多言語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
多言語(たげんご)とは、複数の言語が並存すること。もしくは英語の「multilingual」 の訳。また、一個の人間、国家・社会、文書、コンピュータ、ウェブサイトやソフトウェアなどが、複数個の言語に直面したり対応したりすること。 以下に、多言語の例を列挙する。
- ある人間が複数の言語を使用可能なとき、それを多言語話者あるいはポリグロットと呼ぶ。
- 地球規模で展開するインターネットは、多言語の国際組織のような多言語社会である。
- 多言語対応(多言語化, m17n; multilingualization)
目次 |
[編集] 多言語話者
多言語話者 (multilingual, polyglot) は、二種類以上の言語能力を持っている人のことである。そのうち、二種類の言語を扱う者をバイリンガル (bilingual)、三種類をトライリンガル(trilingual)と呼ぶ。
実際、複数言語を同等に扱うことができる人はまれで、バイリンガル・マルチリンガルは、状況・話題・聞き手などに応じて言語を使い分けているのが普通である。ポリグロットどうしの一連の会話で複数の言語を織り交ぜる現象(コード・スイッチ)が観察され、それに関する研究も盛んである。
一人の人間が多言語 (multilingual) であるのは、連続体を形成する程度に近い言語(方言・姉妹言語)間を除けば二種類だけでも困難であることがおおい。言語は子供のうちでないと習得が難しい(臨界期説)ため外国語の習得には若い方がよいという主張もあるが、定説には至っていない。また、幼すぎても母語の確立ができないというジレンマがある上、外国語を習得した人材が相次いで海外流出してしまうといった深刻な社会問題に発展する可能性も高い。
ある個人が多言語話者になる要因としては、個人的なものと社会的なものの2つがある。前者の例としては、日本のような圧倒的モノリンガル社会にやってきた移民や出稼ぎ労働者が当てはまる。後者の事例としては、スイスやベルギーなど複数の言語共同体が共存している場合である。しかし、こういった多言語状態を政府は嫌うのが常で、言語政策・言語計画の名の下に「標準語」の策定・普及を推し進め、方言・少数(移民)民族の言語を抑圧し排除されるケースが多々見られる。また、ドイツ語圏やアラビア語圏のように同言語の標準語(公共・教育など)と地方方言(日常生活など)に機能的優劣が付けられた社会も存在し、ダイグロシアと呼ばれる。
ちなみに、一言語のみ習得している者はモノリンガル(monolingual)、二言語の環境にいたものの母語と二言語目の両方において年齢に応じたレベルに達していない者はセミリンガル(semilingual)と呼ばれる。近年セミリンガルという言葉が否定的だという意見が増え、ダブル・リミテッド(double limited)という名称が広まりつつある。ダブル・リミテッドは、日本において帰国子女や日本に住む外国人児童の間に散見されるため、とくに教育関係者の懸案事項となっており、言語学や教育学の専門家による研究が広く行われている。<ref>コロラド大学内 日本語教師会 『語彙獲得達成レベルにおける第一言語と第二言語の相関性:継承日本語の観点からの考察』</ref><ref>母語・継承語・バイリンガル研究会『事例4. 帰国子女教育の現場から』(Word形式ファイル)</ref> 言語獲得は環境および年齢差・個人差が大きい上に、日常会話能力(BICS)はバイリンガルであっても、抽象思考や学習のための言語能力(CALP)がダブル・リミテッドの状態にあり教科学習に支障をきたす者もいる。何をもってバイリンガル、何をもってダブル・リミテッドと判断するのかは未だ曖昧である。
[編集] 2つ以上の公用語が存在する国
- 北米
- アジア
- インド:ヒンディー語の他、英語など多数あり、その数は21にも及ぶ。
- シンガポール:英語・マレー語・中国語(北京語)・タミル語
- 台湾(中華民国):中国語(北京語・客家語・台湾語)
- 中華人民共和国:中国語(北京語)であるが、数多くの方言(上海語・福建語・広東語など)がある。
- 香港(中華人民共和国):英語・中国語(広東語)
- マカオ(中華人民共和国):ポルトガル語・中国語
- フィリピン:フィリピノ語・英語
- スリランカ:シンハラ語・タミル語
- 東ティモール:テトゥン語とポルトガル語の他、インドネシア語、英語、多数の部族語がある。
- フィリピン:フィリピノ語・英語
- ブルネイ:マレー語・英語・中国語
- パラオ:パラオ語・英語など。(国ではないがアンガウル州は世界で唯一日本語を公用語としている)
アフリカでは、大多数の国々が二つ以上の公用語を有する。この他、公用語ではないが多種多様な言語が用いられている国や地域がいくつもある。
[編集] 主な多言語話者
- バイリンガル
- 稲葉浩志(B'z)、安藤優子、木村太郎、伊藤由奈(アメリカ国籍)、細美武士(ELLEGARDEN)、筑紫哲也、稲本潤一、VERBAL、Crystal Kay、ヒロコ・グレース、桐島かれん、古内東子、西田ひかる、早見優、YOSHIKI、石田純一、ジミーMackey、JESSE(RIZE)、宇多田ヒカル、リサ・ステッグマイヤー、長谷川滋利、江國香織、小林克也、鳥越俊太郎、安河内哲也、関根麻里、安良城紅、新井麻希、木佐彩子、長谷川潤、野田聖子、緒方貞子、神田昌典、木幡美子、山本未來、ジャスミン茉莉花、ヨーコ・ゼッターランド、セイン・カミュ、パトリック・ハーラン、デーブ・スペクター、ケント・デリカット、ケント・ギルバート、スティーヴン・セガール、クリス・ペプラー:日本語・英語
