法令

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法令(ほうれい)は、一般に、法律国会が制定する法規範)と命令行政機関が制定する法規範)を合わせて呼ぶ法用語。また、もろもろの制定法の中では、法律と命令のほか、条例最高裁判所規則、訓令などを「法令」に含めて指す場合もある。

目次

[編集] 日本の法令

「法令」という語は、一般には法律(国会が制定する法規範)と命令(国の行政機関が制定する法規範)を合わせて呼ぶ法用語である。しかし、もろもろの法規では、法律と命令のほか、条例や規則(地方公共団体が制定する法規範)、最高裁判所規則(最高裁判所が制定する法規範)、訓令(上級官庁が下級官庁に対して発する命令)などを含めて「法令」と呼ぶこともある。このように、「法令」という用語の使い方は、かなりまちまちである。結局、個々の用例に則して、その範囲を決めるほかはない。

[編集] 法令の種類

日本国の法令には、種類毎に優劣関係がある。上位の法令が優先され、上位の法令に反する下位の法令は効力を持たない。優劣関係は、おおむね次のようになっている。

憲法 > 条約 > 法律 > 政令最高裁判所規則議院規則条例> 府令省令規則庁令

ただし、法令の対象となる事項にもよるが、憲法と条約との関係、条約と法律との関係、法律と最高裁判所規則との関係については、優先関係につき争いがある。

日本の主な法令の条文は、法令データ提供システム法令データ提供システム/総務省行政管理局) で参照できる。

法令名定義、制定方式など
法律 国会の議決により成立する成文法の一形式。例外として、地方自治特別法(一の地方公共団体のみに適用される特別法)は、国会の議決のほか、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意が必要。

成立した後、主任の国務大臣署名し、内閣総理大臣連署して、天皇公布する。

命令 行政機関が制定する成文法の総称。法律の範囲内において定められる。

政令、府令、省令、規則、庁令の5種がある。

  政令 内閣が制定する成文法。法律の実施に必要な規則や法律が委任する事項を定める。日本国憲法73条6号に基づく。

閣議によって決定され、主任の国務大臣署名し、内閣総理大臣連署して、天皇が公布する。法律の委任がある場合を除き、罰則や義務を設けることはできない(内閣法11条)。

府令 内閣総理大臣が発する命令。現在は内閣府令がある。内閣府に係る主任の行政事務について法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、内閣府の命令として内閣総理大臣が発する。内閣府設置法により、内閣府令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(内閣府設置法第7条第4項)。

以前、内閣府が総理府であったときには総理府令と言った。また、法務省法務府であったときには法務府令といった。

省令 各省大臣が発する命令。各省大臣が、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として発する。国家行政組織法により、省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない(国家行政組織法第12条第3項)。
規則 行政委員会人事院会計検査院が定める命令。その所掌事務について、法律若しくは政令を実施するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて制定する。
庁令 省の外局である庁の長が発する命令。現在は、海上保安庁令のみ。海上保安庁令は、海上保安庁法に基づき、海上保安庁長官が発する命令である。

以前、総理庁が設置されていた時は総理庁令法務庁が設置されていた時は法務庁令などがあった。府省には他にも多くの「庁」があるが、庁令という形式の命令発出が認められているのは、現在、海上保安庁のみとなっている。

議院規則 衆議院参議院が定める法規範。各議院が、それぞれ単独の決議により、議院における会議その他の手続及び内部の規律について定める。日本国憲法58条2項を根拠とし、各議院でそれぞれ衆議院規則、参議院規則が定められている。
最高裁判所規則 最高裁判所が、裁判官会議の議に基づいて定める法規範。訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について定める。日本国憲法77条1項を根拠とする。

なお、最高裁判所規則で定め得る事項については、法律で定めることも許されると解されている(例えば、民事訴訟法民事訴訟規則など。)。法律と規則の規定が矛盾衝突した場合には、その優劣関係が問題となる。この場合、法律の規定が優先されるとするのが多数説である。

条例 地方公共団体が制定する自治法。地方議会がその議決により定めるものや、地方公共団体の首長が定めるもの(規則)、地方公共団体の委員会が定めるものなどがある。条例は法律の範囲内で制定される。

日本国憲法第94条により付与された自治立法権に基づいて地方公共団体が国家法とは別に定める。条例は、当該地方公共団体内でのみ効力を有し、(国が定めた)法令に違反してはならない。地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない(地方自治法第14条)。

2006年(平成18年)3月、日本政府の法令外国語訳実施推進検討会議は『法令用語日英標準対訳辞書』を発行し、その中で法令の英訳を以下のように定めた。[1]

