治験

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治験(ちけん)とは、薬事法第2条第15項の定義からすれば「医薬品医療機器等の製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けるために申請時に添付すべき資料のうち、臨床試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実施」というのが本来の意味である。しかし、実際には「医薬品もしくは医療機器の製造販売承認を得るために行われる臨床試験」自体を指す言葉として用いられており、ここでもこの意味で解説する。 従来、承認を取得することが目的であったため企業主導で行われてきたが、薬事法が改正され必ずしも企業の開発プロセスに乗る必要はなく医師主導でも実施可能となった。

動物を対象とした前臨床試験(非臨床試験)により薬の候補物質もしくは医療機器の安全性および有効性を検討し、安全で有効な医薬品もしくは医療機器となりうることが期待される場合に行われる。

ここでは、医薬品の治験について詳述する。

目次

[編集] 治験の流れ

治験は第I相から第IV相までの4段階で行われることが多い。ただし、第III相試験に多大な時間のかかる抗がん剤に関しては、第II相までの結果をもとに第III相の試験実施計画も併せて承認申請を行うことがある。

[編集] 第I相(フェーズ I)

自由意思に基づき志願した健常成人を対象とし、被験薬を少量から段階的に増量し、被験薬の薬物動態(吸収、分布、代謝排泄)や安全性(有害事象、副作用)について検討することを主な目的とした探索的試験である。動物実験の結果をうけてヒトに適用する最初のステップであり、安全性を検討する上で重要なプロセスであるが、抗がん剤などの副作用が強いと予想されるものは倫理的な観点から健常人での試験を行わないことがある。また、抗がん剤の試験の場合は、次相で用いる用法・用量を検討することも重要な目的となる。

[編集] 第II相(フェーズ II)

第II相試験は第I相の結果をうけて、比較的軽度な少数例の患者を対象に、有効性・安全性・薬物動態などの検討を行う試験である。多くは、次相の試験で用いる用法・用量を検討するのが主な目的であるが、有効性・安全性を確認しながら徐々に投与量を増量させたり、プラセボ群を含む3群以上の用量群を設定して用量反応性を検討したり、その試験の目的に応じて様々な試験デザインが採用される。探索・検証の両方の目的を併せ持つことが少なくないため、探索的な前期第II相と検証的な後期第II相に分割することもある。その他にも、第I/II相として第I相と連続した試験デザインや、第II/III相として第III相に続けて移行する試験デザインもある。また、毒性の強い抗がん剤に関しては、この第II相で腫瘍縮小効果などの短期間に評価可能な指標を用いて有効性を検証し、承認申請を行うことがある。

[編集] 第III相(フェーズ III)

上市後に実際にその化合物を使用するであろう患者を対象に、有効性の検証や安全性の検討を主な目的として、より大きな規模で行われるのが第III相である。それまでに検討された有効性を証明するのが主な目的であるため、ランダム化や盲検化などの試験デザインが採用されることがほとんどである。数百例以上の規模になることもあるため、多施設共同で行う場合が多い。抗がん剤の場合は、製造販売後に実施されることが多い。

[編集] 製造販売承認申請

第I相から第III相までの試験成績をまとめ、医薬品の製造販売承認申請が行われる。規制当局(医薬品医療機器総合機構)による審査を受けて承認されると医薬品としての販売が可能となる。

[編集] 第IV相(フェーズ IV)

製造販売後臨床試験と呼ばれ、実際に市販した後に広く使用されることにより、第III相まででは検出できなかった予期せぬ有害事象や副作用を検出するのが主な目的である。市販直後調査及び市販後調査によって行われるのが通例である。

[編集] インフォームド・コンセント

治験への参加に先立ち、実施される試験の目的や内容、ほかの治療法などについて詳しく説明し、本人の自由意思により治験に参加するかどうかを決める。(詳細は「インフォームド・コンセント」参照)

