スーパーコンピュータ

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シリコングラフィックス社のスーパーコンピュータ

スーパーコンピュータSupercomputer、略称:スパコン)とは、内部の演算処理速度がその時代の一般的なコンピュータより非常に高速な計算機(コンピュータ)のこと。HPCサーバ(High Performance Computing Server)と呼ばれることもある。

メインフレームワークステーション等を入出力用の端末とし、計算処理だけを行うのが主な役割で、計算科学CAEといった、膨大な計算処理を必要とする用途に利用される。


目次

[編集] 要約

コンピュータの歴史は性能への挑戦の歴史である。そのフラグシップであるスーパーコンピュータ(HPCサーバ)は、一国の国力を示す指標であるといってよい。なぜならば、計算能力は科学技術の基礎であると同時に、情報技術の基礎でもあるからである。計算能力の向上によってシミュレーションの精度が上がれば、その効果は科学技術全般だけでなく、製造業全般の隆盛にまで及ぶ。(後述の自動車産業のCAE用計算機保有台数一覧参照)

本稿では、過去から未来までを俯瞰する形でスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の技術や理論、方向性について述べる。なお、スーパーコンピュータ(HPCサーバ)の歴史に関しては、産業史的内容をスーパーコンピュータ産業史に、技術史的内容と専門的技術面の詳細はスーパーコンピュータ技術史に別稿を立てて論じる。

[編集] 定義

コンピュータ自体の性能向上が極めて速いため<ref>コンピュータの性能向上を示す指標にゴードンのムーアの法則がある</ref>、スーパーコンピュータの定義は時代ごとに異なっている。一般的に、その時代の最新テクノロジーが投入された最高速なマシンを指す。現時点では一般的なサーバ機よりも浮動小数点演算性能が国際単位系で1単位(103)位速いコンピュータをスーパーコンピュータ(HPCサーバ)と呼ぶことが多い。 具体的には汎用サーバはG(ギガ)FLOPSレベルであり、スーパーコンピュータ(HPCサーバ)としてはT(テラ)FLOPSレベルとなる。FLOPSとは、1秒間に浮動小数点数演算が何回できるかを表す単位である。

日本国内の官学などの国家レベルでの定義としては、日本の文部科学省の科学技術・学術審議会では2005年現在、1.5TFLOPS以上の演算性能を持つコンピュータを政府調達における「スーパーコンピュータ(HPCサーバ)」と位置付けている<ref>http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/gijiroku/002-2/05112901.htm</ref>。


[編集] アーキテクチャ

現代のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)においては、以下のような過去の最先端技術が普遍化され取り入れられている。

それぞれの要素技術について、この段で追っていく。

[編集] ハードウェア

1980年代から1990年代初頭までは、処理対象のデータを連続的に演算器に流し込み同一演算を一括で行う、いわゆるベクトル計算機がスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の中心であったが、1990年代中盤以降、CPUのキャッシュにあるデータをそれぞれ逐次的処理する汎用CPU(スカラープロセッサ)を用いた超並列マシン等が主力となってきている。 2005年現在では、あまりスーパーコンピュータの呼称は使われず、ハイパフォーマンス・コンピューティング (HPCサーバ)と呼ばれる。

その形態は、コンピュータ・クラスターであり、システム構成により、超並列機や超並列クラスター、グリッドコンピュータなどと個別の呼称で表されるようになってきている。

また、特定処理計算機といわれ、特定の演算処理に特化して強化されたスーパーコンピュータ(HPCサーバ)もあり、この計算機も、並列処理が強化されつつある。

[編集] 基盤ソフトウェア

1970年代前半のCrayによるスーパーコンピュータ黎明期から、研究者が好むOSとして、ベル研究所で開発され、その後多数の派生版が誕生したUNIX系OSが使用されてきた。これは当初、ライセンスフリーなオープンソース的OSであったことが最大の理由である。AT&Tは当初、UNIXへのライセンス料を賦課せず、ソースコードの頒布に当たってはメディアへのコピー料金しか徴収しなかった。このため、各大学の研究者達に広まり、企業へ就職後もそのまま慣れ親しんだOSを利用する事が多かったからである。

さらに、UNIXはそれまでのアセンブラにより記述されたOSと異なり、高級言語としてのC言語によって書かれており、機種間の移植がし易いため、新規ハードウェアを利用する際に研究者の研究時間を圧迫せずに使用できるという点も幅広い使用につながった。その上、UNIX(Linux)上でのライブラリなどカスタマイズの利便性やチューニング項目の多様性もあり広がったものと考えられる。