  • 憲法 - Constitution
  • 法律 - Act(原則)、Code(いわゆる法典)
  • 政令 - Cabinet Order
  • 内閣府令 - Cabinet Office Ordinance
  • 省令 - Ordinance of the Ministry
  • 規則 - Rule
  • 条例 - Prefectural Ordinance(都道府県条例)、Municipal Ordinance(市町村条例)

[編集] 現行法上新たに制定されない形式

太政官布告・太政官達
1868年に政体書によって設置され、内閣制度が創設されるまで存続していた最高官庁である太政官が制定していた法形式である。一般国民を拘束する内容を持つものを太政官布告とし、官庁限りの心得を太政官達としていたが、必ずしもその区別が守られていたとはいえなかった。太政官制度が廃止された後も、後に制定された法令に矛盾しない限りその効力を有し、日本国憲法施行後も大日本帝国憲法下で法律としての効力を認められたものは、現憲法に違反しない限り効力を存続するとされている。太政官布告第何号というのは制定順序ではなく後日編纂された太政官日誌の登載順である。
緊急勅令
大日本帝国憲法第8条に定められていた法形式で、公共の安全を保持しまたはその災厄を避けるため緊急の必要により帝国議会が閉会の場合において、法律に代わるものとして天皇が発布していた勅令である。帝国議会の次の会期に提出しなければならず、もし議会の承認が得られなかったときは、政府は将来に向けてその効力を失うことを公布しなければならなかった。なお、「緊急勅令」という呼称は講学上のもので、法令上の正式な呼称及び法令番号での表記は単に「勅令」であった。次項の(普通の)勅令との区別は、官報公布時の上諭(公布文)に緊急の勅令である旨の記載があるかないかによってなされた。
勅令
大日本帝国憲法第9条に定められていた法形式で、法律を執行するためまたは公共の安寧秩序を保持しおよび国民の幸福を増進するために天皇が制定していた法形式である。憲法上法律事項とされていない事項を対象とする場合は、法律に基づかなくても制定は可能であった。法律事項以外でも、軍に関することは軍令で、皇室に関することは皇室令で定めていたので、これらを除いたものが勅令事項とされていた。制定にあたっては内閣が輔弼(事実上の承認を)していたので、現在では政令とみなされ、位階令など、一部には現在でも効力を有しているものがある。現在、勅令の廃止や改正は(法律の効力を持ついわゆる「ポツダム勅令」を除いて)政令により行われている。
閣令
内閣官制(明治22年勅令第135号)第4条に定められていた法形式で、内閣総理大臣が制定していた。現代の内閣府令に相当するものといわれている。
皇室典範
現在の皇室典範は国会が制定する法律であるが、大日本帝国憲法時代は皇室内部の家法であるという理由により帝国議会の議決を経ずに制定され、憲法と対等の効力を有するものとされた。皇室典範の改正又は増補は、皇族会議及び枢密顧問の諮詢を経て勅定されるという手続きで行われていた(典範62条)。また、日本国憲法施行に伴い皇室典範という法形式そのものを消滅させるために制定された皇室典範皇室典範増補廃止ノ件(昭和22年5月1日公布)は、この改正手続きに準じて制定されたものである。
皇室令
皇室典範に基づく諸規則、宮内官制及びその他の皇室の事務に関して勅定を経た規定であり、発表すべきものは、この法形式により制定された。皇族に準じた礼遇を受けていた王公族や、貴族である華族朝鮮貴族の権利・義務などについてもこの法形式で規律していた。日本国憲法施行に伴いこの法形式が廃止されることとなり、昭和22年皇室令第12号によって全ての皇室令が廃止されている。この法形式では、上諭に必ず宮内大臣が副署することとされていた。ただ、国務大臣の職務に関連する皇室令については、宮内大臣の後に、内閣総理大臣及び主任の国務大臣が副署することとされていた。
軍令
天皇の陸海軍統帥権に関して勅定を経た規定のことをいう。1907年の「軍令ニ関スル件」(明治40年軍令第1号)制定に始まり、陸海軍解体後の1946年に廃止された。軍令で公布を要するものは、上諭を付し、主任の陸軍大臣海軍大臣が副署することとされていた。なお、内閣総理大臣の副署はされなかった。
律令
台湾が日本の領土であった時代に定められた法形式である。内地において法律で定めるべき事項について天皇の勅裁を経て台湾総督が制定していた。
制令
朝鮮が日本の領土であった時代に定められた法形式である。内地において法律で定めるべき事項について天皇の勅裁を経て朝鮮総督が制定していた。
総督府令
朝鮮および台湾において総督が法律で定めるべき事項以外について定める命令である。
州令
台湾における内地では府県令に相当する命令で、台湾の地方単位「州」の長たる州知事が定めるものをいう。罰則は府県令より重く省令と同じで、朝鮮の道令よりは軽い。
庁令
台湾における内地では府県令に相当する命令で、台湾の地方単位「州」を置かない未開地域「庁」の長たる庁長が定めるものをいう。罰則は府県令より軽い。
関東庁令
関東長官が定める命令である。罰則は勅令と同じである。安寧秩序保持のため緊急のときは、事後に勅裁を請えばより重い罰則を付することができる。(昭和9年まで)
関東局令
関東局の長たる満洲国駐箚特命全権大使=関東軍司令官が定める命令である。罰則は勅令と同じである。安寧秩序保持のため緊急のときは、事後に勅裁を請えばより重い罰則を付することができる。(昭和9年から)
民政署令
関東州における内地では府県令に相当する命令である。関東州の地方単位「区」(昭和12年からは「市」は「区」に含まれない)に置かれた民政署の長たる民政署長が定めるものをいう。罰則は府県令と同じ。である。
南洋庁令
南洋庁長官が定める命令である。罰則は勅令と同じである。安寧秩序保持のため緊急のときは、事後に勅裁を請えばより重い罰則を付することができる。
樺太庁令
樺太庁長官が定める命令である。罰則は省令と同じ。
都令 北海道庁令 府県令 州令 道令
条例で定めるもの以外の事項について、都長官、北海道庁長官、府県知事、州知事、道知事が制定した命令である。