[編集] 二重盲検試験

治験では、被験薬の効果を検討するために、実際には効果のない物質(偽薬、プラセボ)やすでに効果が確認され市販されている薬剤(実薬対照)との比較が行われるが、被験者が何を投与されたかがわかることでその効力が変化してしまうことがある。これを防ぐために、被験者には何を投与したかがわからないようにすることを盲検試験と呼ぶ。しかし、投与する医療機関のスタッフが何を投与しているか知っているとそれが態度に表れてしまう場合があり、あるいは有害事象等の評価に際して先入観が入り込んでしまうことがある。これを防ぐため、投与する医師にも投与しているのが被験薬であるのか対照薬であるのかわからなくするのが二重盲検試験(ダブルブラインド)である。この場合、治験薬(プラセボ、実薬対照、被験薬を含む治験で用いられる物質の総称)はコードで管理され、治験実施者から独立した割付責任者が割付コードを保管し、データ固定後に割付情報を開示(キーオープン)する。

[編集] 関連する規制

[編集] GCP

  • 厚生省令第28号 「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(平成9年3月27日)
  • 厚生労働省令第106号 「医薬品の臨床試験の実施に関する省令の一部を改正する省令」(平成15年6月12日)
  • 中央薬事審議会答申 「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)の内容」(平成9年3月13日)


[編集] 問題点

医薬品が高度化するに従い、国内だけでなく、海外でも通用するような医薬品の開発が通例となってきた。 そのため国内外での治験実施が同時に行われるようになると、国内治験における手続きの煩雑さ、費用の高騰、医師の治験へのモチベーション低下などがあいまって、国内での治験空洞化が進行してきている。厚生労働省も空洞を懸念し、対策を打ち出してきてはいるが、有効な対策とはなっていない。

[編集] 被験者に対するメリットとデメリット

被験者に対しては、時間と生活習慣に対して制約が課される場合が多い。医薬品はもちろん、健康食品や場合によっては特定の食品に対する制限、運動の禁止などが、規定されることが多い。また、定期的に採血や検査を受けなければならず、拘束時間が多いこともデメリットであると言える。

特にフェーズIでは、その対象が健常成人であるため、これらの制約を嫌ったり拘束時間が採りにくい場合が多い。また、ヒトに対して初めて被験薬を用いる試験であるため安全性が必ずしも保証されていない、といった理由からも被験者が集まりにくいのが実状である。フェーズIでは、「謝礼」として被験者に金品を渡す事が多い。こうした謝礼等については、何ら法的に問題は無い。その謝礼を目当てに アルバイト気分で参加する被験者も多い。しかし、一度治験に参加した後は、安全性や次の治験への影響についての配慮から数ヶ月の期間をおかなければ次の治験に参加できない事、種々の制約が多い事、応募しても選択基準や除外基準に抵触し必ずしも参加できるとは限らない事などから、アルバイトとしては割に合わないと考えるべきである。なかには、治験を「アルバイト」として紹介料を要求する業者も存在しており、注意が必要である。ただし、治験に参加する事により 非常に健康的な生活習慣が身に付く事は、貴重なメリットと云える。また、人間ドックに準じる 高度な健康診断が無料で受けられると云えるかもしれない。しかし、治験に伴う有害事象や副作用といったリスクの可能性は否定されるものではない。

フェーズII以降の患者を対象とする治験では、劇的な効果が見られる可能性をもった被験薬を投与されること自体が大きなメリットとも言えるが、対照薬にあたる可能性もあるため「治験に参加する」=「新薬を投与される」ということではない。近年では、被験者を優先的に診察したり、医師とは別に治験コーディネーターがカウンセリングにあたったり、といった配慮を行っている医療機関もある。

いずれにせよ、治験への参加は、参加者の自由意思に基づいて行われなければならない。このため、インフォームド・コンセントが、きわめて重要な手順である。GCPでは、同意取得の際に用いる同意説明文書中に、治験参加のメリット・デメリット、当該治験に参加することで受ける制約、動物実験や類似の医薬品で知られている副作用等について明示するよう定めている。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

厚生労働省 「治験」ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/chiken/index.html

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