ファンタジア
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『ファンタジア』(Fantasia)は、1940年のアメリカ映画。アニメーション映画。ステレオが利用された最初の映画。スピーカーを劇場の左右前後ろに配置し、それぞれのスピーカーごとに違う音を出して、音の立体感を出した。日本語字幕版では2.0chで前のみのステレオ。
ディズニー製作。1940年11月13日封切。日本での公開は1955年9月23日で、日本の著作権保護期間は50年(2003年の法改正により現在は映画の公開後70年に延長)であるため、既に保護期間は満了し、パブリックドメインとなった。2006年、有限会社アプロックは「ファンタジア」など保護期間が満了したディズニー映画のビデオソフトを、ドン・キホーテ等の量販店にて販売開始した。
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[編集] 概要
[編集] 製作過程
ウォルト・ディズニーは一連のミッキーマウス映画を製作しつつ、ミッキー映画と全く正反対の、芸術性の高い作品を製作することを願っていた。その手始めとしてSilly Symphony(シリー・シンフォニー)シリーズが誕生した。しかし、ウォルトはこれにも満足せず、さらに自身初の大作「白雪姫」を1937年に世に問うたことにより、ウォルトはかねてから願っていた「芸術性の高い映画」の目標を、完成度が高かった「白雪姫」よりもさらに上に置くことに決心した。そこで、ウォルトはSilly Symphonyの方向性を多少は維持しつつ、物語性のある音楽作品を作ることになり、その筆頭候補として「魔法使いの弟子」を題材に取り上げることにした。ウォルトはまた、権威付けのために高名な指揮者を起用することを考え、レオポルド・ストコフスキーが指名された。レストランで意気投合した後、1937年頃から製作を開始した。
「魔法使いの弟子」製作の際、従来どおりミッキーが主役に選ばれたことにストコフスキーは異を唱え、新しいキャラクターを作ることを主張したが、パントマイムだからということでミッキーに落ち着いた。こういうことがありつつ製作は進んでいったが、1年かけて「魔法使いの弟子」を完成させた時、製作費用が今までと桁違いなことにさすがのウォルトもたじろいだが、初心を忘れることはなかった。その際、ウォルトは作品をコンサートのような感じにすることを思いつく。音楽評論家ディームス・テーラーが顧問に迎えられ、ディスカッションの結果100枚以上のレコードから8曲の名曲が選ばれた。曲順はいろいろ検討されたものの、オープニングに「トッカータとフーガ ニ短調」を持ってくることに異を唱える者はいなかった。
プログラムは次の通り。()はおおよその所要時間。
- 1:「トッカータとフーガ ニ短調」(9:22) - J.S.バッハ
- 標題音楽ではないこの曲を起用した経緯については、ウォルトが「抽象的な音楽もやってみよう」と提案したことによる。そのため、抽象画の映画を作り、当時アメリカに移住していたオスカー・フィッシンガーの意見を取り入れつつ製作された。
- 2:組曲「くるみ割り人形」 - チャイコフスキー(13:30)
- 最初の2楽章はカットされ、また曲の順序も一部入れ替わっている。
- 3:「魔法使いの弟子」 - デュカス(9:17)
- 4:「春の祭典」- ストラヴィンスキー(22:28)
- 舞台を地球創世記から恐竜の時代に置き換えている。また、原曲よりも多少短くされている。
- 休憩・「サウンド・トラック」の紹介。休憩は、1990年発売のバージョンおよび、現在日本で発売されているDVDではカットされている
- 5:「田園交響曲」 - ベートーヴェン(22:00)
- 舞台をギリシャ神話の世界に求めている。第4楽章以外は短縮されている。
- 6:「時の踊り」 - ポンキエッリ(12:13)
- 7:「はげ山の一夜」 - ムソルグスキー(7:25)
- 8:「アヴェ・マリア」 - シューベルト(6:27)
また、ドビュッシー作曲の「月の光」も作品の中に入るはずだったが製作段階で削除された。作品中で公開時に在世していたのはストラヴィンスキーのみ。
しかし、当時ストラヴィンスキーは米国に著作権を持っていなかったため、ディズニー側はストラヴィンスキーに『春の祭典』の使用許可を取る必要が無く、しかも大幅にカットして使用した。ストラヴィンスキーが米国に移住した後、しばらく自作の著作権取得に奔走していたのはこれが原因のひとつといわれている。
11人の監督、60人のアニメーター、103人編成のオーケストラなどなど、投入されたスタッフはのべ1000人、書き上げられた原画100万枚、録音したテープの量42万フィート(うち映画で実際使用されたのは1万8千フィート)、製作日数3年と前例のないスケールでの製作となった。完成間近になって、ストコフスキーのアイデアでタイトルが「ファンタジア」と命名された。
