スペースシャトル

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1981年のコロンビア号の打ち上げ。当時は外部燃料タンクが白く塗装されていた

スペースシャトルは、アメリカ航空宇宙局(NASA)が開発した地球宇宙空間を往復し、繰り返し使用することができる宇宙往復船である。

オービタ固体ロケットブースタ、外部燃料タンクでできており、外部燃料タンク以外は再利用されている。アポロ計画に続く宇宙開発計画として1970年代に進められた。

1981年4月12日<ref>ガガーリン少佐ボストーク1号で初の有人宇宙飛行を行ったのが1961年4月12日で、この20周年を記念してシャトルの初打ち上げがこの日に決められた。</ref>に初めて打ち上げられ、これまでに114回宇宙と地球の間を往復している。アメリカフロリダ州ケネディ宇宙センターで打ち上げられ、同センターの滑走路、あるいはカリフォルニア州エドワーズ空軍基地(北緯34度54分19秒・西経117度53分01秒)に着陸する。一回だけホワイト・サンズ・スペース・ハーバーに着陸した経歴がある。打ち上げ時に支持タワーを越してから着陸までの管制はテキサス州ヒューストン南端のジョンソン宇宙センターで行われる。ちなみに日本の沖縄にある嘉手納米空軍基地もかつてはスペースシャトルの緊急着陸飛行場とされていた。オービタの名前は船の名前に由来する。着陸実験機だったエンタープライズの名称はスタートレックの項参照。

機体の再利用による打ち上げコスト削減を目的に開発・運用されたものの、数々の技術的トラブルと人的エラーに見舞われ、2度の機体喪失・乗員全員死亡の大事故を引き起こした事で運用計画は大幅に遅延し、国際宇宙ロケット市場における信頼も低迷するなど、計画全体としては必ずしも成功したとは言い難い。また打ち上げコスト削減にも失敗し、商業打ち上げ市場を欧州やロシアのロケットに奪われる結果に終わった。

機体が老朽化しているため、NASAは2010年7月打ち上げ予定のエンデバーを最後に全機退役とする打ち上げ日程を2007年2月15日発表した[1]。後継にはオリオンがあたる。

スペースシャトルの製造費用は、エンデバー号を開発した時点で、1機当たりおよそ18億ドルといわれている。また、1回当たりの打ち上げ費用はおよそ4億5000万ドルといわれている。

目次

[編集] 解説

[編集] 構成

スペースシャトルの打ち上げ

スペースシャトルは3つの主な部分から構成されている。

  • 再使用可能なオービタ (Orbiter Vehicle, OV)。大きな貨物室と3基の主エンジン(外部燃料タンクが装着されている間に使用)、2基の小さなエンジンが付いた軌道操縦システム(軌道変更や軌道離脱用)を持つ。
  • 大型の外部燃料タンク (External Fuel Tank, ET)。オービタの3基の主エンジンの燃料となる液体酸素液体水素のタンクである(前方に酸素、後方に水素のタンクがある)。打ち上げの8.5分後に高度109kmで切り離され、大気圏に再突入する。部品は海に落下し、回収はされない。初期は白色に塗装されていたが、経費削減と軽量化のため現在では無塗装である。
  • 2本の再使用可能な固体ロケットブースタ (Solid-Fuel Rocket Boosters, SRBロケットエンジンの推進剤)。推進剤は主に過塩素酸アンモニウム酸化剤(重量比で70%)とアルミニウムの燃料(同16%)である。打ち上げから2分後に高度66kmで切り離され、パラシュートで落下する。海に着水した後で回収される。

いわゆる宇宙輸送システム(Space Transportation System)の最初の計画では、宇宙タグボートや軌道操縦システム用の外部燃料タンクなどの様々な案があったが、実際のシャトルには採用されていない。

