日本のダム

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本項目では日本のダム、すなわち日本国内に建設され管理・運用されているダムについて、特に治水・利水を目的としたものを中心に扱う。

目次

[編集] 定義

日本におけるダムの定義は、通常は1964年(昭和39年)に制定された河川法と、同法の規定により1976年(昭和51年)に制定された政令である河川管理施設等構造令を根拠としている。

まず、河川法の第2章(河川の管理)-第3節(河川の使用及び河川に関する規制)-第3款(ダムに関する特則)の第44条第1項では、

河川の流水を貯留し、又は取水するため第26条1項の許可を受けて設置するダムで、基礎地盤から堤頂までの高さが15メートル以上のもの

をダムと定義している(利水ダム)。ここで「第26条1項の許可」とは「河川区域内の土地における工作物の新築等に対する河川管理者の許可」のことであり、国土交通大臣または都道府県知事が河川管理者である。このため、高さ15メートル未満のダムについては、「ダムに関する特則」の適用対象とならず、「」(せき)として扱われる(例:西大滝ダム上麻生ダムなど)。

次に、河川管理施設等構造令は、

河川管理施設又は河川法第26条第1項の許可を受けて設置される工作物のうち、ダム、堤防その他の主要なもの

の構造について河川管理上必要とされる一般的技術的基準を定めているが、第2章(ダム)の第3条で、

1 土砂の流出を防止し、及び調節するため設けるダム</br> 2 基礎地盤から堤頂までの高さが15メートル未満のダム

以外のダムについて同章の規定を適用するとしており、ここでも高さ15メートル以上という河川法第44条第1項と同様の定義がされている。ここで河川管理施設のダムとは、河川管理者自らが洪水調節など治水目的で設置するダム(治水ダム)であり、河川法では定義がされていない。また、「土砂の流出を防止し、及び調節するため設けるダム」は「砂防ダム」と呼ばれるものである。

日本のダム基準は、国際大ダム会議の定義するダムのうち「ハイダム」と呼ばれるカテゴリーに属するものに該当する。世界82ヶ国が加盟する非政府組織・国際大ダム会議(ICOLD・1928年創立)では、堤高5m以上または貯水容量300万トン以上のものをダムと定義するが、そのうち堤高15m以上のものをハイダム、それ以下をローダムと定義している。

また一般に「ダム」と呼称される河川工作物として、砂防ダム治山ダムおよび鉱滓ダムがある。しかし、いずれも積極的に河水を貯留する目的を持たないため(砂防ダムの一部ではかんがい目的や水力発電目的を果たすものもあるが、例外的)河川法上のダムとは見なされない。

このうち砂防ダムについては砂防法によって「堤高7m以上のもの」が砂防ダムと規定されており、目的も土石流の抑止に特化されている。管轄部署は国土交通省河川局砂防部であり、河川法に基づくダムを管轄する河川局治水課(施工担当)・河川環境課(管理担当)とは部署が異なる。各都道府県においても同様である。保安林の維持を目的とする治山ダムに関しては森林法に基づく施設であり、農林水産省が管轄しているためこれもまた異なる。鉱滓ダムに関しては、廃棄物処理が目的であるため似て非なるものである。

以下、本項目全般において「ダム」と記したものについては、特に断らない限り河川法第44条第1項または河川管理施設等構造令第3条の定義に基づくダムを指すこととし、それ以外のダムと呼ばれる施設については「」「砂防ダム」「治山ダム」「鉱滓ダム」の各該当項目を参照されたい。

[編集] 概説

日本において建設されるダムの目的は多岐にわたるが、主なものとしては治水目的(洪水調節・農地防災・流水機能維持)と利水目的(かんがい上水道供給・工業用水供給・水力発電・消流雪用水・レクリエーション)に大別される。単独の目的を持つダムもあれば、複数の機能を併設するダムもある。前者は治水(国土交通省直轄ダムは洪水調節、農林水産省直轄ダムは農地防災と称している)ダム・かんがい用ダム・発電ダム等とそれぞれの目的を冠した呼ばれ方をするが、後者は一般に多目的ダムと呼ばれる。