こういった多くの利点から研究者用OSとして広まったスーパーコンピュータ(HPCサーバ)でのUNIX利用のトレンドであるが、現在もほぼ全てのスーパーコンピュータ(HPCサーバ)においてUNIX/Linux系のOSが使用されている。(SC06での調査によると、98.75%がUNIXの派生OSであるとの結果)

また、一部には安価で汎用的なPC機器の使用を目的にWindows系のOSも提供されつつある。(その他補足事項参照)

[編集] プロセス・スケジューリング

通常のUNIXにおけるラウンドロビン方式だけでなく、優先度の高い計算処理にCPU資源を強制的に割り当てるギャングスケジューリング方式もサポートしたものが多い。

[編集] 使用ライブラリ及び言語

スーパーコンピュータ(HPCサーバ)ユーザーは、整備されたライブラリ群及びフレームワークを使用して、行儀の良いアプリケーションを開発する必要がある。そのため、比較的枯れた言語・ライブラリを使用する事が多く、計算の速いFortranコードや、1980年代後半以降メジャー化したC及びC++によるコードを使用するユーザーが増えている。

[編集] インターコネクト

コンピュータ・クラスターに参加している個々のコンピュータの事をノードと呼び、他ノードとの通信により処理分散や処理結果の受け渡しを行っている。この通信機構をインターコネクト(系間接続)と呼び、Gigabit EthernetやInfiniBandなどが使用されている。これらインターコネクトを使用したノード間通信方式の一例をあげると、MPIなどが著名である。

超並列マシン及び並列クラスター構成をとるスーパーコンピュータ(HPCサーバ)においても、この各ノード間の通信データスピードがボトルネックとなるため、並列化の研究と共にハードウェア面/ソフトウェア面の両面でデータ交換スピード向上の研究が進められている。

現状、この通信スピードは2005年11月にIBMの研究所による14GB/chが最高速であったが、2006年3月現在、「NEC」及び文部科学省(旧:科学技術庁)所管の「独立行政法人理化学研究所」による次世代HPC構想の研究にて25GB/chが記録されている。

[編集] 歴史

スーパーコンピュータ(HPCサーバ)の歴史は、高性能コンピュータの軍事利用/軍事技術としての側面を切り離して語ることができない。現在もスーパーコンピュータ(HPCサーバ)はこういった政治的な影響から逃れることはできず、欧州でのスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の採用などについては、性能や利便性という問題ではなく、その時のその国家の政治事情で採用ベンダが決定している。

[編集] 著名なHPC一覧

[編集] 表-1 日本国内(2006年4月現在)

設置場所・研究所 名 称    アーキテクチャ 理論演算性能 CPU OS 提供ベンダ 基本仕様作成先,設計元 備 考     
東京工業大学 TSUBAME グリッド型スカラ 85TFLOPS Opteron Linux NEC,
Sun
東京工業大学学術国際情報センター Globusによるグリッド計算機。学生利用を念頭にグリッド構成を任意に変更できる。
高エネルギー加速器研究機構 量子色力学格子シミュレータ スカラ 57.5TFLOPS PowerPC 440、POWER5 CNK/Linux
AIX
日立,
IBM
高エネルギー加速器研究機構理論研究部 量子(色)力学及び原子核構造理論シミュレーションを行うためのHPC。
海洋研究開発機構 地球シミュレータ ベクトル 45TFLOPS 独自ベクトルチップ SUPER-UX NEC 環境研究所,気象研究所,東京大学 ベクトル型と最適化されたフレームワークによって生じる、実効性能が非常に高い計算機システム。システムの規模から、超巨艦主義と批判されることも多い。
気象庁 COSMETS 擬似ベクトル型スカラ 21.5TFLOPS POWER5 AIX 5L 日立 気象庁 ViVAによる擬似ベクトル化。システムを構成する各CPUを各計算マトリックス毎に割り振る仕組みを活用することで、気象モデルへの適合性を高めたフレームワークを採用。
海洋研究開発機構 SGI Altix 4700 スカラ 16.3TFLOPS Itanium2 SUSE Linux 日本SGI,</br>NEC 環境研究所,気象研究所,東京大学 地球シミュレータの隣に設置され、ベクトルタイプとの連動を想定。デュアルコアのItanuim2を1280個搭載。
筑波大学 PACS-CS スカラ 14.3TFLOPS Xeon Linux/SCore 日立,
NEC,
富士通
筑波大学 マトリックス・グリッド型超並列専用計算機。帯域幅と省電力を重視。

