楽器分類学
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楽器分類学(がっきぶんるいがく)は、楽器学の一分野で、楽器を体系的に分類するための学問である。 比較音楽学の一部である比較楽器学を基礎とする。現在は、ザックス=ホルンボステル分類をもとに、体鳴楽器、膜鳴楽器、弦鳴楽器、気鳴楽器、電気楽器の5つに分類する場合が多い。同じ意味で「楽器分類法」が用いられることもあるが、これは全ての楽器の網羅を目指さず学問的考察によらない比較的単純な分類を意味する場合も多い。
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[編集] 概要
西洋音楽(オーケストラ)では、楽器を弦楽器、管楽器、打楽器に分け、さらに管楽器を木管楽器と金管楽器に分類することが行われる。しかし、この分類法ではたとえばオルゴールを何に分類するかが問題となるし、また西洋音楽以外の楽器に対して十分機能するとはいえない。
19世紀後半のヨーロッパにおいて、東洋やアフリカなど西洋以外の楽器が収集されるようになり、楽器博物館が設立されてその分類目録を整備する必要に迫られた。そこで、世界各地の民族楽器を比較・検討する比較楽器学をもとに、科学的な分類を行う楽器分類学が成立した。現在までに統一した分類基準は存在しないが、「ザックス=ホルンボステル分類」が広く知られており、実際の博物館等での分類においてはこれを改変したものが用いられることが多い。ザックス=ホルンボステル分類を略すときにはホルンボステルを先にして「HS分類」という。
[編集] 歴史
楽器を分類することは古くから地域ごとにおこなわれてきた。
中国では楽器をその素材によって、金、石、糸、竹、匏、土、革、木の8種に分類し八音と呼んだ。日本の雅楽でも同様の分類が行われた。
インドでは、世界最古の舞踊・音楽の教典「ナーティヤ・シャーストラ」(2~5世紀)で弦楽器、気楽器の2種に分けた。仏教では、片皮、両皮、前皮、打、気の5種音楽(弦なし)に分類し、ジャイナ教では皮楽器、弦楽器、金属打楽器、気楽器の4種に分類した。13世紀の舞踊理論書「サンギータ・ラトナーカラ」第6巻で弦楽器、管楽器(または気楽器)、皮製打楽器、金属製打楽器に分け、インドの4分類法が確立した。
アラビアでは哲学者・音楽学者アル・ファーラービー(897?-950)が「打奏し、弾奏し、摩奏する固体の楽器」と「吹奏される空気を満たした楽器」の2つに分類した。
ヨーロッパでは、16世紀のヴィルドゥングが管楽器、弦楽器、打楽器の3分類法を行い、これが一般には現在まで用いられている。1888年、ブリュッセル楽器博物館の館長であったマイヨンは、自鳴楽器、膜鳴楽器、気鳴楽器、弦鳴楽器の4種をさらに形態と奏法によって分類する体系を作成し、多くの非西洋楽器を含む世界の楽器の分類を行った。これは、インドの4分類法にヒントを得たと考えられている。
これを1914年にドイツのホルンボステルとザックスが拡張したものが「ザックス=ホルンボステル分類」である。これは、マイヨンが自鳴楽器としていたものを体鳴楽器とし、全体を300あまりの項目に細分化したものである。その後、ザックスはこの分類に電気楽器を追加している。ザックス=ホルンボステル分類を改定したものや、さらに細分化したものとして、ハンス・ドレーガーによるものや、ノルリントによるものがある。
一方、フランスのアンドレ・シェフネルはアラビアに起源を持つ2分類法を1936年に提案した。その概要は、次の通りである。
- 可動固形楽器
- 圧力に感じない固体(木、金、石、骨、貝殻、角)
- 曲がりやすい固体(金、木、骨)
- 緊張可能なやわらかい固体(弦、革)
- 可動気鳴楽器
- 周囲の空気を動かすもの
- 自由な穴
- 吹奏楽器
[編集] ザックス=ホルンボステル分類