[編集] 性能諸元

  • スペースシャトルシステム全体の全長:56.14 m (184.2 ft)
  • オービタの全長:37.23 m (122.17 ft)
  • 翼幅:23.79 m (78.06 ft)
  • 打ち上げ時の質量:2,041,000 kg (4.5 million lb)
    • ET 751,000 kg
    • SRB 2 x 590,000 = 1,180,000 kg
  • 打ち上げ時の推力:34.8 MN
    • 主エンジン推力 3 x 1.8 = 5.4 MN
    • SRB 推力 2 x 14.7 = 29.4 MN
  • ミッション終了時の質量:104,000 kg (230,000 lb)
  • 軌道上に運搬可能な最大積載量:28,800 kg (63,500 lb)
  • 軌道高度:185 ~ 578 km (100 ~ 312 海里)
  • 速度:27,875 km/h (7.7 km/s, 17,321 mi/h)
  • 定員:宇宙飛行士 最大7名 (コロンビア号のみ8名の搭乗が可能であった)

[編集] オービタ

各々のシャトルは船と同様に名前を持つと同時に、NASA のオービタ命名規則に基づく機体番号も持つ。

取扱試験用機体
宇宙飛行能力を一切持たない。
  • パスファインダー Pathfinder -- オービタ・シミュレータ、機体番号なし(ただし一部ではOV-098、STA-098とする資料もある)。1983年に東京・大阪・名古屋で開催された大スペースシャトル展で展示された。
主推進系試験用機体
宇宙飛行能力を一切持たない。
  • MPTA-ET -- パスファインダーに外部タンクを装着したもの
  • MPTA-098 -- エンジントラブルで大きく損傷した
構造試験用機体
宇宙飛行能力を一切持たない。
  • STA-099 -- 後にチャレンジャー(OV-099)となった
滑空 / 着陸試験用機体
大改修しない限り宇宙飛行能力を持たない。
事故により喪失した機体
  • チャレンジャー Challenger (OV-099, ex-STA-099) -- 1983年10月3日(STS-6): 初飛行。1986年1月28日(STS-51L): 打ち上げ時に固体燃料ロケットブースタが爆発して墜落。その日、気象状態が低温であったために固体燃料を封じ込めるゴムが固化していた。そのため打ち上げ後そこから高温の燃焼ガスが漏れだし爆発にいたった。固体燃料ロケットブースタのメーカーは危険性を認識しており打ち上げに難色をしめしていたが、打ち上げ責任者がスケジュールをこなすために打ち上げを強行していた。
    詳しくはチャレンジャー号爆発事故を参照
  • コロンビア Columbia (OV-102) -- 1981年4月12日(STS-1): 初飛行。2003年2月1日(STS-107): 大気圏再突入時に空中分解事故で失われた。この事故は、打ち上げ時に燃料タンクから落下した断熱材によって左主翼前縁の強化カーボンカーボン(RCC)パネルが損傷、大気圏再突入時にそこから侵入した高温のプラズマが主翼構造の脆弱化を招き、さらにはそれによる操縦不能などによって最終的に空中分解に至ったものである。NASAは打ち上げ翌日の時点でこの異常に気付いていたが、問題はないと判断し、任務を続けさせていた。
    詳しくはスペースシャトルコロンビア墜落を参照
現在使用中の機体
左から、コロンビア、チャレンジャー、ディスカバリー、アトランティス、エンデバー

[編集] 構造

STS-114ミッション

シャトルには、その全長の大部分を占める大きな貨物室(ペイロードベイ:payload bay)がある。貨物室の扉の内側にはラジエータが取り付けられており、シャトルが軌道上にいる間は熱制御のために扉が開け放たれている。また、地球太陽に対するシャトルの姿勢を調整することでも熱制御が行われている。

貨物室の中には「カナダアーム」とも呼ばれている遠隔マニピュレータシステムがある。これは貨物を船外から受け取ったり放出したりするためのロボットアームである(アームの設計・製造を行ったのがカナダの企業であることからアームに Canada の文字とカナダ国旗が貼られている。)。コロンビアの事故以前は、Canadarm はアームが必要とされるミッションでのみ搭載されていた。2005年に予定されている再開後の飛行では、大気圏再突入時に問題となるような損傷が機体にないかどうかを軌道上で検査(熱防護検査)することになっているが、この検査ではこのアームが非常に重要な役割を果たすため、今後の飛行では必ずアームを搭載することになると考えられる。

[編集] 改良点

国際宇宙ステーションから見たスペースシャトルディスカバリーオービターの腹部を覆う耐熱タイルの様子が良く分かる。(2006年9月 STS-115ミッションにて。)