(注)CSとはComputational Scienceの略

宇宙航空研究開発機構 NSシステム(数値風洞システム第3世代) スカラ 9.3TFLOPS SPARC64 V(富士通製) Solaris 富士通 航空宇宙技術研究所 1世代前のHPC。現在のグリッドシステムに相当するアーキテクチャを採用。特に、各格子点毎にナビエ・ストークス方程式を処理するために特化したフレームワークを採用したことで有名。第1・第2世代において世界最速記録を何度も保持し、複数回ゴードン・ベル賞を受賞した。
東京大学/国立天文台 GRAPE-6 専用計算機 64TFLOPS 独自チップ Linux/Unix GRAPE-6ボード発売中 東京大学理学部 専用計算機。複数回ゴードン・ベル賞を受賞。
東京大学/国立天文台 GRAPE-DR 専用計算機 2PFLOPS (達成目標値) 独自チップ Linux/Unix NTTコミュニケーションズ,富士通,日立製作所東京大学理学部 専用計算機。現在、データベースシステム(そもそも、DRがデータベースの意味)とGRAPEシステムを結合したシステムのデモ機を稼動中。先日のCERNとの間での高速インターネット実験でも活用した。今後は、GRAPEチップが、年度毎に予定通り納入されれば、2008年ごろにはPetaFLOPSの大台に乗る予定。ちなみに、現在は0.5PFLOPS(2006/10現在)。
理化学研究所横浜研究所 Protein Explorer 専用計算機(MDGRAPE-3超並列機) 1PFLOPS (達成目標値は2PFLOPS) 独自チップ+Xeon Linux 日本SGI
,Intel
理研戎崎研究室 専用計算機。2006/06現在の演算性能。障害ノードの復旧後はさらに増速予定。

MDGRAPE-3 x 4808チップと Xeon x330コアの組み合わせにより構成。

<注意>一部には構築中のものも含まれている。また理論演算性能とは、単純な加算・減算・乗算・除算を単精度にて行った時の性能である。なぜ、単精度となるのかといえば、メモリーに格納される浮動小数点のビット数がバス幅と同様となり、メモリー・CPU間の転送速度が最大となるためである。例外は、ベクトル型である。ベクトル型の場合には、倍精度以上のバス幅を持ったパラレルバスを持っているため、倍精度浮動小数点も1サイクルで転送が可能なため、倍精度の理論演算性能となっている。現在ベクトル型を生産しているのは日本電気だけとなっている。

[編集] 表-2 アメリカ合衆国

設置場所・研究所 名 称    アーキテクチャ 理論演算性能 CPU OS 提供ベンダ 備 考     
アメリカ国立ローレンスリバモア研究所 Blue Gene/L スカラ 280TFLOPS PowerPC 440 CNK/Linux IBM 組み込みプロセッサFPUを付加
アメリカ NASA Ames研究センター Columbia スカラ 51TFLOPS Itanium 2 Linux SGI AltixをInfiniBandで接続
アメリカ国立サンディア研究所 Red Storm スカラ 101.4TFLOPS Opteron Catamount/Linux Cray XT3として商用化。SC06にて世界2位に。
アメリカ バージニア工科大学 System X スカラ 12.2TFLOPS PowerPC 970 Mac OS X Server バージニア工科大学/Apple Xserve G5をInfiniBandで接続
アメリカ国立ロスアラモス研究所 ASCI White スカラ 7.3TFLOPS POWER3 AIX IBM RS/6000 SP
アメリカ国立サンディア研究所 ASCI Red スカラ 2.34TFLOPS Xeon Catamount Intel Paragonをベースに設計

<注意>アメリカ合衆国における導入基準は性能対コスト比を重視することになっている。

[編集] ベンチマーク評価と実効性能

top500.orgを含むスーパーコンピュータ(HPCサーバ) の評価には多くの問題点がある事が、スーパーコンピュータ(HPCサーバ)を扱うエンジニアや研究者の共通の認識となっている。現top500.orgのスーパーコンピュータ(HPCサーバ)相対評価において使用されるベンチマークテストはLINPACKと呼ばれる1970年代前半に確立されたもので、現在のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の規模/構成に適したものではない。そのため、現時点のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)ランキングTop500の評価基準であるLINPACKベンチマーク評価について、基準ベンチマークとしての見直し論議が活発に行われ、HPC Challenge Benchmarkという新しいベンチマークが提案されている。

