母音調和

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母音調和(ぼいんちょうわ)とは、一語の中に現れる母音の組み合わせに一定の制限が生じる現象のこと。

アルタイ諸語満州語などのツングース諸語モンゴル語などのモンゴル諸語トルコ語などのテュルク諸語)、フィンランド語ハンガリー語などのフィン・ウゴル諸語を含む「ウラル語族」のほか、アフリカアメリカの言語にも見られる。

母音調和現象を持つ言語には、その言語の中で使われる母音にグループがあり、ある単語の語幹に付く接辞の母音が、語幹の母音と同一グループの母音から選択される。母音のグループは、口を大きくあけて発音するかすぼめて発音するか(広い・狭い)、発音するときに舌が口の前に来るか後ろのほうに来るか(前舌・後舌)などの特徴によって区分されている。

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フィンランド語
前舌母音/ä/, /ö/, /y/
後舌母音/u/, /o/, /a/
中舌母音/i/, /e/
  • フィンランド語では、前舌母音と後舌母音はそれぞれ一語中で共存できないが、中舌母音はどちらとも共存できる。
モンゴル語
女性母音э(/e/), ө(/ö/), ү(/ü/)
男性母音а(/a/), о(/o/), у(/u/)
中性母音и(/i/)
  • モンゴル語では女性母音と男性母音はそれぞれ一語中で共存できないが、中性母音はどちらとも共存できる。
トルコ語
 非円唇円唇
 
前舌母音 e i ö ü
後舌母音 a ı o u
  • トルコ語ではまず前舌母音と後舌母音の2グループに分かれ、それぞれが非円唇、円唇のペアに分かれる。
  • 日本語の前舌、後舌母音のことをトルコ語では「細い母音(ince ünlü)」「太い母音(kalın ünlü)」という。前舌母音と後舌母音はそれぞれ一語中で共存せず(但し外来語では共存する)、広い母音と狭い母音がそれぞれ整然とした対応関係を持つ。

[編集] 日本語における母音調和

万葉仮名の研究によって明らかにされた上代日本語の母音の法則も母音調和の一種とする説がある。すなわち、

  • 万葉仮名は使用者によって同一の音でも異なった漢字を当てているが、同一の使用者の書いたものの中の当て字の使用法は一貫している。
  • 同一の使用者の使ったイ段とエ段の字は二種類ずつあり、上代の日本語には、現在の日本語の"i"と"e"にあたる母音にそれぞれ二種類の異なる発音があったことが推察される(仮に"i1"、"i2"、"e1"、"e2"とする)。
  • しかるに"i"と"e"の両方の母音を含む個々の単語について、"i1"、"i2"および"e1"、"e2"のどちらが使われているかを調べると、その組み合わせに普遍的規則があるよう思える。

ことをもって、上代の日本語には母音調和またはその痕跡があったとするものである。

また、現代日本語でも、本来語と考えられる身体の部位を表す言葉、例えば「みみ」(耳)、「あたま」(頭)、「ほほ」(頬)、「からだ」(身体)、「ひじ」(肘)、「ちち」(乳)などは同じ母音の連続が顕著に見られ、これをもって日本語が原始的な母音調和の痕跡をとどめているともいわれる。日本語をアルタイ語族に含める説の有力な根拠であるとされるが、これらが実際に母音調和であったかどうかは証明されていない。

なお、英語版ウィキペディアに紹介されている例では、例えば「船橋」(ふね・はし)が「ふなばし」になったのは、「ふね」の「ね」(エ段)が「はし」の「は」(ア段)に引きずられた結果「な」(ア段)になったものであり、母音調和の一種であるとされているが、これは誤りである。なぜなら、船橋(ふね+はし→ふナばし)は、「舟盛り(ふね+もり→ふナもり)」「金槌(かね+つち→かナづち)」などと同じで、直後の母音に引きずられているわけではないからである。

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