スペースシャトルシステムは年ごとに膨大な数の改良が行われている。オービタの熱防護システムも、重量を節約したり作業負荷を減らすために何度か変更されている。元々使われていたシリカベースのセラミックタイルは飛行のたびに損傷がないか検査する必要があり、また水を吸収するために雨からも守る必要がある。この水の問題は当初、帰還後タイルに防水スプレーを毎回かけることで対処していた。しかし後に良い解決策が見つかった。シャトルのタイルのうち、あまり高温にさらされない大部分について、断熱性のあるフェルトのような素材に交換されたのである。これによって広い面積(特に貨物室周辺)で検査が不要になった。

チャレンジャー事故の後、操縦室もグラスコックピットに加えて安全上の理由からいくつかの改良がなされている。例として、オービタが不時着する必要が生じた際の乗員脱出システムが設けられた(当初は機長と副操縦士用の射出座席が搭載されていたが実用段階に入った後、軽量化のため取り外されていた)。また、国際宇宙ステーション(ISS)が建設されると、ISSへの補給ミッションでISSとのドッキングが出来るように、オービタ内部のエアロックが外付けのドッキングシステムに変更された。

メインエンジン
スペースシャトルの主エンジン(SSME)も信頼性と推力の向上を図って何度か改良されている。打ち上げ時のアナウンスで "Go to throttle-up at 106%" のような語句を耳にすることがあるが、これはエンジンの出力が限界を超えているわけではなく、最初の設計の主エンジンの出力レベルを100%とした値を示している。現在の実際のエンジン出力は109%まで到達可能である。オリジナルのエンジンでは102%まで出すことができた。2001年の Block II 型エンジンの開発によって109%の出力を達成している。
飛行システム
シャトルの機体は原設計から大きな変更点はないが、フライ・バイ・ワイヤー方式の飛行制御システムは改良が続けられている。オリジナルのシステムは IBM System/360 シリーズの中でも、高信頼性を追及した耐放射線仕様32ビットアビオニックスコンピュータであるIBM AP-101に操縦室のアナログディスプレイが接続されたもので、現代の DC-10 旅客機やボーイング767旅客機などに類似するものだった。初期のAP-101は424KBの磁気コアメモリとデータドライブを搭載し、処理速度は0.4MIPSであった。1990年に更新されたAP-101sはRAMが1MBになり、処理速度は1.2MIPSに向上した。
AP-101はDPS(データ処理システム)と呼ばれ、同型のシステム5台の多数決によって動作する。4台には同じソフトを搭載しているが、バグ対処のために第5コンピュータは別の手法で作成されたソフトが搭載されており、4台のプライマリコンピュータのバックアップに当たる。プライマリコンピュータは相互監視しながら協調動作を行い、故障機が発生した場合には残存機で補完する。プライマリコンピュータが全滅した場合には、バックアップコンピュータである第5コンピュータが使用される。
コンピュータの プログラミング言語には、高信頼性を確保するためにシャトル専用のHAL/s(High-order Assembly Language / Shuttle)が使用されている。今日では操縦室はグラスコックピットのシステムに交換され、コンピュータの高速化が図られている。
飛行システムとは直接関係ないものの、ミッションサポート用としてアポロ・ソユーズテスト計画から続く伝統として、HP-41C 以来搭載しているプログラム電卓や、PanasonicIBMノートパソコンなども搭載している。スペースシャトルは常時地上とデジタル通信を行っているが、そのデータストリームは特殊なものであるためIP接続ができなかった。現在のスペースシャトルにはシスコシステムズの開発したOCA(Orbital Communications Adapter)と呼ばれるルーターによって、Kuバンド通信上で上り3Mbps、下り43MbpsでのIP接続が可能になり、Web閲覧、メール送受信、ビデオチャットVoIPによる一般電話との接続も可能になり、地上の家族や友人とのプライベートなコミュニケーションも可能になっている。
外部燃料タンク
STS-1 と STS-2 では、外部燃料タンクのほぼ全体を覆っている断熱材を保護するためにタンクは白く塗装されていた。しかし改良策とテストの結果、この塗装は不要であることが明らかになった。この改良によってかなりの重量が節約でき、その分オービタが軌道により多くの貨物を運べるようになった。また、水素タンク内部のストリンガと呼ばれる部品も飛行には不要であることが分かったために取り外され、この分重量が軽くなった。この「軽量外部タンク」がそれ以降のほとんどのシャトルミッションで使われている。STS-91 では「超軽量外部タンク」と呼ばれる新タンクが初めて使用された。このタンクは2195アルミニウムリチウム合金でできている。スペースシャトルは無人での飛行ができないため、これらの改良策は実際の飛行でテストされた。
SRB
SRB(固体ロケットブースタ)の特に重要な改良は、チャレンジャー事故の後でセグメントの接合部分に3つ目のOリングが追加された点である。これ以外にも SRB には性能と安全性を向上させるための多数の改良が計画されていたが、現実には実施されなかった。改良計画の最終案として、より構造が単純でコストが安く、高い安全性と性能を備えた Advanced Solid Rocket Booster (ASRB) と呼ばれる改良型ブースタが1990年代初めから中頃にかけて製造され、国際宇宙ステーション計画の助けとなる予定だったが、後に経費節減のために中止された。しかし中止までには22億ドルの予算が既に投入されていた。ASRB 計画の中止によって、積載能力を増やすために超軽量外部タンクを開発する必要に迫られた。しかしこの改良では安全面の向上はなされていない。これに加えて、空軍でも独自にフィラメント巻方式による超軽量の一体型タンクを開発していたが、これも中止された。