また、一つのベンチマーク値でそのシステムの実効性能を表現する事は不可能として、多くの研究者が提言を上げおり、改善が求められる。また、スーパーコンピュータ(HPCサーバ)本来の性能はシミュレーションを実行する場合などの実稼動時の性能を基準と考えるべきであり、スカラタイプとベクトルタイプでは計算する際のデータ投入性能が格段に差があると言われている。

例えば、汎用CPUにより構成されるスカラータイプのスーパーコンピュータ(HPCサーバ)は、そのままの形態で使用すると気象予測において広域予報や長期予報などを行う際、データの連続処理におけるデータ供給能力に限界があり、実効性能が極端に落ちる事が知られている。このため、データの供給方法にハードウェア的/ソフトウェア的に工夫を施し、多量のデータを連続投入できる環境を作り、少しでもベクトルチップの実効性能に近づける努力をしているものが多い。一方、ベクトルチップを採用したNECの地球シミュレータを代表とするベクトルタイプのスーパーコンピュータ(HPCサーバ)は、スカラータイプより高い実効性能を維持する特性がある。

この方式による性能格差の主張には、既存の巨艦型ベクトル型スーパーコンピュータ(HPCサーバ)を使用していた研究者において、ベクトル処理を基本とした既存の処理方法からスカラ処理を基本とした現用の分散処理方法への移行教育や対応が遅れていることからの妄言という指摘もある。

実際にスカラ化への対応には相当数の労力が必要であり、一般の研究者がスーパーコンピュータ(HPCサーバ)でのシミュレーションを行う際、本来の研究自体を圧迫してしまうという矛盾もあり、処理の最適化や処理分散の実装方式についてはもっと省力的で職人的な対応を不要にできるようなプラットホームの発展が求められている。

[編集] 世界各国のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)導入の動き

世界各国でもスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の導入は進んでおり、1990年代初頭のようなアメリカ・日本を2極とした導入数の集中状況は解消しつつある。

[編集] 日本

[編集] 潮流

日本におけるスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の流れは、官学主導による国策としての大型スーパーコンピュータ(HPCサーバ)構想と、産業界及び産学協同のより実生活や一般的な産業面に近いスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の利用や設置の流れがある。

この2つの流れが、互いに影響を与え合うことでより良い方向を目指せるよう、産官学での調整が行われており、ボトムアップ(Web Client技術、GRAPE、マイクロプロセッサ)/トップダウン(通信インフラストラクチャー、プロトコル、規格化)の両輪がうまく動くよう計画されている。それぞれの相互技術が結びつき、切磋琢磨することで、より良い仕組みを作り上げようとする努力が続いている。

しかし、今までのNLSによる垂直型のスーパーコンピュータ構築(1点豪華主義、或いはピラミッドの頂点型)だけでなく、NIS及び民間主導での水平展開型スーパーコンピュータ構築(多くの複数頂点を持つ連峰型)が久しく求められているが、アカデミックな領域以外での進展は見られない。特に日本の産業界においてはそれ程の危機感を持って語られていないのが現状である。

過去の日本における官主導大規模プロジェクトとその産業育成施策が機能するような原始的な産業構造・経済構造から、日本の経済状況や産業構造は既に大きく成長し、より豊かで多岐にわたるものとなっている。しかし、こういった複雑で多岐に渡るニーズを汲み上げるような普遍的要求を吸収できるシミュレート基盤/計算基盤を、日本の産業界は未だに持てない現実もある。

特に、産業面でのスーパーコンピュータ利用の普遍化と相対して、経済立国の足場である物造りの競争力を維持できる必要最低限のシミュレーション能力とその基盤の確保において、積極的な投資も行われず、多くの問題も内在している。そのため、民間主導での小規模でも積極的なプロジェクトの立ち上げとその強化が行われるべきであろう。今後の産業界での検討と投資に期待したい。

[編集] 既存大型スーパーコンピュータ(HPCサーバ)計画の連携

日本国内の官学による大型スーパーコンピュータ(HPCサーバ)計画は汎用京速計算機(概念設計段階)の結晶化へと目標を統一しており、幾つかの国家プロジェクトにて分散処理の改善が図られている。

現状、高速ネットワークを使用し、動作スレッド上のジョブ展開などの問題点をクリアする事が課題とされており、複数の改善施策が執られている。(詳細はスーパーコンピュータ技術史参照)