ザックス=ホルンボステル分類は、発音原理を上位分類要素として、体鳴楽器、膜鳴楽器、弦鳴楽器、気鳴楽器、電気楽器の5つに分けたうえで、さらに楽器の形状を下位分類要素として体系化したものである。以下は、大分類項目に対する簡単な説明と細分類項目およびそれに該当する代表的な楽器である。
[編集] 体鳴楽器
弦やドラムの皮など張ったりするような張力を必要としない発音物質からできているもの。音を出す方法として、「同じ形状の一対を打ち合わせるもの(相互打奏)」、「音源となるものをバチやそれに類するもので打ち鳴らすもの(単打奏)」、「振り鳴らすもの(振奏)」、「こすり付けて鳴らすもの(掻擦奏)」、「はじいて鳴らすもの(摘奏)」、「摩擦して鳴らすもの(擦奏)」がある。ここで「こすり付ける(掻擦奏)」とは棒などで刻み目のついた面をこすることによりカタカタ上下運動させることであり、「摩擦する(擦奏)」とはぴったりと粘着した状態で動かすことにより音を出すことである。
- 打奏体鳴楽器
- 直接打奏体鳴楽器
- 相互打奏体鳴楽器(クラッパー)
- 単打奏体鳴楽器(棒などで打ち鳴らす)
- 単式単打奏棒 : トライアングル
- 複式単打奏棒 : シロフォン、グロッケンシュピール
- 単打奏板
- 単式単打奏板 : 木鐸、魚板
- 複式単打奏板 : チェレスタ
- 単打奏管
- 単式単打奏管 : チューブラーベル
- 複式単打奏管
- 単打奏容器
- 間接打奏体鳴楽器
- 摘奏体鳴楽器
- 枠型摘奏体鳴楽器
- クリクリ(堅果の外殻を共鳴体とし薄片を直接そこから切り出したもの)
- 口琴(ジューズ・ハープ)
- 切出舌式口琴
- 取付舌式口琴
- 単式取付舌式口琴
- 複式取付舌式口琴
- 板型または櫛型摘奏体鳴楽器
- 巻糸舌式 : サンザ
- 共鳴器無
- 共鳴器付
- 切出舌式 : オルゴール
- 巻糸舌式 : サンザ
- 擦奏体鳴楽器
- 吹奏体鳴楽器
- 吹奏棒
- 単式吹奏棒
- 複式吹奏棒
- 吹奏板
- 単式吹奏板
- 複式吹奏板
[編集] 膜鳴楽器
開口に張った膜によって音を出すもの。膜を張る物体の形状には大きく分けて、「筒型」、「容器型」、「枠型」がある。筒型の楽器においては、胴の長さが膜面の直径よりも長い場合を「深い型」、胴が膜面の直径よりも短い場合を「浅い型」という。また、胴部分の形状によって、筒がまっすぐなものを「円筒型」、筒がふくらんでいるものを「樽型」、筒が一端に行くに従って細くなるものを「円錐型」、カップ型の筒を2つ逆向きに合わせた型のものを「砂時計型」という。容器型では、膜を張る上端部分が最大の直径である場合には「半球型」であり、上端よりやや低い部分が最大の直径である場合は「卵型」という。
- 打奏太鼓
- 直接打奏太鼓
- 振奏太鼓(間接打奏太鼓。小物体を吊るしまたは封入して振奏するもの)
- 鍋型胴太鼓
- 単式鍋型胴太鼓
- 複式鍋型胴太鼓
- 筒型胴太鼓
- 円筒型胴太鼓
- 片面皮円筒型胴太鼓
- 開端式
- 閉端式
- 両面皮円筒型胴太鼓
- 単式
- 複式
- 片面皮円筒型胴太鼓
- 樽型胴太鼓
- 片面皮樽型胴太鼓
- 開端式
- 閉端式
- 両面皮樽型胴太鼓
- 単式 : でんでん太鼓
- 複式
- 片面皮樽型胴太鼓
- 紡錘型胴太鼓
- 砂時計型胴太鼓
- 円錐型胴太鼓
- 杯型胴太鼓
- 円筒型胴太鼓
- 枠型胴太鼓
- 無柄式枠型胴太鼓
- 片面皮
- 両面皮
- 有柄式枠型胴太鼓
- 片面皮
- 両面皮
- 無柄式枠型胴太鼓
- 鍋型胴太鼓
- 摘奏太鼓
(膜面中央に弦を結んであり弦の振動で膜をふるわせるもの。下位分類名称無し)
- 擦奏太鼓
- 棒型擦奏太鼓
- 差込式棒型擦奏太鼓
- 固定差込式
- 半固定差込式
- 可動差込式
- 取付式棒型擦奏太鼓
- 差込式棒型擦奏太鼓
- 紐型擦奏太鼓
- 紐型擦奏置太鼓
- 片面皮
- 両面皮
- 紐型擦奏振太鼓
- 紐型擦奏置太鼓
- 手擦型擦奏太鼓
- 歌奏太鼓(ミルリトン)
