マクロ経済学

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マクロ経済学macroeconomics)とは、個別の経済活動を集計した一国経済全体を扱う経済学である。マクロ経済変数の決定と変動に注目し、適切な経済指標とは何か、望ましい経済政策とは何かという考察を行なう。その主要な対象としては国民所得失業率インフレーション投資貿易収支などの集計量がある。対語は、経済を構成する個々の主体を問題にするミクロ経済学

目次

[編集] 概説

マクロ経済分析の対象となる市場は、生産物(サービス)市場、貨幣(資本債券)市場、労働市場に分けられる。

新古典派によると資本市場で自然利子率が決定される。生産はワルラス均衡が達成される自然水準にあると信じられてきたが、1930年代に米国を襲った恐慌によりこの見解への懐疑が生まれる。

この懐疑の中、ジョン・メイナード・ケインズは「雇用・利子および貨幣の一般理論」を発表する。ケインズによると貨幣市場で現実利子率が決定される。価格硬直性から派生する、自然生産水準と現実生産水準の乖離を埋めるために有効需要政策が必要となる。この主張によってこれまでの新古典派経済学体系が覆されるというケインズ革命が起こる。しかし1970年代に入って米国など先進工業国がスタグフレーションに苦しむようになるとケインズ批判が起こる。新古典派が復権して、新しい古典派という考えが注目されるようになる。

現在では、古典派・新古典派経済学とケインズ経済学の両方からマクロ経済分析へのアプローチが取られている。

なお、マクロ経済とミクロ経済との二分法を最初に考案したのは、ノルウェーの経済学者ラグナル・フリッシュ。「ミクロ経済学」と「マクロ経済学」の用語をはじめて用いたのは、オランダの経済学者ウルフ<ref>ステイグリッツ(1999)「入門経済学」東洋経済</ref>。

[編集] 学派

普及年代 学派 特徴 学者
18C 古典派 セイ法則により供給が需要を生み出す価格伸縮的市場 リカード,スミス,ミル
19C 新古典派 価格調整により達成されるワルラス均衡で完全雇用が常時成立 ワルラス,パレート
1930s ケインジアン 有効需要原理により需要が供給を生み出す価格硬直的市場 ケインズ
1970s サプライサイダー セイ法則によりケインズ的需要創出財政政策を批判 マンデル
1970s マネタリスト 古典派の二分法によりケインズ的金融政策は長期的無効 フリードマン
1970s 合理的期待学派 完全予見されたケインズ的金融政策は短期かつ長期的無効 ルーカス
1990s 新しい古典派 価格調整は存在せずワルラス均衡が常時成立 プレスコット
1990s ニュー・ケインジアン 価格硬直性へのミクロ的基礎付け マンキュー

[編集] 二大経済観

ケインズ革命によってマクロ経済観に大きな二つの断裂が生じた。以下従来の古典派・新古典派経済観とケインズ経済観の重要な相違をまとめた。

現実経済観 古典派・新古典派 ケインズ
生産 自然率生産水準 現実生産水準
  • GDP Gap の存在
失業 完全雇用(自然)失業率 不完全雇用失業率
貨幣 価格伸縮的ゆえ実質変数に無影響
⇔古典派の二分法・貨幣数量説
  • <math>MV=P\overline Y </math>
価格硬直的ゆえ実質変数に影響
  • <math>MV=\overline PY</math>
利子 資本市場(投資貯蓄需給)
⇒自然利子率
貨幣市場(貨幣需給)⇔流動性選好理論
⇒現実利子率
需要 ワルラス法則(予算制約)下の効用最大化解
  • <math>Y(p)=\Sigma \frac{a}{a+b}\frac{m}{p}</math>
  • <math>s.t. \ \begin{cases}U(y,x)_{MAX}=y^ax^b\\p(y-y_w)+q(x-x_w)=0\end{cases}</math>
生産物市場体系と貨幣市場体系の連立解
  • <math>Y(p)=\alpha +\frac{\beta }{p} </math>
  • <math>s.t. \ \begin{cases}Y=C(Y)+I(i)+G\\L(i,Y)=m/p\end{cases}</math>
供給 利潤最大化及び費用最小化解
  • <math>p(y)=MC(y) \left\{ =AC(y) \right\}</math>
労働市場に関する諸モデル
  • <math>Y(p) = \alpha (P - \overline P)</math>

[編集] ケインズ的分析

  • 国民経済計算
ケインズは分析を容易にするためにマクロ変数間のつながりを重視した。
国民所得は <math>Y=C+I+G+(EX-IM)</math>という国民所得恒等式によって表される。
上式は左から順に、所得消費投資(在庫投資を含む)、政府支出、純輸出(輸出マイナス輸入)である。
所得面、生産面、分配面で見た国民所得は同一であるとする三面等価が成立する。
マクロ変数の中でも消費や投資については、消費関数、投資関数に関する諸議論がある。
  • 閉鎖経済下の一般均衡分析
IS-LMモデルから需要関数が導かれる。
労働市場分析から供給関数が導かれる。労働者錯誤モデル、不完全情報モデル、硬直賃金モデルなどのモデルがあり、ルーカスが唱えた不完全情報モデルに基づく供給関数はルーカス型供給関数といわれる。
IS-LM分析を短期、総需要総供給(AD-AS)分析を長期と位置付ける場合が多い。この含意は、ケインズ経済観では需要面のショックが短期的に有効であるものの、供給面も考えた総需給分析では予測が付かないということである。
開放経済下の一般均衡分析は国際マクロ経済分析と呼ばれる。
マンデル・フレミングモデルと呼ばれる利子率が世界利子率に固定されているという単純な仮定をおいた小国開放経済下のIS-LM分析によって、簡単な政策分析ができる。IS-LM-BP分析と呼ばれる経常収支曲線を追加した分析のようにIS-LM分析は開放経済に様々な形で応用されている。
為替レート決定理論の中でもアセットアプローチは、ケインズ的分析である。
ケインズ門下のハロッドやドーマーによって唱えられた成長理論がケインジアンの経済成長理論である。
市場の不完全性を重視するケインズ経済学の流れを引継ぎ、現実成長率が保証成長率から乖離すると、その乖離が発散するというナイフエッジ定理を主張する。

[編集] 非ケインズ的分析

  • 閉鎖経済下の一般均衡分析

新古典派

消費者の効用最大化問題からマーシャルの需要関数が、支出最小化問題からヒックスの補償需要関数が導かれる。これら個々の消費者の需要関数の和が総需要関数となる。
企業の利潤最大化問題から供給関数が導かれる。これら個々の企業の供給関数の和が総供給関数となる。長期的に供給関数は垂直となるので、需要ショックは意味を成さない。

新しい古典派

一般均衡マクロ動学モデルと呼ばれるラムゼイモデル等によってカリブレーションが行なわれている。これはソローモデルに効用最大問題から導かれる消費関数といったミクロ的基礎を与えたものである。
為替レート決定理論の中でも購買力平価説、すなわちマネタリーアプローチは古典派的分析である。
  • 経済成長理論
ソローモデルと呼ばれるソローによって唱えられた新古典派成長理論が通説となっている。これは国民所得恒等式に生産関数と差分の概念を取り入れたものである。

[編集] 参考文献

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[編集] 関連項目

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