これにより飛躍的に伸びる計算能力は、学術機関の連携、さらには産業界との研究開発のための連携等に生かされるであろう。

[編集] グリッド・コンピューティング

各地の計算センターの複数のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)を統一的に利用するための手段として米国で主唱・開発され、大規模な分散コンピューティングが必要とされる分野において世界的に開発が進められているグリッドコンピューティングの技術開発に関して、日本国内においてもNAREGIが国家プロジェクトとして採択を受け、研究と構築が進んでいる。

また、国内の学校を含む、研究・教育機関に教育用に導入されているPCにグリッド基盤パッケージを導入し、現時点では利用されていないCPU資産をグリッドコンピュータの一部として活用する計画も進んでいる。今後、小学生が、自分達の目で大規模な科学技術計算の基盤とその動作を見ることができるようになるだろう。これは文部科学省が進めるコンピュータリテラシの浸透と理系分野への興味を掻き立てることになる事であろう。

[編集] アメリカ

[編集] 潮流

地球シミュレータによるコンピュートニクショックの後、その潜在的に大きな科学技術と国力・軍事研究の粋を挙げてスーパーコンピュータ(HPCサーバ)技術の更改と続伸を続けており、2006年8月現在、Top500.orgのランキングの上位50%以上をアメリカのスーパーコンピュータ(HPCサーバ)が占めている状況である。 近年の米国の計算機開発は軍事利用一辺倒の傾向が強い。そのため現在の技術開発は防衛高等研究計画局が中心となって奨められている。防衛高等研究計画局の方針では今後はハイブリッド型計算機の開発に取り組み、PFLOPS越えだけではなく、その先を見越した研究を展開するという。

今後も、米国は世界最先端・最速のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)を構築し続けるであろう。

[編集] グリッド・コンピューティング

グリッドコンピューティングの走りとして世界中のPCが参加しているSETIやグリッドによる分散処理に向いた研究素材を集めて、共通のグリッド基盤で処理を進めるBOINCといったプロジェクトが軌道に乗っており、世界各国のプロジェクトが相乗りして成果を挙げている。

[編集] 欧州

欧州各国においては、元々1980年代からスーパーコンピュータ(HPCサーバ)のハードウェア分野には敢て手を出さず、シミュレーションソフトやコンパイラなどの開発に力を注いでいた。次世代スーパーコンピュータ(HPCサーバ)に関しても、アメリカや日本のより良い部分を選択・取得し、得意のソフトウェアに注力した発展と一般化したスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の普及を目指して動いている。また近年の欧州情報社会総局の方針では、ミドルウェア開発を念頭に置いた計算機開発を進める傾向がある。

ドイツ
NECを中心としたベクトル型の大規模スーパーコンピュータ(HPCサーバ)の導入と、IBMを中心としたスカラ型のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の導入を並列して進めており、バランスを重視した対応を取っている。
スペイン
IBMのPowerPC970 2.2GHzを採用したMareNostrumを科学教育省に導入し、産官学での利用方法の検討と発展を図っている。
その他
イギリス・フランス・イタリアもほぼスペインと同様で、産学での利用面において一般化したレベルのスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の導入を促し、産業面では自動車産業や航空機産業での利用を進めている状況である。先鋭的なスーパーコンピュータ(HPCサーバ)より、普遍的なHPCの導入に積極的であり、大きな予算を必要とする次世代スーパーコンピュータ(HPCサーバ)への集中的な投資はあまり見えない。

[編集] アジア(日本を除く)

1990年代前半は非常に少なかったが、韓国・中国・台湾・インド・マレーシアといった国々では、スーパーコンピュータ購入や自国での構築も行っており、Top500 クラスの新規案件が増えている。


