するために装備するようになった。目標へ正確に誘導するのが難しいので、核弾頭を装備するのが普通だった。やがて、潜水艦の静粛化や時代の流れで核兵器の使用が難しくなると装備されなくなった。
[編集] 対空ミサイル
なお、航空機に対しては下手に戦うより潜航して身を隠したほうが安全なため、普通は対空攻撃用の兵装は装備していないことが多い。ただし一部にはヘリコプターなど低速の航空機に対処するために携行式の対空ミサイルを搭載した潜水艦も存在する。
[編集] 無人潜航艇(UUV)
魚雷発射管から射出・回収され、自律制御により海中を航行する潜水ロボット。海底地形の調査や機雷捜索・処理などに使用される。
古くから潜水艦にとって機雷は重大な脅威の一つであった。海中では目視によって確認する事が出来ず、また潜水艦本体アクティブソナーでの探知では機雷を発見した時に回避できるだけの余裕があるとは限らない。そのため、母艦に先行して機雷を捜索・除去が可能なUUVは現代の、特に機雷が敷設されやすい浅瀬で行動する潜水艦の必須装備となった。
米海軍が開発を計画中の攻撃型無人潜航艇(UUCV)「MANTA」は、対潜戦闘も可能であり、潜水艦の行動時に危険が大きい浅瀬で大きな効果を発揮すると見られている。米海軍は2050年頃の実用化を計画している。
[編集] 射撃管制装置
魚雷はミサイルより遅いので、照準不備だと魚雷の音響シーカーの探知範囲外に逃げられてしまう。方位だけでなく距離と深度と目標の進行方向と進行速度の評定が重要である。
射撃管制には複雑な計算を必要とし、複数のソナーを使いこなす為に高度な電算機やデーターベースを必要とする。射撃指揮装置のソフトは実戦データーが有用なので米露両国が優れていると言われている。ロシアは自国のディーゼル潜の火器管制装置を割りと鷹揚に共産圏諸国に輸出しているが、米国はディーゼル潜を作っていないので西側諸国は火器管制装置を自製している。
[編集] 通信
海中深くを潜行する潜水艦は、陸上の兵器のように通常の電波による通信が困難である。そのため、超長波や音波なども利用した特殊な形態となっている。 潜水艦の通信手段には、次のようなものがある。それぞれ一長一短があり、状況によって使い分けられる。
[編集] ULF(極超長波)による通信
ULFは海中深くまで到達するので、潜水艦は最大潜行深度付近で受信可能である。ただし、送信できるデータ量が非常に少ないので、大量の情報受信には向かない。また、ULFは送信するために、全長数十kmに渡る長大なアンテナ施設が必要で、有事の際にはこれらの施設が破壊される危険性がある。
[編集] VLF(超長波)による通信
VLFは海中深度10m程度まで到達するので、深度数メートル程度を潜行すれば受信可能である。実際はそこまで浅く潜ると発見される可能性が高まるが、曳航ブイまたはフローティング・アンテナを使用すれば、潜水艦本体は深深度で受信が可能となる。しかし、送信できる情報量が少ないので、大量の情報通信には向かない。
送信するには巨大な地上アンテナ施設を使うか、E-6マーキュリーなどのTACAMO機(空中通信中継機)から長いアンテナを吊るす必要がある。また潜水艦からVLFを送信する事は出来ず、情報は一方通行となってしまう。
[編集] マイクロ波による通信
通信衛星からのマイクロ波送信で通信を行う。マイクロ波は海中まで到達しないので、受信時に潜水艦は通信アンテナを海面上に露出させる必要があり、敵に探知される可能性が高まる。しかし、マイクロ波は大量の情報の送信が可能で、また潜水艦から衛星にマイクロ波を送信する事も可能となる。
[編集] 水中音響通信
海中の要所に音波を利用した通信装置を設置し、それを海底ケーブルで地上施設と結ぶ事で、潜水艦との通信を行う。冷戦時には、アメリカ及びソ連海軍が音響通信装置を多数敷設した。
[編集] 対潜作戦(ASW:Anti-submarine warfare)
[編集] 第一次世界大戦期
潜水艦が本格的に実戦投入されたのは第一次世界大戦からである。島国であるイギリス帝国は資源・食料の多くを海外の植民地からの輸入に頼っていた。そのため、通商破壊による英国打倒を狙いドイツ海軍は仮装巡洋艦とともにUボートを大量投入して無制限潜水艦作戦を開始した。
一方、これに対しイギリス海軍も全力で対抗し、大西洋の戦いが幕を開けた。