- 自由ミルリトン
- 管型または器型ミルリトン : 明笛、カズー
[編集] 弦鳴楽器
弦鳴楽器は弦を張った楽器である。弦をバチで打って鳴らすもの、指などでかき鳴らすもの、弓で弾くもの、風で鳴らすものなどがある。弦鳴楽器は大きく、ネックのような横木のない「ツィター」、胴とネックからなる「リュート」(ネックの代わりに腕木がついている「ライア」を含む)、弦が響版に対して垂直になった「ハープ」に分類する。
- 単純弦鳴楽器またはツィター
- 棒型胴ツィター(棒状のものに弦を張る。板の側縁でもよい)
- 楽弓(両端または全体がしなやかな棒に弦を張る)
- 切出弦式楽弓
- 切出弦式弦単楽弓
- 切出弦式弦複楽弓
- 取付弦式楽弓
- 取付弦式弦単楽弓
- 共鳴器無
- 糸環無
- 糸環付(糸環で弦長を区分する)
- 共鳴器付
- 付属共鳴器式
- 結合共鳴器式
- 糸環無
- 糸環付
- 共鳴器無
- 取付弦式弦複楽弓
- 糸環無
- 糸環付
- 取付弦式弦単楽弓
- 切出弦式楽弓
- 楽棒(固い棒に弦を張る)
- 弓型楽棒(固い棒の一端だけがしなやかに曲がっている)
- 本来的楽棒
- 単数共鳴器付楽棒
- 複数共鳴器付楽棒
- 楽弓(両端または全体がしなやかな棒に弦を張る)
- 管型胴ツィター
- 筏型胴ツィター(筒型胴が結び合わされて筏状を成す)
- 切出弦式筏型胴ツィター
- 取付弦式筏型胴ツィター
- 板型胴ツィター
- 鉢形胴ツィター(開口部に弦を張る)
- 共鳴器無
- 共鳴器付
- 枠型胴ツィター(枠に弦を張る)
- 共鳴器無
- 共鳴器付
- 複合弦鳴楽器
- リュート(弦の成す面と響板が平行)
- ハープ(弦の成す面が響板と垂直。弦の下端を連ねた線と頸部の方向が一致)
- 曲頸型ハープ(支柱なし)
- 弓型ハープ
- 規矩型ハープ
- 枠型ハープ(支柱あり)
- 非変音式枠型ハープ : 中世ヨーロッパのハープ
- 全音階式枠型ハープ
- 半音階式枠型ハープ
- 一弦面型 : 古い半音階式ハープの大部分
- 二弦面交互型 : リヨンの半音階式ハープ
- 変音式ハープ
- ハンドル型ハープ
- ペダル型ハープ
- 非変音式枠型ハープ : 中世ヨーロッパのハープ
- 曲頸型ハープ(支柱なし)
- ハープ・リュート(弦の成す面が響板と垂直。弦の下端を連ねた線と頸部の方向が直角。駒に刻み目)
[編集] 気鳴楽器
気鳴楽器には、通常「管楽器」と呼ばれているもの(下記分類では「吹奏楽器」)と、「自由気鳴楽器」と呼ばれるものが含まれる。管楽器は発音源によって発生した空気振動を管で共鳴させることによってその音高が決定されるのに対して、自由気鳴楽器は管がないか、あっても明確な共鳴は認められず、発音源の振動が直接外の空気に働きかける。
- 自由気鳴楽器
- 側逸奏気鳴楽器 : 鞭、剣(一定以上の長さ、強度を持つ棒状もしくはひも状のもの)
- 中断層気鳴楽器
- 破裂奏気鳴楽器 : 空気銃
- 吹奏楽器
- 刄型付吹奏楽器またはフルート
- 無隙心型フルート
- 隙心型フルートまたは隙溝フルート
- 外隙溝フルート
- 単式外隙溝フルート
- 開管型単式外隙溝フルート
- 指孔無
- 指孔付
- 半閉管型単式外隙溝フルート
- 閉管型単式外隙溝フルート
- 開管型単式外隙溝フルート
- 複式外隙溝フルート
- 単式外隙溝フルート
- 内隙溝フルート
- 外隙溝フルート
- 有簧吹奏楽器
- トランペット
[編集] 電気楽器
「電気増幅楽器」は従来の弦などの発音原理を用いて、その共鳴増幅を電気的に行うものである。「電気発音楽器」は各種の発信回路を用いて音源自体を電気的に生成するものである。
- 電気増幅楽器
- 電気発音楽器
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 『音楽辞典』、平凡社
- 『楽器の歴史』、クルト・ザックス(柿木五郎訳)、全音楽譜出版社