ダムは様々な事業者によって計画・調査・建設・管理等が実施されている。日本においては、政府直轄事業者(国土交通省農林水産省・独立行政法人水資源機構)、地方自治体(都道府県・市町村)、電気事業者(各電力会社)および一部の民間企業からなる。戦前は日本海軍が所管していたダム<ref>広島県にある三高ダム・本庄ダムがこれに当たる。海軍基地への上水道供給を目的としていたもので、戦後海軍の解体後、軍港市転換法によって三高ダムは広島県に、本庄ダムは呉市に管理および承継され、現在に至っている。</ref>も存在していた。多目的ダムについては、政府直轄のダムを「特定多目的ダム」(別名「直ダム」)、地方自治体管理のダムを建設費の国庫補助を受けることから「補助多目的ダム」・「補助治水ダム」(略して「補助ダム」)と呼ぶ。1988年(昭和63年)には限られた小地域に対する治水・利水を目的にした小規模な都道府県管理ダムに対して建設費の国庫補助が受けられる制度も導入された。この様なダムを「小規模生活貯水池」と呼び、湛水面積も小規模なことから水没補償を最小限に抑制可能として最近多く建設されている。

ダムは「河川総合開発事業」・「河川整備基本計画」(国土交通省および都道府県土木部局)、「水資源開発基本計画」(フルプランとも呼ばれる。水資源機構)、「土地改良事業」・「かんがい排水事業」(農林水産省および都道府県農林水産部局)に基づいて計画され、建設される<ref>かつては災害復旧事業のうち、改良復旧事業の一つである河川等災害助成事業で造られたダムもある(山口県の御庄川ダムなど)。制度としては残されているものの、制度上の問題(事業費が原則として被災額の倍額まで、被災年から5年以内での完成、など)や手続き上の問題もあって、現在はこの手法の代わりに1972年(昭和47年)に制度化された「補助治水ダム事業」が適用されている。</ref>。法的には河川法特定多目的ダム法・河川管理施設等構造令・水源地域対策特別措置法といった河川行政に直接関連する法律の他、土地収用法環境影響評価法等の法律に関連する。現在は、法律の他「公共事業評価委員会」・「河川流域委員会」等の第三者機関からの評価も受け、合意がなければダム事業(調査・建設等)ができないシステムが進んでいる。

<references/>

[編集] 歴史

詳細は日本のダムの歴史を、全年表は日本ダム史年表を参照

日本のダムは、616年に完成した大阪府狭山池ダムアースダム・西除川)より始まる。その後はかんがい用ダムの建設が主体であったが、1891年長崎市水道の水源として本河内高部ダムが日本初の上水道専用ダムとして完成。さらに1900年には日本初のコンクリートダムとして布引五本松ダム生田川神戸市)が完成し近代ダム技術による大ダム時代に入っていった。

大正時代には木曽川信濃川天竜川等で水力発電開発が盛んに行われ、事業者としては福澤桃介松永安左エ門らが有名である。この中で大井ダム木曽川)・帝釈川ダム帝釈川)・小牧ダム(庄川)等の大規模コンクリートダムが建設され、1938年には戦前で堤高が最も高い塚原ダム(耳川)の建設に発展する。なお、この時期は現存するダムが6基しかないバットレスダムの建設が集中しており、笹流ダム(笹流川)や丸沼ダム(片品川)が完成している。

戦後、国土総合開発法が1950年に施行されて以降全国各地で「河川総合開発事業」が進められ、荒廃した国土の復興に貢献した。この中でダム、特に多目的ダムの役割は重要視され、1945年沖浦ダム(浅瀬石川)完成以降建設省(現・国土交通省)や各地方自治体によって全国の河川に続々と建設された。また農林省(現・農林水産省)は食糧増産を目的に加古川九頭竜川等で「国営土地改良事業」を展開、かんがい専用ダムを各地に建設。さらには増加する人口と高度経済成長を背景に水資源確保の必要性が高まり1962年には水資源開発公団(現・独立行政法人水資源機構)が発足、利根川淀川等で水資源開発のためのダム建設を行った。

電源開発もその重要性はますます高まり、日本発送電株式会社解散以降9電力会社電源開発株式会社によって数多くの発電用ダムが建設された。特に、現在での日本最高の堤高を誇る黒部ダム黒部川)・佐久間ダム(天竜川)・奥只見ダム只見川)は日本土木史にも残る大事業となった。その後火力発電の隆盛で開発は下火となるが、1973年オイルショックで水力発電が再評価され、揚水発電による大規模水力発電所が建設されるようになった。