当時の水上艦には潜水艦に対抗する手段は爆雷位であったが、当時の原始的な爆雷ではUボート撃沈は困難であった。水上艦の対抗手段と言えば、Uボートの浮上時に体当たりか砲撃を加えるのが普通だった。商船の被害が増大して行く中、イギリスが生み出した対抗手段の一つがQシップと呼ばれる武装商船であった。
このQシップを、Uボートの行動が確認された海域へ向け単独航行させる。当時、Uボートに搭載されていた魚雷は貴重品であり、簡単に使える物ではなかった。そのため、護衛無しの単独航行中の商船の場合は、浮上して砲撃で攻撃していた。Qシップは無防備な商船を装い、安心したUボートが攻撃しようと浮上した所を、突然攻撃してこれを撃沈した。
この他に、ASDIC(ソナー)を開発し、Uボートの位置を探知しようと試みた。しかし信頼性の低かった当時のソナーでは、捕捉率は一割に満たなかった。 また、護送船団方式が取られるようになった。船を集団行動させて護衛艦を付ければ、単独行動時よりも輸送効率は悪くなるが、一隻当たりの被発見率を低下させる事が出来る。この方式により、それまで一回の航行に付き10%程度だった貨客船の被撃沈率は1%程度にまで低下した。
この他にも、Uボート基地への機雷敷設などあらゆる対抗策が実施されたが、最終的に連合軍は1600隻余りの貨客船を失い、世界は「灰色狼」と呼ばれたUボートの恐ろしさを知る事となった。
[編集] 第二次世界大戦期
先の大戦で手痛い被害にあったイギリスだったが、その後は国内の軍縮ムードや財政難の影響で、余り対潜技術は進展しなかった。
第二次大戦では、Uボートは群狼戦術により船団攻撃を始めた。これは、Uボートを3~20隻程度の集団で作戦海域に展開させておく。その内の一隻が敵船団を発見すると、すぐには攻撃を掛けず僚艦に位置情報を連絡し、船団の追尾を続ける。そして夜間になると全艦で一斉波状攻撃をかける戦術で、大きな効果を上げた。潜水艦隊は全て本国司令部のカール・デーニッツの指揮で動いていた。米海軍も日本への通商破壊戦で採用した。
一方、連合軍はこれに対抗すべく、数々の新戦術・新兵器を投入した。
- ソナーの改良
- 曳航ノイズメーカー
- Uボートの誘導魚雷の命中率を低下させる事に成功。
- 対潜哨戒機
- PBY カタリナ、B-24リベレーター、ショート・サンダーランドと言った長距離哨戒機や飛行船などでの哨戒。水上艦での哨戒に比べ、航空機での哨戒は安全で効果が高かった。
- 護衛空母
- 船団に護衛空母を伴随させる事で、より船団に密着した航空対潜哨戒が可能。
- レーダー
- Uボートの浮上航行を大幅に制限する事に成功した。
- 電波探知機
- Uボートが通信で使う電波を逆探知して位置を割り出した。位置が分かると護衛艦がそこに急行してUボートを攻撃した。
- ヘッジホッグ
- 爆雷と比べ深度を設定する必要が無く、命中しなかった場合はそのまま沈底するのでソナーに影響が少ない。
- 対潜魚雷
- パッシブ・ホーミング式の誘導魚雷Mk.24などの投入により、敵潜水艦へのより効果的な攻撃が可能となった。
第二次大戦での大西洋の戦いでは、最終的に連合軍は3500隻余りの商船を、ドイツ海軍は700隻余りのUボートを失った。
[編集] 現代の対潜作戦
第二次大戦後、大幅に性能が向上した現代の潜水艦は、水上艦艇にとって一大脅威である。神出鬼没の潜水艦は位置の捕捉が困難で、原潜などは速力が水上艦艇より速いので、水上艦では潜水艦に対抗するのは分が悪い。対潜水艦作戦(ASW)には、優秀な機器を必要とし、また海洋調査によりその海域のデータを集めておく必要がある。
米海軍は、全世界・全海洋の磁気、海流、海水温を調査しつづけている。なお、アメリカ海軍が調査した大洋底の地磁気のデータからプレートテクトニクスの証拠が得られた。
潜水艦には航空機からの探知が有効なので、ASWでは対潜哨戒機、哨戒ヘリコプター、艦船では音響測定艦などが主役となる。また、潜水艦を捕捉するには同じ潜水艦が有利なので、ハンターキラー(SSK)も重要となる。
ASWで使用される兵器
- ディッピングソナー
- 哨戒ヘリコプターなどから吊り下げて使用するソナー。LDの下に潜む潜水艦を探知するのに役立つ。探知距離は短いが、潜水艦より遥かに優速であるヘリコプターで使えば問題無い。使用後は回収出来るので、対潜哨戒機から投下される使い捨て式のソノブイ・ソナーよりもコストが安くなる。