[編集] コックピット

オービタは自動操縦ではなく人が操縦する。通常は2名で操縦するが、緊急時は1名でも操縦できる。

アトランティスのコックピット

[編集] 使用状況

1995年のスペースシャトルとミールの共同ミッション

[編集] 主な用途

  • ISS の滞在要員の交替
  • ハッブル宇宙望遠鏡 (HST) などの有人修理ミッション
  • 低軌道 (LEO) での有人実験
  • LEO への物資輸送:
    • HST などの大型人工衛星
    • ISS の建設資材
    • 補給
  • 軌道上からの衛星打ち上げ

[編集] 飛行統計データ

以下は2006年12月22日現在のもの。

シャトル 飛行
日数
軌道
周回数
飛行距離 飛行
回数
最長飛行
(日)
乗員数 船外活動
回数
ドッキング回数 衛星
放出数
(mi) (km) ミール ISS
コロンビア 300.74 4,808 125,204,911 201,497,772 28 17.66 160 7 0 0 8
チャレンジャー 62.41 995 25,803,940 41,527,416 10 8.23 60 6 0 0 10
ディスカバリー 281.45 4,433 115,140,673 185,235,454 33 13.89 206 35 1 7 31
アトランティス 243.99 3,654 94,808,732 152,534,078 27 12.89 167 21 7 7 14
エンデバー 206.60 3,259 85,072,077 136,910,237 19 16.63 130 29 1 6 3
1,095.19 17,149 446,030,333 717,704,957 117 - 813 101 9 20 66

[編集] 今後の計画

NASA にはかつて何度となく新型スペースシャトルの計画が提案されたが、米国政府の宇宙開発予算圧縮の方針などから全て実現されていない。そのため、30年近く前の設計に基づくシステムを使用する状況が続いており、8インチフロッピードライブという、HDDやCD-Rなどとは程遠い前時代メディアを現在も使用している。機体の老朽化を初めとする多くの問題点を抱えている。

コロンビア号の事故後に新たな代替機の開発の必要性も叫ばれたが、2006年現在の政府方針ではスペースシャトルは2010年9月末で ISS の組立を終えて退役する予定となっている。

現在計画されているシャトルの後継機はアポロカプセルの大型版のような再使用型カプセルのオリオンで、2012年頃に有人での飛行試験を予定している。オリオンの打ち上げ用ロケットには、シャトルの SRB と ETを改造したものが流用される予定である。

[編集] スペースシャトルシステムへの評価

2003年のコロンビア事故をきっかけとして、各国の宇宙開発関連の研究者や開発者からシステムとしてのスペースシャトルの功罪に関する再検討が多くなされるようになり、システム自体の欠陥を指摘する以下のような意見も出ている。なお参考までに、擁護意見も併記する。