だが、開発に伴う地域住民の犠牲はなおざりになっていた。これに風穴を開けたのが蜂の巣城紛争であり、これ以後水源地域対策特別措置法を始めとして水源地域住民・水没住民に対する法的保護が充実して行った。ダムは次第に本来の目的に加え観光名所としての側面を有するようになった。一方、公共事業に対する国民の厳しい目はダム事業に及び、1990年代以後ダム建設の中止や凍結が相次いだ。

また、環境問題への関心の高まりから、ダム建設による河川水量の減少や水質の悪化も重視されるようになり、利水面で水道需要の当初計画からの需要減少による「水余り」現象が目立ってくるに至って、長良川河口堰長良川)や八ッ場ダム吾妻川)・徳山ダム揖斐川)・川辺川ダム(川辺川)といった利水・治水を目的とした大規模ダム事業への風当たりが厳しくなっていった。ついには田中康夫当時長野県知事による「脱ダム宣言」まで飛び出し、ダムが抱えるさまざまな問題が広く知られるようになった。しかし東海豪雨福井豪雨新潟・福島豪雨といった大水害と1994年2005年の大渇水のように地球温暖化の影響ともいわれる気象災害により、治水面においてダムに対する再評価も始まっている。

[編集] ダム諸元に関する表記

諸元(しょげん)とは、高さや、重量などのいわゆる概要であり、「高さ」など呼称は下記の通り。またダムの名称は一般的に立地した土地の地名や河川の名が付けられるが、難読なものも多い。

[編集] ダム本体の諸元

諸元の解説についてはダム#諸元を参照のこと

諸元 単位 日本での上位3ダム 数値
堤高 m 黒部ダム黒部川富山県
高瀬ダム高瀬川長野県
徳山ダム揖斐川岐阜県
186.0
176.0
161.0
堤頂長 m 大谷内ダム(釜川、新潟県。注1)
東富士ダム(抜川、静岡県。注1)
沼原ダム那珂川栃木県。注1)
1,780.0
1,597.5
1,597.0
堤体積 丹生ダム(高時川、滋賀県
徳山ダム
胆沢ダム(胆沢川、岩手県
13,900,000
13,700,000
13,500,000
総貯水容量 徳山ダム
奥只見ダム只見川福島県新潟県
田子倉ダム(只見川、福島県)
660,000,000
601,000,000
494,000,000
有効貯水容量 奥只見ダム
田子倉ダム
徳山ダム
458,000,000
370,000,000
351,400,000
集水面積
(注2)
km² 宮中ダム信濃川、新潟県)
揚川ダム(阿賀野川、新潟県)
船明ダム天竜川静岡県
7,841.0
6,728.0
4,895.0
湛水面積 ha
km²
雨竜第一ダム雨竜川、北海道)
夕張シューパロダム夕張川、北海道)
徳山ダム
2,373.0
1,510.0
1,300.0

[編集] 型式

型式の概説はダム#型式一覧を、詳細な解説は各型式のリンクより参照。

日本のダムで採用されているダムの型式は以下の通りである。専門書では略号で表されることが多い。地震の多い日本においてはダム型式における耐震理論が世界で最も進んでいる国の一つである。

なお、数値は2006年現在日本国内における既設・未設のダム(河川法上で規程されている堤高15m以上のもの)を集計している(参考文献:ダム便覧(財団法人日本ダム協会))。ただし、再開発を行う同一ダムは除いている。

分類 小分類 略号 基数
重力式コンクリートダム G 1,066
中空重力式コンクリートダム HG 13
アーチ式コンクリートダム A 53
重力式アーチダム GA 12
マルチプルアーチダム(多連式アーチダム) MA 2
バットレスダム B 6
アースダム(アースフィルダム) E 1,233
ロックフィルダム 土質遮水壁型ロックフィルダム R 278
コンクリートフェイシングフィルダム CFRD 4
アスファルトフェイシングフィルダム FA 14
コンクリートコアフィルダム FC 1
コンバインダム(複合型ダム) GF 24
台形CSGダム CSG 7

[編集] 利用目的

主な利用法としては下記の用途がある。専門書等ではアルファベット一文字で表記されることが多い。上水道・かんがい・工業用水の用途は「利水」として総称されることがあり、降雨や融雪などにより河川流量の豊富な時期(豊水期)に水量を貯水しておき渇水期において水源として利用する