[編集] アメリカ施政権下の沖縄の法令

布告
米国民政府により定められた法形式である。主に占領に関する基本原則などを定めていた。
布令
米国民政府により定められた法形式である。上記の布告をさらに具体的にした法令である。
立法
琉球政府立法院により定められた法形式である。布告・布令の範囲内ではあるが、日本本土において法律で定めるべき事項について米国民政府の承認を経て制定していた。

[編集] 法令ではないが参照されるもの

次のものは法令ではないが、しばしば法令の解釈の参考にされる。

国会決議(衆議院決議、参議院決議)
国会または議院衆議院参議院)の意思決定。法律案を通した場合に「○年後に見直しする」といった附帯決議が行われることがある。
閣議決定、閣議了解、閣議報告
内閣意思決定である。
予算
法令ではないが、法令としての性格もあわせ持っている。
規格
日本工業規格日本農林規格など。
告示
公の機関が、指定・決定に基づいてその機関の所掌事務について、一般に知らせる事項である。官報に登載される。ただし文部科学省告示の学習指導要領は法令に準ずる拘束力があるといわれる。
訓令
行政機関およびその職員を対象として定められる命令である。各省大臣、各委員会及び各庁の長官が、その機関の所掌事務について命令するため、所管の諸機関及び職員に対し発するものである。公共性が強く官報に掲載されるもの(俗に「大臣訓令」という。)と、行政機関の中堅幹部以下の役職配置を定めるなどの非公表扱いのものがある。
通達
上級機関が下級機関に対して、その機関の所掌事務について示達するため発翰する公文書のこと。法令の解釈等を示すものとして、当該法令を所管する省庁が下級機関に対して発翰することが多い。ただし、あくまで行政機関内部の文書であることから、通達で示された法令の解釈は司法の判断を拘束しない。
行政実例
法令の適用にあたって、その法令を所管する機関が示す解釈のこと。下級機関からの照会に対する回答というかたちで示されることが多い。文書記号・文書番号(発翰番号)及び発翰年月日を付した上で、官職名でもって照会者に対し回答がなされる(例:A県B部長あてZ省Y局X課長回答)。その内容は当該機関が組織として示す公的な見解とされ、しばしばいわゆる有権解釈として取り扱われる。通達と同じく、そこで示される解釈は司法の判断を拘束する力を一切持たないものであるが、指揮監督という関係に基づき、当該事案及び事後の同種事案において下級機関の判断を事実上強く拘束する。
内簡
法令で抽象的に示された規定についてそれを具体的に認定する際の一定の基準や、仔細にわたるため法令で規定するになじまない事項などを参考として地方自治体などに示したもの。法的な拘束力は一切ないが、地方自治体の判断に対して実質的な影響力があり、これを誘導する目的で発出されることも多い。
協定
当事者間の取るべき処置について取り決めた合意の総称である。覚書・念書・協議書等が該当する。
規程
行政組織の執務に関する内部規則で条文形式で定めている。
要綱
行政の執行の指針を定めた内部規程である。組織要綱、助成要綱、指導要綱等がある。

[編集] 個別の記事を持つ日本国の法令

次の項目を参照のこと。

[編集] 関連項目

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