東アジア
中国
中国ではスカラ機をアメリカ製汎用プロセッサで構築したり、自国での汎用プロセッサの開発などの手を打ったりしつつある。上海超級計算センターに設置されている『曙光4000A』は10TFLOPSの計算性能を発揮したが、現在は50位ほどまで落ちている。
また国産CPUの『龍芯』はMIPS系の設計盗用が指摘されており、知的所有権の大幅な違反例として知られている。
そのため、国産スーパーコンピュータ(HPCサーバ)の開発は順調とはいえず、日米との開発力の差は予想以上に大きいようだ。
しかし、基礎研究段階ではめざましい猛追を見せており、実装面での急進の可能性も低くなく、未知数な状態となっている。
また、導入数に関してはIBM製のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)を購入したり、汎用PCのクラスタ化したりすることによりTop500に18台(2006年10月)と日本(同30台)に次ぐ台数を導入して急速に追い上げている。
ただし、使用目的のほとんどが軍事面に傾いており、日本や欧州のような産業面の利用促進はほとんど見えないのが現状である。
韓国
韓国では、ソウル大において汎用PCとLinux及び日米製のクラスタソフトを用いた研究用スーパーコンピュータ(HPCサーバ)を作成していたが、導入時に150位程度であり、現在はTop500圏外となっている。
実務面で使用するスーパーコンピュータ(HPCサーバ)においては、全てを日米ベンダ各社から購入して数を増やしつつあるが、あくまで利用者としての対応であり、元々の国力からの判断で自国での開発は行なっていない。
SC06のランキングにて、韓国気象管理センタのCray X1E(Opteron:1026CPUが29位)を筆頭に、産業界、特に自動車及び半導体製品を輸出しているヒュンダイやサムソン、LGなどの企業に複数導入され、現時点でもアメリカ製HPC5台がランキングされている。
なお、利用も気象や自動車などの民需系の利用が急速に増えたものの、軍事的な開発・設計に注力しているとの指摘もあり、先が全く見えない。また、肝心の気象予測においても、強化された計算能力を十分に生かしきる事ができず、一般国民においては、隣国の日本の気象庁の予測を確認する風潮が根付いている。
中華民国(台湾)
元々、スーパーコンピュータの発展に寄与したスティーブ・チェンの出身地でもあり、スーパーコンピュータと縁の深い台湾では、軍事的な側面でスーパーコンピュータ(HPCサーバ)を導入する動きは殆ど無い。これは、中国本国を刺激しないという面もあるが、基本的に民需系や公共サービス系を中心に産業界や科学分野においての導入が進められている。特に汎用PCを使用したLinuxのクラスタ系コンピュータが多く、半導体産業におけるCAE系や中央気象局などの他、台湾が生き残りを掛けて投資している遺伝解析系においては、世界でも有数のレベルでHPCが取り入れられ、使用されている。
例えば、日本産のメダカを遺伝子改造して、深海魚等から取り出した発光する遺伝子を組み込み、発光魚として世界各地に輸出しているが、この遺伝改造もHPCを使用して検証され、実際に行われている。
このように台湾自体、韓国と同様にHPCの開発を行う事はないと思われるが、産業による貿易(ただし、輸出と輸入のバランスを取った)立国を続ける立場から、欧州と同様に一般的なHPCの利用とアプリケーションの提供という面で、日米欧と肩を並べる存在としての存在感を示しつつある。また、日本のGRAPEプロジェクト(GRAPE-DR)に対しても、複数企業が参加し、サポートを続けている。

南アジア
インド
アメリカのIT産業のオフショア開発先として、IT業界における日の昇る勢いの感のあるインドでは、アメリカの情報産業の根幹のサポートを続ける上で、新規スーパーコンピュータ(HPCサーバ)の導入が続いている。基本的に大きな構成を取るシステムは、現状少ないが、Cray/IBMブルージーン/創業者がインド出身であるSunなどの最新設備が常に置かれ、ソフトウェアの基幹部分及び、それに近い部分の開発が恒常的に行われている。
今後、日本も含むIT業界の開発エンジンとして、その発展は確実視され、日米欧共に競争相手ではなく、協力国として期待されている。

中央アジア/西アジア
イスラム教圏でもあり、現状、殆どスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の導入が行われていない。ただし、地球温暖化などの問題により、日本の地球シミュレータに産油国が大きな興味を示すなど、今後、何かしらの発展が予測される。

[編集] スーパーコンピュータ(HPCサーバ)の将来と総論

アメリカも日本もスーパーコンピュータ(HPCサーバ)によるシミュレーション能力が国際競争力の源泉であることに気が付き、次々と次世代HPC構想の手を打っている。 (詳細は汎用京速計算機の項を参照)さらに、日米両国はそれぞれの政府主導の下、各省単位でのHPC投資促進が続けられており、数十PFLOPSコンピュータを2010年までに構築する計画が複数進んでいる。 なお、技術的詳細に関しては、スーパーコンピュータ技術史の現在の項を参照。

今後、スーパーコンピュータ(HPCサーバ)はネットワーク/ハードウエア/ソフトウエア各要素技術においてバランスの取れた進化が続く事により、既存の利用分野を超えて今後も進化を続ける。文部科学省や経済産業省などの官公庁も、民間の各シンクタンクも縦型分散型であるスーパーコンピュータ(HPCサーバ)と横型分散型のノンストップコンピューティング技術の連携によって、将来は障害に強いスーパーコンピュータシステムが多くの生産の場に役立ち、その恩恵は生活の隅々にまで行き渡るだろうと予測している。