単独目的のものも多いが、下記のいくつかの目的を兼ね備えるダムもあり、これらは多目的ダムと呼ばれる。大規模なものが多い。

用途 略号 目的 解説 凡例
治水 F 洪水調節 計画した水量を超えないように、水量を調節し洪水被害を軽減する。詳細は洪水調節を参照。 特定多目的ダム
補助多目的ダム
水資源機構管理ダム
治水ダム
N 不特定利水 特定された事業者を対象としない用水供給。通常は慣行水利権者が古くより取水していた水量の補給、または河川の正常かつ一定流量を維持することで魚類など河川生態系の保護を目的とする(河川維持放流)。治水のカテゴリに属し、利水の扱いにはならない。このため洪水調節・不特定利水の2目的しかないダムは多目的ダムには該当しない。 特定多目的ダム
補助多目的ダム
水資源機構管理ダム
品木ダム(湯川)
坂本ダム碓氷川
利水 W 上水道 上水道用水を確保し、供給する。 小河内ダム多摩川
布引五本松ダム生田川
笹流ダム(笹流川)
I 工業用水 臨海工業地帯・内陸工業地域等の工場操業などに欠かせない用水を供給する。 府中ダム綾川
河内貯水池(板櫃川)
A かんがい 特定の農業促進事業の対象農地に農業用水を供給する(例:「土地改良事業」・「農業水利事業」・「かんがい排水事業」)。概して新規農地開拓を目的とするため、慣行水利権分の農業用水を供給する不特定利水とは対象農地が異なる。 岩洞ダム(丹藤川)
大迫ダム紀の川
北山ダム嘉瀬川
P 発電 発電出力を調節するために貯水を行い、必要に応じ発電を行う。上流の大規模発電用ダムからの発電用放流を貯留し、下流の河川流量の維持・均等化を図ることを目的とした発電用貯水池・ダムを特に「逆調整池」と呼ぶ。 黒部ダム
奥只見ダム
佐久間ダム天竜川
R レクリエーション ダムを観光スポーツの目的に使うもの。ボート競技での水位維持、オリエンテーリングなど。日本には現在3ヶ所しかなく、完成・運用されているのは石井ダム(兵庫県)1基のみである(日本ダム協会調べ)。 長沼ダム(迫川)
武庫川ダム(武庫川
石井ダム(烏原川)
S 消流雪用水 冬季、河川に投棄した雪を流下させるために必要な水量を確保するもの。富山県を中心に北陸地方のダムにのみ限定した目的である。 境川ダム(境川)
城端ダム(山田川)
久婦須川ダム(久婦須川)

[編集] 事業者(事業主体)

ダムの建設発注及びダムを管理する事業主。戦後における事業者としては下記のものが中心となっている。複数の事業者による共同管理をするものもある。管理が国から地方自治体に移行したダムもある。

事業主体 主な組織 凡例
国土交通省 北海道開発局開発建設部
地方整備局(東北・関東・北陸・中部・近畿・中国・四国・九州)
沖縄総合事務局開発建設部(内閣府管掌)
国土交通省直轄ダム一覧
農林水産省 北海道開発局農業水産部
地方農政局(東北・関東・北陸・東海・近畿・中国四国・九州)
沖縄総合事務局農業水産部
農林水産省直轄ダム一覧
水資源機構 ダム事業部(国土交通省所管)
水路事業部(農林水産省・厚生労働省経済産業省所管)
水資源機構所管ダム一覧
都道府県 企業局、企業庁、土木部局(都道府県により組織・名称が異なる)など 主な都道府県営ダム一覧
市町村 水道局 市町村営水道用ダム一覧
電力会社 電源開発北海道電力東北電力東京電力北陸電力中部電力関西電力中国電力四国電力九州電力、荒川水力電気、東北水力地熱、東京発電、その他電気事業者。 電力会社管理ダム一覧
民間企業 東日本旅客鉄道王子製紙新日本製鐵日本軽金属旭化成昭和電工チッソ、日本電工など 民間企業所有ダム一覧

[編集] その他

施工業者
ダム本体工事のみに関わった施工業者。大抵は大手建設会社ゼネコン)であるが、大規模なダムでは1社単独施工のケースは少なく、複数の企業による共同施工(共同企業体:JV)となるケースがほとんどである。
着工年・竣工年
着工年とはダム事業が着手された(実施計画調査の着手)年であり、事前に実施された予備調査開始年や本体工事着手年が起点ではない。竣工(しゅんこう)年とはダム本体が完成した年度を指し、その後運用に向けての周辺整備を実施するので大体においては正式な完成年(運用開始年)とは1年間から2年間程度ずれ込む。基本的に多目的ダムなどの河川総合開発事業関連ダム(国土交通省・水資源機構・各都道府県)および農林水産省直轄ダムでは、事業費の最終計上年をもって竣工年とし、電気事業者(電力会社)では水力発電所の運用開始年(一部運用を含む)、利水専用ダムでは許認可を受けた年を竣工年とする。