[編集] 録音についてのメモ
サウンドトラックのレコーディングは1939年4月に行われた。曲目のうち、「時の踊り」と「アヴェ・マリア」はストコフスキーの唯一の録音であり、「魔法使いの弟子」と「春の祭典」は最後の録音、「田園」と「禿山の一夜」は最初の録音である。トッカータとフーガニ短調および「くるみ割り人形」は十八番中の十八番である。
[編集] 封切後
1940年11月13日にニューヨークのブロードウェイ・シアターで封切されたが、評価は微妙なところであった。というのも、雑誌「タイム」が3ページにわたって特集を組んだが、映画扱いされることはなく音楽欄で作品が論評されていた。「田園」と「春の祭典」に『作品従来のイメージとかけ離れている』という批判が集中した。また、従来からいたディズニー映画のファンですら作品に戸惑いを見せたという。さらに、この作品を上映するのに必要な装置にかかる費用が莫大だったため、上映できる映画館が非常に限られていたこともあり、収益面は初めから諦めていた。もっとも、ウォルトは「タイム」でのインタビューで「これは私が死んでからもずっと楽しんでもらえる作品だ」とコメントしている。事実、ウォルトが亡くなって3年後の1969年に再上映されて以来、ようやく金になる作品になった。なお、ウォルトはこの「ファンタジア」を公開するたびに曲を入れ替えるという「演奏会形式」を目指していたが実現できなかった。
1940年度のアカデミー賞では、ウォルトとストコフスキーが特別賞を受賞している。しかし、当時のアカデミー賞にはアニメ映画に対する部門賞はなく、純粋に作品に対してアカデミー賞を授けられたとは言い難い。
[編集] 現状
この作品は、あまりの長さゆえに幾度もカット及び順序の変更が行われているが、1990年のリリースで上記のプログラムに整えられた。なお、2000年にオリジナルに極めて近いバージョンが上映され、それに基づくDVDも発売されている(海外版のみ)。現在日本で入手できるDVDは1990年リリース版によるもの(廉価版もこれと恐らく同一)だが、こだわり派のファンは海外版をわざわざ購入する者もいる。なお、日本版と海外版は何が違うのかについては、主だったところについては以下のとおりである(「ファンタジア2000」情報による)。
- ストコフスキーの声(日本版:別の人物に吹きかえられている。海外版:そのまま)
- ディームズ・テーラーの解説(日本版:ズタボロにカット。海外版:ほぼオリジナル)
- 休憩(日本版:カット。海外版:ほぼそのまま)
ちなみに冒頭に言及したアブロック発売のパブリックドメイン版ファンタジアでは、ディームス・テーラーの解説やストコフスキーの声はオリジナルだが休憩はカット、また映画終了後のスタッフロールがない。
編集段階でカットされたドビュッシーの「月の光」の映像は、その後再編集と再録音がなされてオムニバス「メイク・マイン・ミュージック('46)」中の一編「青いさざなみ」として日の目を見ることとなった。一方で映像の一部が欠落してしまった為、オリジナルの形での復元は長い間実現しなかったが、1992年にオリジナルのワーク・プリントが発見され、短編作品として当初の形通りに蘇った。この短編は日本版DVDにも特典映像として収録されている。
[編集] スタッフ
- 演奏:フィラデルフィア管弦楽団
- 指揮:レオポルド・ストコフスキー
- ナレーター:ディームズ・テーラー
- 声の出演:ウォルト・ディズニー
- アドヴァイザー:オスカー・フィッシンガー
[編集] 登場キャラクター
[編集] くるみ割り人形
- しずくの精
- ホップ・ロウ
- マッシュルーム・ダンサー
- 花の踊り子
- 金魚
- あざみの少年たち
- らんの少女たち
- 秋の精
- とうわたの踊り子
- 霜の精
- 雪結晶の精
[編集] 魔法使いの弟子
- ミッキー・マウス
- イェン・シッド
- ほうき
[編集] 春の祭典
- 恐竜たち
[編集] 田園交響曲
- ベガサス
- ブルダス
- メリンダ
- バッカス
- ジャッカス
- ゼウス
- バルカン
- アポロン
- ディアナ
- モーフェウス
- キューピッド
- ケンタウルス
[編集] 時の踊り
- ミリ・ウパノヴァ
- ヒヤシンス・ヒッポ
- エレファンチン
- ベン・アリ・ゲーター
[編集] はげ山の一夜
- 悪魔
- 幽霊
- チェルナボーグ
[編集] アヴェ・マリア
- 巡礼者
[編集] 主な編曲箇所
本作では、アニメーションとあわせる都合上、編曲した箇所が少なからずある。下にその一部を紹介する。
[編集] トッカータとフーガ ニ短調
- ストコフスキーによる編曲版。(編曲版との比較)
- ハープ独奏部分のチェレスタ・フルートが無い?