- 赤外線探査装置
- 潜水艦は熱源を持っており、上空からの熱源探査により、局部的な赤外線異常が見つかればそこに潜水艦が存在する可能性が疑われる。そこで、赤外線探知機によって潜水艦を探知出来る。一般に、大型の潜水艦の方が探知される可能性が高いとされる。ただし、実際には潜水艦を熱源探知する場合、潜水艦本体の熱源ではなく、潜水艦が浅深度航走をする際に海面に生じる航跡を熱源探知している。また、原子力潜水艦は原子炉の二次冷却水を排出するため、通常動力潜水艦と比べて、特に赤外線探査に脆弱であるとされている。
- 磁気探知装置(MAD:Magnetic Anomaly Detector)
- 潜水艦のように巨大な強磁性体の塊が海中に存在すると、地球の磁力線が潜水艦を中心に集束するため、磁力線の乱れが生じる。そのため、特定海域の通常の地磁気の状態を把握しておき、磁気異常が見られればそこに潜水艦が存在する可能性が疑われる。航空機からの磁気探知はディーゼル潜水艦で水深500mまで、原子力潜水艦で水深800mが限界であるといわれている。
[編集] 歴史
[編集] 黎明期
乗り物や器に入って潜水することも潜水船のひとつと含めるならば、潜水船の歴史はかなり古い(伝説としても、透明な部屋でのアレキサンダーの海底訪問など有名なものがある)。だが、自己の能力で移動や潜水操作ができることを条件とするなら、一般に存在が確認されていて一番古いものとされているものは、1620年にイギリスで作られた12人乗りで手漕ぎ式の木製潜水艦である(コルネリウス・ドレベルの項も参照)。
[編集] 最初の戦果
アメリカの南北戦争中、南部のアラバマ州モービルで建造された9人乗りの人力推進潜水艇ハンリー (H.L.Hunley) は、1864年サウスカロライナ州チャールストン港外で同港を封鎖中の北軍木造蒸気帆船フーサトニックを外装水雷によって攻撃、撃沈した。これが戦争中に潜水艦(潜水艇)が敵船を沈めた最初の例である。ハンリーは攻撃から帰還せず、1995年に港外の海底に発見され、2000年に引き揚げられて保存・展示されている。艦名は建造出資者の一人ハンリー (H.L.Hunley) にちなんで命名されたが、当人は艇長として訓練中に本艦2度目の沈没事故で死亡した。上記攻撃は引き上げ修理後に実施された。
なお、当時は潜水艇やデイヴィッド型半潜水艇は敵味方双方からアンフェアで悪魔的 (infernal) な兵器と見なされており、チャールストンを封鎖中の北軍装甲艦ニューアイアンサイズの艦長は、同艦を暗夜襲撃して損傷させ、捕虜になったデイヴィッドの艇長を「文明国で認められていない兵器を用いた罪で」ニューヨークで裁判にかけて絞首刑にすると脅した。
[編集] 近代潜水艦第1号ホランド
実用的な潜水艦の第1号は、1900年にアメリカで完成したホランドHolland SS-1(水中排水量74t)であると言われている。この艦はガソリンエンジンと直流モーターを同一軸でつなぎ、水上ではガソリンエンジンで走りながら同時にモーターを発電機としてバッテリーの充電を行い、潜航時はバッテリーでモーターを駆動させるという方式を確立した。ホランド型は1904年から1905年の日露戦争中に日本、ロシア両国にも輸出されたが、偶然両者ともキングストン弁が間違って納入されるというアクシデントにより戦争中には戦力化ができなかった。
[編集] 潜水艦を扱った作品
[編集] 文献
- 第二次世界大戦
- 吉村昭(著)、『深海の使者』、文芸春秋、1986年、ISBN 4-16-716901-0
- 橋本以行(著)、『伊58潜帰投せり』、学習研究社、2001年、ISBN 4-05-901028-6
- 板倉光馬(著)、『どん亀艦長青春記』、光人社、1995年、ISBN 4-7698-2075-5
- カール・デーニッツ(著)、山中静三(訳)、『10年と20日間―デーニッツ回想録』、光和堂、1986年、ISBN 4-87538-073-9
- 福井晴敏(著)、(小説)、『終戦のローレライ』
- 池上司(著)、(小説)、『雷撃震度十九・五』、新潮社、1996年、ISBN 4-10-412701-9
- 第二次世界大戦後