[編集] ダム問題

日本においては近年ダム事業に対する賛否が多く論じられている。大別すると「環境」・「公共事業の可否」である。さらに水没による観光資源の喪失や、水没地域の住民が生活基盤を破壊されることも問題になる。ダム事業に対する代替案も事業者・反対派から出されるようになっているが、一部のダムでは地元・下流域からの猛烈な反対運動、あるいはそのための討論・議論・補償交渉の長期化、さらには環境影響評価法による厳格な環境調査が義務付けられたことにより、ダム事業長期化が起こっている。このため当初の予定より大幅な事業進捗遅延が特に大規模ダムで起こっており、このことがさらにダム事業への批判を呼んでいる。このような長期化しているダム事業は、事業費高騰の第一要因であることから「公共事業見直し」の対象になりやすく、事実全国で100ヶ所近くのダム事業が休止・中止となっている。ダム問題は各論が単体で存在するのではなく、複数の問題が複雑に絡み合う形で存在している場合がほとんどで、これが事業の長期化に拍車を掛けていると言われており、拙速にならない程度に早期に議論を集約し結論を出すことが、事業費高騰を抑制する上でも必要といわれており、今後の課題となっている。

[編集] 日本のダム事故

大雨によって堤体が越流・決壊。下流の住民941人が死亡し行方不明者多数。明治以降における日本のダム事故において最悪の被害を出す。事故前に様々な怪奇現象が報告されたとの伝承がある。
建設された場所の基礎地盤が不良であったために、崩壊。7人が死亡する。その後場所を改めて再建されるがこれはアースダムであり、バットレスダムとしては現存せず。跡地は公園となっている。
建設時の施工ミスが遠因で、豪雨の際に堤体両岸から貯水が越流・決壊。下流の住民60人が死亡。ダムはその後放棄され機能していないが現存。
九州北部に壊滅的被害を与えた1953年6月梅雨前線豪雨の際、筑後川の濁流がダム両岸より越流し崩壊。ダム本体の水門も破壊された。福岡・大分両県による調査も行われたが、ダム決壊によって下流の水害が増幅されたという推測は否定された。ダムは現存し稼働している。
  • 大正池決壊事故京都府・玉川・アースダム。1953年・昭和28年8月14日
集中豪雨」という語句の初見となった南山城水害(参考)により、下流のため池と共に越流・決壊。105人が死亡した。ダムはその後1960年(昭和35年)に再建され、1999年平成11年)には重力式コンクリートダムとして改良され稼働している。
  • 和知ダム第三ゲート崩壊事故(京都府・由良川・重力式コンクリートダム。1967年・昭和42年7月
ダム完成の一月後、ゲートを支える鉄柱の強度不足によって突如ゲートが破損・崩壊。貯水が全て流出した。人的被害は無かったが、原因が特定されるまで運用は差し止められ、管理者である関西電力は1年後の1968年(昭和43年)12月に稼働を再開した。