この予測の根本において、物造りの工程においてだけでなく、一般生活の基本である各種インフラにおいても、これらスーパーコンピュータ(HPCサーバ)によるシミュレーション能力やその利用結果である予測能力は必要とされており、様々なシーズを生み、さらにはニーズも生み出すものであるからだ。

さらに分析を進めれば、その本質はシステムを使いこなす側やシステムを活用する側への教育的問題へと波及せざるを得ない。その答えが、いずれの国においても産官学が国家を挙げて目指すリテラシーの向上であり、教育に直接関係する課題そのものという判断からである。

[編集] その他補足事項

[編集] 日本における官学主導スーパーコンピュータ(HPCサーバ)の位置付け

日本の計算科学分野における科学技術政策では、国立大学や国立研究機関などへの スーパーコンピュータ(HPCサーバ)の導入に関して、NLS と NIS という位置付けがしばしば用いられる。

  • NLS (National Leadership Supercomputer):日本国内のスーパーコンピュータ(HPCサーバ)リテラシーのリーダシップを取るスーパーコンピュータ(HPCサーバ)
  • NIS (National Infrastructure Supercomputer):一般的な研究面/産業面での利用を念頭にスーパーコンピュータ(HPCサーバ)リテラシーの下支えをするスーパーコンピュータ(HPCサーバ)

例として、1993年時点で世界最速を競っていた航空宇宙技術研究所数値風洞筑波大学CP-PACS は NLS として使用が始まり、その後2年ほどで NIS として利用された。2004年まで2年半の長期に渡って Top500[1]の第1位を占めた地球シミュレータも NLS として開発され、2007年頃には NIS として供用されると見られる。

2006年現在、地球シミュレータに代わる次期 NLS として汎用京速計算機が構想されており、その後も政府の国家戦略として、最先端の性能を持つスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の研究開発を持続的に推進していくべきであるとする提言が文部科学省科学技術・学術審議会等で出されている[2]

[編集] 市場

現時点でのスーパーコンピュータ(HPCサーバ) ベンダは、日本の3社(NEC/日立/富士通)とアメリカのIBM/HP/SGI/Cray/SUN及び、それらの派生品を扱う欧州ベンダである Bullと、市場規模に対して数が多すぎる過当競争の時代に突入している。

日本のベンダに関しては、作成するスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の台数は少ないが、50位以内の台数で見ると必ず自社での検証機とNLS用スーパーコンピュータ(HPCサーバ)が登場しており、ほとんどがプロトタイプ的な存在になっており、利益を生み出すような存在ではなく、趣味的な扱いに甘んじている。また、製品としての競合能力があると判定できるレベルではなく、NECのSXシリーズ以外、海外への販売実績もほとんど無い状況である。

国産ベンダのTop100内スーパーコンピュータ(HPCサーバ)台数の変遷 (top500.orgより)

ベンダ名 2005年06月 2005年11月 2006年06月 2006年11月
富士通 4台(全て国内のみ) 4台(全て国内のみ) 3台(全て国内のみ) 2台(全て国内のみ)
日立 0台 1台(全て国内のみ) 3台(全て国内のみ) 2台(全て国内のみ)
NEC 2台(日本1台、ドイツ1台) 2台(日本1台、ドイツ1台) 3台(日本2台、ドイツ1台) 2台(日本1台、ドイツ1台)
日本設置台数 9台 10台 15台(日立と富士通の共同構築1台) 8台(日立/富士通、NEC・SUNの共同構築それぞれ1台)

CPU種別単位のTop500内スーパーコンピュータ(HPCサーバ)比率比較 (SC|05,top500.orgより)

ベンダ名 CPU種別 市場占有率 備考
インテル IA32Intel 64 26%
IA64 22%
IBM POWER 25%
AMD AMD64 18%
Vector 2.2% NECとCrayのベクトル機

ベンダ単位のTop500内スーパーコンピュータ(HPCサーバ)占有比較 (SC|05,top500.orgより)

ベンダ名 台数 占有率 100位以内の台数
IBM 233 46.6% 71
HP 218 43.6% 8
SUN 2 0.2% 0
SGI 13 2.6% 6
日立 5 1% 1
NEC 6 1.1% 2
富士通 5 1% 4
クレイ 15 3% 7
インテル 3 0.6% 1