- AI:英語・日本語(鹿児島弁と英語しか喋れないとしている)
- 葉千栄、王雪丹、蓮舫、鳳蘭、陳舜臣、森迫永依:日本語・北京語
- 政井マヤ、星誕期偉真智、城田優:日本語・スペイン語
- 三浦知良、田中マルクス闘莉王、カルロス・トシキ、セルジオ越後、マルシア、小野リサ:日本語・ポルトガル語
- 高原直泰、田嶋幸三、奥寺康彦、姜尚中:日本語・ドイツ語
- 米原万里:日本語・ロシア語
- 朝青龍明徳、白鵬翔、安馬公平、時天空慶晃、鶴竜力三郎、旭天鵬勝、朝赤龍太郎、龍皇昇:モンゴル語・日本語
- SunMin、ユンソナ、ヘリョン、大貫亜美、草彅剛、黒田勝弘、豊田有恒、キム・ヨンジャ、張本勲、宣銅烈、盧廷潤、趙成珉:韓国語・日本語
- RAIN:韓国語・英語
- トライリンガル
- BoA、ソニン、ミシェル・ウィー、ユンナ、SE7EN、春日王克昌、沢知恵:韓国語・英語・日本語
- ボビー・オロゴン:ヨルバ語・英語・日本語(実際にはもっと多くの言語を喋れるとの説もある)
- 郭源治:アミ語・北京語・日本語
- 黄文雄、欧陽菲菲、謝雅梅、大豊泰昭:台湾語・北京語・日本語
- はな:北京語・英語・日本語
- LISA、SHEILA:日本語・英語・スペイン語
- 渡部昇一:日本語・英語・ドイツ語
- 山本香苗:日本語・トルコ語・カザフ語
- 小池百合子、フィフィ:日本語・アラビア語・英語
- ルビー・モレノ、マリア・テレサ・ガウ:日本語・タガログ語・英語
- クリステル・チアリ、マーク・パンサー、滝川クリステル、荻野アンナ:日本語・英語・フランス語
- 4ヶ国語以上の言語を話す著名人
- 中田英寿:日本語・イタリア語・英語・スペイン語
- アグネス・チャン:広東語・北京語・日本語・英語
- 林憶蓮:広東語・上海語・英語・北京語
- 周華健:広東語・英語・北京語・台湾語
- 金美齢、ビビアン・スー:北京語・台湾語・日本語・英語
- Gackt:日本語・英語・フランス語・北京語
- 山本モナ:日本語・英語・イタリア語・ノルウェー語
- デヴィ・スカルノ:日本語・フランス語・英語・インドネシア語
- 金城武、チェン・ボーリン:北京語・広東語・台湾語・日本語・英語
- クロード・チアリ:英語・フランス語・日本語・ユダヤ語・スペイン語
- ジュディ・オング:日本語・英語・スペイン語・台湾語・北京語
- ゾマホン・ルフィン:フォン語・フランス語・日本語・英語・北京語
- ベアテ・シロタ・ゴードン:ロシア語・ドイツ語・フランス語・英語・ラテン語・日本語
- デルチャ・ミハエラ・ガブリエラ:ルーマニア語・英語・日本語・スペイン語・ポルトガル語・フランス語
- オスマン・サンコン:フランス語・スースー語(ギニアの土着語)・日本語・英語・スペイン語・イタリア語
- 舛添要一:日本語・英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語・ロシア語
- フローラン・ダバディー:フランス語・イタリア語・スペイン語・ポルトガル語・英語・日本語・韓国語
- 古歩道ベンジャミン:英語・スペイン語・フランス語・イタリア語・ポルトガル語・北京語・日本語
- ピーター・フランクル:ハンガリー語・英語・ドイツ語・スウェーデン語・フランス語・スペイン語・ロシア語・ポーランド語・日本語・韓国語・北京語
[編集] 参考文献
<references />
[編集] 関連書籍
- Crystal, David (2003), A Dictionary of Linguistics & Phonetics, 5th edition, Blackwell. p. 51 ISBN 0631226648
- Columbia University Press (2004), bilingualism in The Columbia Encyclopedia, 6th edition, Columbia University Press.
- Trask, R. L. (1998), Key Concepts in Language and Linguistics, Routledge. pp. 30-1 ISBN 0415157420
- JACETバイリンガリズム研究会 [編] (2003)、『日本のバイリンガル教育』、三修社。ISBN 4384040067
- 唐須 教光 (2002)、『なぜ子どもに英語なのか』、日本放送出版協会。ISBN 4140019565
- 山本 雅代
- (1991)、『バイリンガル』、大修館書店。ISBN 4469243078
- (1996)、『バイリンガルはどのようにして言語を習得するのか』、明石書店。ISBN 4750308846
- (2000)、『日本のバイリンガル教育』、明石書店。ISBN 4750313246
- 角山 富雄、上野 直子 [編] (2003)、『バイリンガルと言語障害』、学苑社。ISBN 4761403047
- 櫛田 健児 (2006)、『バイカルチャーと日本人』、中公新書ラクレ。 ISBN 4121502124
[編集] 関連項目