論点 種別 意見
信頼性 批判 再利用する主エンジンの信頼性の低下とコスト上昇。少なくともこのようなシステムを衛星等の打ち上げに使用する必要性はなく、安全性を重視しなければならない有人機として見てもリスクが大きすぎる。また、宇宙実験室ならば、ミールや国際宇宙ステーションのような大規模ステーションの建設は勿論、サリュートのような使い捨て宇宙実験室で対応する事も限定的には可能である。
擁護 「人と貨物を同時に打ち上げる事」が目的でかつ、数十の別の実験装置を人が軌道上で操作し研究することが出来たのはスペースシャトルだけで、「軌道上の実験室」という無二の能力に対して支払われるコストであるということ。
打ち上げ単価 批判 人間と貨物の同時打ち上げによる重量単価の上昇
安全対策の徹底による打ち上げ単価の上昇
衛星打ち上げ市場での使い捨ての無人ロケットとの価格競争での敗退。H-IIAやアリアン登場以前を含めても、シャトルが商業衛星打ち上げにおいて主流を占めた時期はない。また、シャトルと同等のロケットを使い捨ての無人打ち上げシステムとして運用すれば100t近いペイロードを低軌道に(おそらくシャトルよりかなり安く)投入することが可能であり、ロシアのエネルギアのような例もある。シャトルのようなシステムで大質量を宇宙空間に運ばなければならない理由はない。シャトル以上の物資を低軌道に投入できる使い捨てロケットが無かったのは、単に用途がなかったからに過ぎない。
擁護 主にアリアンH-IIA等と比較される場合が多いが、実際には就役年に大きな開きがあるほか、用途もスペースシャトルの研究衛星の低軌道投入能力に対して、商用衛星の静止軌道投入能力と全くといっていいほど違う能力にそれぞれ特化しているので比べること自体がナンセンスである。また、低軌道投入に関してはスペースシャトルの24.4トンの打ち上げ能力が現在でも世界最大である。
ソユーズとの比較 批判 ソユーズより劣った経済・安全性。シャトルが14名の犠牲者を出した期間、ソユーズは一名の犠牲者も出していない。(それ以前には1967年のソユーズ1号墜落事故で1名、1971年のソユーズ11号空気漏れ事故で3名の死者を出している。)また、シャトルは僅か百回強の飛行で2度の致命的な事故を起こした。これは如何なる理由があれ、有人機として適切な安全基準を満たしているとはいえない。
擁護 そもそもソユーズは軌道上の宇宙への到達及び、ミール等宇宙ステーションとの往復が目的であり、軌道上の実験プラットフォームであるスペースシャトルとは目的・設計運用思想の異なった物でバイク(ソユーズ)と多目的トラック(シャトル)を比べるような物である。乗員の保護に関し、シャトルはGプロフィルが低く長期飛行後の飛行士を帰還させるのに有利であり、また緊急医療を行いながら飛行のできる空間的余裕がある点で優れている。しかし、安全性についてソユーズに対してのシャトルの優位性の低さは絶対的であり、擁護できる物はない。
安全性と効率性 批判 再突入後15分しか使われないオービタの主翼を打ち上げる非効率性
超高温となるオービタ底面の着陸脚及び燃料補充口を開ける安全性の無視
大気圏突入時に過酷な環境に置かれるオービター下部を打ち上げ時に保護することが不可能
擁護 翼を持つことによって宇宙空間から実験の試料や人工衛星などをパラシュートよりはるかに安全かつ安定した形で地上に届けることができ、そのために当然支払われるべきコストである。もしパラシュートでそれを実現しようとすればジェネシスのようなアクロバットを必要とする。実際、衛星軌道上の実験衛星を実験終了後、機体すべてを地球に持ち帰るようなミッションもこなしている。
固体ロケットの使用と緊急脱出システム 批判 非常時に燃焼中止のできない固体燃料ロケットの使用
非常時の緊急脱出システムがない。ソユーズ型宇宙船では緊急脱出用のロケットが搭載されていて、ロケット本体に致命的な事態が発生した場合カプセル部のみをロケットより離脱させて人命を守る事が可能である。これに対してシャトルには緊急脱出できるシステムがついていない。(初期のテスト的な意味合いの強かった頃は一部の席に射出座席を設けていた。)耐熱タイル等の問題とあわせ、シャトルの人命を軽視した設計の象徴との指摘もある。
擁護 常識として液体燃料ロケットより固体燃料ロケットのほうが信頼性が高く、また液体燃料ロケットであっても非常時に確実に燃焼中止できるとはかぎらない。実際、液体固体ともエンジンそのものの不調により使用不能になることはなったことはないが、エンジンを含めたシステム全体では液体(液体燃料タンクとオービタエンジン部)が2回と固体(SRB)が1回、運行に対して非常に大きな危機を発生させ、それぞれ一回ずつ、機体が失われている。固体ロケットのみが危険であるわけではない。また、かなり非現実的な手段ではあるが、限定的な脱出手段は持っている。(実用性はほぼ0)