[編集] 組曲「くるみ割り人形」
- 曲順の入れ替わり。
- 金平糖の踊り→中国の踊り→足笛の踊り→アラビアの踊り→トレパーク→花のワルツ
[編集] 交響的スケルツォ「魔法使いの弟子」
- ストコフスキーによる編曲版。(原曲との比較)
- 冒頭のヴィオラ、チェロ、ヴァイオリンのピツィカートのカット。
- ミッキーが箒に魔法をかけるシーンの直前部分の延長。
- 箒が水を汲むシーンのホルンの応答が二回から一回になっている。
[編集] 春の祭典
- 曲順の入れ替え。
- 第一場序奏→春のきざし→乙女達の踊り→誘拐→第二場序奏→乙女達の神秘的な集い→いけにえの賛美→祖先の呼び出し→祖先の儀式→大地への口付け→大地の踊り→第一場序奏冒頭部
[編集] 交響曲第六番「田園」
- 第四楽章以外の短縮。
[編集] 時の踊り
- 「昼の時の踊り」の編曲&繰り返し。
- 四箇所(ダチョウが転ぶシーン、ワニにカバが飛びつくシーンで二回、最後に扉が落ちるシーン)に大太鼓が入っている。
[編集] 禿山の一夜
- ストコフスキーによる編曲版。(原曲との比較)
- 冒頭部の弦トリルの追加。
- 木管で奏される早いパッセージが弦で演奏される。
- 弦のハーモニックスの追加
- シロフォンの追加
- 銅鑼の一撃にアクセントが付いている。
- 終結部に合唱が入る(次曲への導入)
[編集] アヴェ・マリア
- 歌曲からの移調(ト長調)、編曲
[編集] 関連項目
原題は ALLEGRO NON TROPPO。ディズニーのものとは違い、大人向け。実写のシーンを狂言回しに、色々な作風のアニメーションが6作繋がった作品である。
ファンタジア上映から60年後、ウォルトの甥ロイ・ディズニー製作総指揮、ジェームズ・レヴァイン指揮、シカゴ交響楽団演奏による、新たなファンタジアが制作された。前作の中から「魔法使いの弟子」をデジタルリマスター版で復活させ、新たにベートーヴェン作曲「交響曲第5番・運命」、レスピーギ作曲「ローマの松」、ガーシュイン作曲「ラプソディー・イン・ブルー」、ショスタコーヴィチ作曲「ピアノ協奏曲第2番第1楽章」、サン=サーンス作曲「動物の謝肉祭より終曲」、エルガー作曲「威風堂々第4番・第2番・第3番・第1番」、ストラヴィンスキー作曲「火の鳥」を加えた8曲で構成されている。
「魔法使いの弟子」より箒がディズニーキャッスルの使用人として登場。「はげ山の一夜」より「ファンタジアの魔人」という名前でチェルノボーグが登場する。ファイナルミックスではチェルノボーグとの戦闘時に、「はげ山の一夜」をアレンジしたものが流れる。
「魔法使いの弟子」より箒とイェン・シッドが登場している。連携技にも「ファンタジア」という名前のものがある。
- ミッキーの大演奏会
1935年公開の短編アニメーション。こちらのほうが先に作られているが、「ファンタジア」で、指揮者レオポルド・ストコフスキーに見込まれて、この役を得たという裏設定がある。
[編集] 参考文献
- デヴィッド・R・スミス『ウォルト・ディズニー《ファンタジア》ライナーノーツ』ブエナ・ビスタ&ポニーキャニオン、1990年。
- 日野康一「画期的な世界最初のステレオ録音」『ウォルト・ディズニー《ファンタジア》ライナーノーツ』ブエナ・ビスタ&ポニーキャニオン、1990年。