[編集] 日本のダム事件・訴訟

浅野総一郎率いる庄川電力(関西電力の前身)が小牧ダムを建設することで、流木が不可能になることに反発した飛州木材が「慣行流木権」を求めて激しく争った事件。民事訴訟では流木権が認められたが行政訴訟で敗北、後に和解が成立し失業補償と代替道路(国道156号)が建設された。浅野のごう慢な態度が事件を長期化させた。日本におけるダム訴訟のはしりである。
福澤桃介率いる大同電力(関西電力の前身)が大井ダムを建設することで、濃尾平野の約17,000haに及ぶ農地に用水を供給する宮田用水木津用水の取水が困難になることに反発した農民が、江戸時代から続く慣行水利権を主張して争った事件。大同電力側も河川法で許可された発電用水利権を盾に15年間抵抗したが、1939年に電力側が今渡ダムを建設して用水の取水量を確保することで和解が成立した。
電源開発が建設する田子倉ダムによって水没する田子倉地区(南会津郡只見町)の住民が、福島県知事を通じ電源開発に高額の補償を要求。電源開発がこれに応じたことが報道で明るみになった事件。建設省通商産業省の反発で撤回されたが、これ以降全国各地のダム水没補償交渉に多大な影響を与えた。
建設省の高圧的な態度に反発した室原知幸ら住民が、下筌ダム左岸に(蜂の巣城)を構えてダム建設に激しく抵抗した日本のダムの歴史上最大の反対闘争。基本的人権財産権を盾に法廷闘争を繰り広げ、流血事件にまで発展した。公共事業と基本的人権保護の整合性を世に問い、水源地域対策特別措置法をはじめ以後のダム事業・公共事業に多大な影響を及ぼした。
アイヌ民族の聖地・沙流郡平取町二風谷が水没することに反発した萱野茂ら住民が、ダム建設の差し止めを訴えた訴訟。差し止めは却下されたがアイヌ民族の先住性がこの時認められた。これにより差別的法律といわれた北海道旧土人保護法が廃止され、アイヌ民族の長年にわたる悲願が達成された。
日本最大級の多目的ダム・徳山ダムを巡り、水没地の徳山村住民ではなく下流である大垣市市民団体が、ダムの建設中止を求めて事業者の水資源機構(当時は水資源開発公団)と争った訴訟。一審・控訴審で原告は敗れ、最高裁に上告してダム建設は憲法違反と訴えたが、上告は棄却され敗訴が確定した。市民団体はダムが完成しても撤去を求め、争う構えを崩していない。
堆砂の根本的改善策として1991年(平成3年)から開始された出し平ダムの排砂により富山湾の漁獲高が減少、2001年(平成15年)には宇奈月ダムとの連携排砂も開始された。富山湾の漁民の一部はこれに反発、民事調停や公害紛争調停も行われたが不調に終わり、2002年に事業者の関西電力を相手に訴訟を起こす。関西電力及び国土交通省北陸地方整備局(宇奈月ダムの管理者)は洪水時に限定した排砂を行い影響の抑制を図っているが、現在係争中。
  • 発電用ダムデータ改ざん事件(全国各地。2006年・平成18年~2007年・平成19年)
中国電力土用ダムで発覚したダムデータの改ざんは、国土交通省や経済産業省のその後の調査で全国各地の水力発電所においても行われていたことが判明。東京電力では八汐ダムの不正取水が明るみになり、2007年に河川法違反で塩原発電所運用停止という前代未聞の厳しい処分が下った。この問題はさらに原子力発電所のトラブル隠しにまで発展し、電力会社の信頼を失墜させる事態に陥った。

[編集] 再開発

詳細はダム再開発事業を参照。

ダム事業の中には、既存のダム・貯水池を改良するか、あるいは直下流に新規にダムを建設することで治水機能や利水機能を維持・強化する事を目的とした事業がある。これらをダム再開発事業と呼ぶ。

前者では、特に明治・大正時代に完成したダムにおいて、完成より多年が経過したために堤体が老朽化したり、あるいはダム湖堆砂によって有効な貯水機能の維持が困難になる例が見られる。このため、再開発事業の一環としてダム本体の修繕や放流設備の改修、貯水池の掘削・堆砂除去を行うことによって完成当時のダム機能を復活させる。このような再開発事業は治水・利水目的を付加する場合にも行われ、ダム本体のかさ上げや洪水処理機能の強化、貯水池を掘削するなどして有効貯水容量を増加させ、増加分を洪水調節容量や利水(上水道・工業用水・かんがい)容量に充当する。

後者では、主に洪水調節機能の強化が第一義の目的となる。ダム建設後も、たびたび計画された洪水調節流量を超える洪水が発生するなどして、そのままでは有効な治水対策が図れなくなる場合に検討される。堤防の建設や強化、河床掘削等の治水対策が何らかの理由で選択できず、かつ新規のダム建設が困難な場合に採用されやすい。この場合、大抵は既存のダムの直下流部またはダム本体を取り込む形で既存よりも大規模なダムを建設し、結果的にダム湖の容量を増大させて過去最大の豪雨に対処できるだけの洪水調節容量を確保することになる。利水目的も付随するかたちで計画されるが、あくまで主目的は洪水調節である。なお、このような再開発の場合は、既存のダムは新しいダムの堤体に取り込まれるか、あるいは水没してその役割を終える。沖浦ダムが代表的であり、現在国土交通省直轄ダムを中心に全国各地で建設・計画されている。

[編集] 日本のダムに関連する人物

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズに、日本のダムに関連するカテゴリがあります。
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[編集] 出典

[編集] 外部リンク

ことばこって?

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