- トム・クランシー(著)、(小説)、『レッド・オクトーバーを追え!(原題:The hunt for RED OCTOBER)』
- 荒巻義雄(著)、(戦記シミュレーション小説)、『紺碧の艦隊』
- 押川春浪(著)、(SF小説)、『海底軍艦』
- 潜水艦事故
- アレクザンダー・フラートン(著)、佐波誠(訳)、英海軍潜水艦シーティスの事故を題材した小説、『潜水艦いまだ帰投せず』、早川書房、1996年、ISBN 4-15-040821-1
- Edwyn Gray(著)、1939年6月1日の英海軍潜水艦シーティスの事故を題材したノンフィクション、巻末に1774年-1985年の潜水艦事故の一覧表がある、Few Survived ; A History of Submarine Disasters, ロンドン Leo Cooper, 1996, ISBN 0-85052-499-7
- ピーター・マース(著)、江畑謙介(訳)、1939年5月23日の米海軍潜水艦スコーラスの事故を題材したノンフィクション、『海底からの生還;史上最大の潜水艦救出作戦』、光文社、2001年、ISBN 4-334-96112-6
- 西村拓也(著)、『ドキュメント「原潜爆沈」;「クルスク」の10日間』、小学館、2000年、ISBN 4-09-404612-7
- ピーター ハクソーゼン, R.アラン ホワイト, イーゴリ クルジン(著)、三宅真理(訳)、旧ソ連SSBN K-219の沈没事故を描いたノンフィクション小説、『敵対水域』、文藝春秋、1998年、ISBN 4-16-353740-6
[編集] 漫画
[編集] 映画
- 第二次世界大戦中の潜水艦を題材とした作品
- 海の牙(1946年、監督:ルネ・クレマン)
- 眼下の敵(1957年、監督:ディック・パウエル)
- 深く静かに潜航せよ(1958年、監督:ロバート・ワイズ)
- 潜水艦イ-57降伏せず(1959年、監督:松林宗恵)
- Uボート(1981年、監督:ウォルフガング・ペーターゼン)
- ザ・ラストUボート(1993年、監督:フランク・バイヤー )敗戦直前ドイツを出航して日本にウラニウムとジェット・エンジン技術者を送り届ける使命を持った独潜水艦の運命
- U-571(2000年、監督:ジョナサン・モストウ)
- ビロウ(原題:BELOW/2002年 監督:デヴィッド・トゥーヒー) ……潜水艦映画にオカルト的要素を加味した作品。
- ローレライ(2005年、監督:樋口真嗣)
- 出口のない海(2006年、監督:佐々部清)
- 第二次世界大戦後の潜水艦を題材とした作品
- レッド・オクトーバーを追え!(1990年、監督:ジョン・マクティアナン)
- クリムゾン・タイド(1995年、監督:トニー・スコット)
- K-19(2002年、監督:キャスリン・ビグロー) ……実在のソ連原潜K-19のエピソードに基づく
- 地球の危機(原題:Voyage to the Bottom of the Sea 1961年、監督:アーウィン・アレン)
[編集] 架空の潜水艦(潜水艇)
- イエローサブマリン
- サンダーバード4号
- トゥアハー・デ・ダナン(フルメタル・パニック!)
- ノーチラス号(小説、米海軍、アニメーション)
- ミサイルつき原子力潜水艦(ドラえもん)
- シンファクシ級潜水空母
- シービュー号
- ユーコン(『機動戦士ガンダム』)
- マッドアングラー(『機動戦士ガンダム』)
- 特潜伊601 富嶽号(『紺碧の艦隊』『新・紺碧の艦隊』)
- 潜伊3001 亀天号(『紺碧の艦隊』『旭日の艦隊』『新・紺碧の艦隊』)
- 超潜伊10001 須佐之男号(『紺碧の艦隊』『新・紺碧の艦隊』)
- 新日本武尊(『新・旭日の艦隊』)
- ユリシーズ(TVアニメ『タイドライン・ブルー』)
- ルーパー(TVアニメ『タイドライン・ブルー』)
- 漢(ハン)(TVアニメ『タイドライン・ブルー』)
- なるしお(TVアニメ『タイドライン・ブルー』)
- 轟天号(1963/映画『海底軍艦』)
- スカイダイバー(TVドラマ『謎の円盤UFO』)
- スティングレイ(TVドラマ『海底大戦争』)
- ハイドランジャー(TV『ウルトラセブン』)
- マイティ号(TV『マイティジャック』)
- 伊507(小説『終戦のローレライ』、映画『ローレライ』)