上記のように、批判意見と擁護意見は現在の技術を元に批判するのか、当時の技術を元に擁護するのかとそれぞれの立ち位置において、異にしている。特に擁護意見の多くは"批判は現在の水準で語られており、20年前から現在までの時代の流れや技術の進歩、重視される能力の変化、宇宙開発の目的の変化についての視点に欠けている"というものだ。

当初のスペースシャトルシステム設計・構築時の目標は「宇宙空間に断続的ながらも総入れ替え可能な実験設備または、大重量の貨物を人と同時に打ち上げ、それらの相乗効果を得る事」であった。しかし、この設計思想自体が、それまでNASAが蓄積し、更新してきた技術及び、その体系から飛躍しすぎ、足元を疎かにした計画であったという事がNASA内部での反省・評価の結論であり、当時の技術に打ち上げ機器の極端な汎用性を求める事自体が間違いであったと総括されている。また、NASAが当初計画していた商業衛星の打ち上げ等に関しては議会へのアピールを主目的としており、採算性について考慮されていなかったと見る向きもある。

さらに、スペースシャトルの利用を前提として計画された国際宇宙ステーション計画が、事故に伴うシャトルミッションの凍結の影響で5年以上も打ち上げ延期されるなど、ミッション遂行に関するISS運営側のリスクマネジメントの不備も指摘されている。

その結果、オリオンに見られるように個々のプロジェクトに最適化して、打ち上げる装置・手段を選択でき、コストパフォーマンスを上げられるようなシステムを優先させることになった。

これらの動きを見渡すと、批判を容認し、その意見を建設的に取り込もうとするNASAや宇宙産業を取り巻く環境の健全性を見て取れる。一般にシステムというのは冷静に、しかもその時代の汎用的な技術設計論を元に新たに構築するものであり、時代遅れで陳腐化した技術や技術論について、批判的・否定的な意見が出ることは、その技術体系を司るエンジニアとそれを評論する機能が健常に機能しているものと判断される。 ただし、CEV計画自体においても、シャトルプロジェクトからの急速な切り替えに起因する問題点を内包しており、筋肉質の強引なやり方という批判が存在している事も事実である。

[編集] 一般的評価

科学史的な観点でシャトルシステムを評価すると、人類が定常的に軌道に人間を投入する事を意識して作成した初のシステムであり、コストなどで判断すべきものではなく、最初の一歩としての意味合いは大きい。最終的なスペースシャトルシステム全体の評価は数年後に控える退役を終えてからとなるだろう。

現時点としては、

  • 唯一の実用化再利用型軌道実験プラットフォームとしての最大限の運用
    • 軌道上実験施設としてはミールとは比べ物にならないほどの能力、安全・安定性を誇った。
  • 現在でも最大を誇る低軌道打ち上げ能力
  • 西側における宇宙開発のトップとしての実績
  • 設計寿命よりはるかに早く来た運用寿命
    • 二度の事故で14名もの尊い命が犠牲になる
  • NASAの高すぎた初期目標
    • 商業軍事研究用途への多数の打ち上げ等

といった様々な評価/意見がある。

[編集] 注・出典

<references/>

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

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