輸出対象外である中国を含む世界全体を見通した市場規模調査でも多くて400億円/年程度であり、今後、予算的な都合で性能の向上についていけないベンダが撤退・脱落していくと予測される。なお、グラフィック処理用サーバでの赤字とスーパーコンピュータ(HPCサーバ)への過剰な経営資源の投入のため、SGIが2006年5月に連邦破産法第11章の適用を申請し、受理された。その後、財務面での整理が行われ、06年11月に第11章適用対象から外れ、建前上、一つのコンピュータメーカとして再生を果たした。

[編集] 2004年時点の自動車メーカー保有計算能力量

産業面とスーパーコンピュータ(HPCサーバ)のつながりを判断するに程好い資料として、それぞれの国の技術的総合力の一端を見ることができる自動車産業におけるGFLOPSクラスのCPUユニットの保持数を一覧化した。 それぞれのメーカーの総合力とスーパーコンピュータ(HPCサーバ)の保有台数の相関を見て欲しい。

CAE用GFLOPS級計算機数一覧(2006年 SC|05及びTop500.orgより)

メーカ名 ユニット(百万) メーカ名 ユニット(百万) メーカ名 ユニット(百万) 備考
GM 8.2 トヨタ 7.5 フォード 6.8
DC 4.2 VWグループ 4.1 PSA 3.5
日産 3.4 HONDA 3.35 ヒュンダイ 3.3
ルノー 2.5 フィアット 2.25 スズキ 2.0
三菱自動車 1.5 BMW 1.25 マツダ 1.0
いすゞ 0.5 FHI 0.5 Tata 0.25

国単位でみると、アメリカ・日本・ドイツ・フランス・スウェーデンという順に並び、アメリカと日本,ドイツが突出している事が見て取れる。(あくまで民需用の計算資源一覧)また、これらの主要3国では、自動車産業の下支えをする部品メーカや材料メーカにおいても、非常に多くのGFLOPSクラスのサーバが導入されており、その裾野の広さも際立っている。(韓国も主要部品を日本に依存している。)

なお、日本において盛んな鉄道車両設計関連、アメリカ・欧州において盛んな航空機用の計算量を加えると、アメリカと日本の突出さはさらに大きくなる。

表 国別自動車産業保有GFLOPSクラス計算量

国名 計算資源量 国名 計算資源量 国名 計算資源量 備考
ドイツ 32855 スウェーデン 5774 フランス 7833
イギリス 1419 イタリア 4442 アメリカ 42386
日本 38018 韓国 4804 中国 非公開

[編集] Windows系OS

上記のようなUNIX/ Linux系の超並列クラスタとは別に、さらに低予算/小規模向けのスーパーコンピュータ(HPCサーバ)用にWindows2003サーバOSをベースとした Windows Compute Cluster Serverというスーパーコンピュータ(HPCサーバ)向けのWindows Server系OSが2006年6月リリースされた。

しかし、科学技術系/開発系エンジニア・開発者の多くは、ソース修正/カスタマイズの利便性、使用ソースコードの使用の長期化(徒弟的情報の引継ぎやノウハウの蓄積、データ構造の継承など)などにより、オープンソース(Unix及びLinux)系を中心にした歴史を持つ。さらに、HPCとしての性能を出すには、チューンナブルなパラメータの総合的な調整と、処理を考慮した最適値を出す必要がある。WindowsCCSにおいては、この調整パラメータの固定化や制限化があると考えられており、導入に対しての制限が懸念される。また、一般企業の業務においては、並列クラスターによるスーパーコンピュータ(HPCサーバ)によって大幅に改善されるような問題はあまりなく、薬や医療・バイオ系の研究/開発などに主力が向けられると思われる。(分散できる統計的な処理やデータをある程度の塊で計算/加工するような処理に向くため)

WindowsCCSを導入した組織として、東京工業大学がある。他のHPCはLinux,UNIXベースの似通ったシステムが多く、学生が将来就業する際にそれらのOS以外にもWindowsも学んでおく必要があるというのが導入の理由である。

[編集] 脚注

<references/>

[編集] 関連項目

[編集] 参考文献

  • 坂村建,コンピュータアーキテクチャー -電脳構築学-,共立出版
  • 日本電気,富士通,日立製作所, スーパーコンピュータ全書, パーソナルメディア
  • 「情報処理」(情報処理学会誌)特集「知られざる計算機」2002年2月号(Vol.43 No.2)
  • アンドリュー・S・タンネンバウム,ネットワークアーキテクチャー第4版,日経BP
  • ディビット・G・ストークス(編著),HAL伝説-2001年コンピュータの夢と現実,早川書房

[編集] 外部リンク

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