コーポラティズム
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コーポラティズム(英:corporatism)は労働組合や経営者団体が利害調整のために協議機関などを設けて政策立案・運営に当たる政治形態。イタリア・ファシズムにおいて「協同体国家」やファシズムと絡んだ理論化としてのオーストリアのO.シュバンの理論、1931年のカトリックの回勅に見られる理論、ワイマール憲法の経済議会或いはイギリスのギルド社会主義の理論などもそれに含める説もあるが、概して検討は十分とは言えない。第二次世界大戦後は労資の組織を政策決定に参加させる形態として広く採用され、ネオ・コーポラティズムとして社会民主主義諸国(北欧やオーストリア)に一般的に見られる。
以下、ネオ・コーポラティズムについて概説する。
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[編集] 背景
1970年代に先進諸国がスタグフレーションに喘ぐ一方、政労使の協調体制を構築していたヨーロッパ小国において比較的良好な経済パフォーマンス(低失業率、低インフレ率)が維持されていた。このことを説明する政治的要因として、シュミッターやレームブルッフがネオ・コーポラティズムという分析概念を導入した。
なお、ネオ・コーポラティズム<ref>あるいは社会コーポラティズム、民主的コーポラティズム、社会民主主義コーポラティズムとも呼ばれる。</ref>は、イタリア・ファシズムなどの権威主義コーポラティズム<ref>あるいは国家コーポラティズムとも呼ばれる。</ref>と対比したネーミングである。
[編集] 特徴
ネオ・コーポラティズムは主に賃金政策やマクロ経済政策の分析に使用される概念である。これを例にとって特徴を挙げると以下のとおりである。
[編集] 利益集団システム
ネオ・コーポラティズムは、最も狭義には集権的な利益集団システムを指す。たとえば労働組合の場合、集権性の度合いは、
- 労働組合の組織率が高い。
- 国内の労働組合が単一の全国組織(頂上団体)を頂点としたピラミッド状に組織されている。
- 各労働組合にとって上位組織への加入が強制的である。
- 組合費の配分について頂上団体への比率が相対的に多い。
- 下位組織のストライキなどに際して頂上団体が財政支援を行う。
- 頂上団体が多数の専属スタッフを抱えている。
- 頂上団体の決定から逸脱する下位組織に対して、頂上団体が有効な制裁措置を執りうる。
などの指標によって測られる。このように利益集団システムの集権性の度合いが強いほど、その国のコーポラティズム度は高く位置づけられる。
[編集] 団体交渉
労使交渉が、工場レベル・企業レベル・産業レベル・国レベルなど、どのレベルで行われるかは国によって、また年代によって異なる。労使交渉が国レベルなどのハイレベルで行われ、かつ、労使の上位組織による交渉結果がそれぞれの下位組織を強く拘束する場合、コーポラティズム度は高く位置づけられる。
[編集] 政策過程
労使の利益集団システムが高度に集権化されている場合、政府は、それぞれ頂上団体にそれぞれのセクターの利害を包括的・独占的に代表させ、利害調整のパートナーとして政策決定過程に組み込むことがある(利益表出)。また、政策決定における独占的な地位と引き換えに、政労使の利害調整を経て決定された政策について、労使の頂上団体が円滑な政策実施に対して責任を負う。そして、頂上団体は、当該政策が自分たちの利益に適うこと下位組織に説明し、その受容を強要する(利益媒介)。さらに、政策実施過程において、行政機関に代わって労使の利益集団が政策実施を担うこともある。このように、利益集団が政策過程に組み込まれる度合いが高いほど、コーポラティズム度は高く位置づけられる。
[編集] 多元主義との違い
利益集団システムのとしてのネオ・コーポラティズムに対して対極に位置づけられるのが多元主義である。すなわち、
- 利益集団が分立・割拠しており、セクターの利害を独占的に代表する頂上団体が存在しない。
- 政策決定に対して影響力を行使するために同じセクターの利益集団どうしが競争している。
という状態である。多元主義の特徴が強い国としてはアメリカが挙げられる。
[編集] 展開
[編集] マクロ経済への影響
ネオ・コーポラティズム論において、インフレ率などの経済指標と労働組合の強さの関係について、通説と異説の見解に分かれる。
通説的理解では、労働組合が強さや集権性に反比例してインフレ率が低くなる傾向が主張される。なぜなら、労働組合の交渉力が経営者にとって無視しがたいほど強力である場合、労働組合の経営参加が制度的に保障されるため、企業経営やマクロ経済を圧迫するほどの賃上げ要求を控えるようになるからである。
これに対して異説では、労働組合の力や集権性が弱い場合と強い場合の両極端でインフレ率が低くなり、その中間でインフレ率が高くなる傾向が主張される。労働組合の力が弱い場合、市場メカニズムに従って賃金水準が決定されるため、インフレが抑制される。しかし、労働組合が分権的ながらも一定の交渉力を持っている場合、「賃金交渉における集合行為問題」<ref>「賃金交渉における集合行為問題」とは以下のような囚人のジレンマである。
- 過度な賃上げは労働コストの上昇による国際競争力の低下やコスト・プッシュ・インフレを招く。
- しかし、労働組合が分権的に組織されている場合、個々の労働組合にとって、他の企業・産業の賃金交渉で賃上げ抑制が実現される保証はない。
- もし他の企業・産業で大幅な賃上げが実現したにもかかわらず、自分たちだけ賃上げを抑制してしまうと、インフレによって実質賃金が低下してしまう。また、たとえ他の企業・産業で賃上げが抑制されたとしても、自分たちだけ抜け駆けして大幅な賃上げを実現することで、(個々の賃金交渉がマクロ経済全体に及ぼす影響は小さいから)「良好なマクロ経済環境」と「大幅な賃上げ」の両方の果実を得ることができる。
- このため、多くの労働組合が賃上げを要求、結果としてマクロ経済が悪化する。</ref>によりインフレが生じる。労働組合が集権的に組織されている場合、労組の全国組織は、全国レベルでの賃金交渉でマクロ経済全体を考慮した水準に抑制し、その交渉結果を傘下労組に強要するため、「賃金交渉における集合行為問題」が回避される。
[編集] 福祉国家との関係
集権化された労働組合が賃上げ要求を抑制する場合、その見返りに経営者団体が社会保障政策の拡充を容認することがある。逆に、左派政党の政権下で、賃上げ抑制に対する見返りの政策が期待できる場合、集権化された労働組合は賃上げ抑制に応じやすくなる。
また、普遍主義的な社会保障政策は、失業率が上昇すると一気に財政負担が増大してしまうことから、完全雇用の実現が前提条件となる。このため、普遍主義を志向する福祉国家では積極的労働市場政策が推進されることが多い。ネオ・コーポラティズムの性格が強い国では、生産性の高い産業への労働者の移動や、産業の再編・合理化に対して、労働組合が協力(もしくは率先して推進)することがある。
[編集] 衰退
しかし、1980年代頃からネオ・コーポラティズム的な政労使の協調体制の衰退が指摘されている。原因の1つはグローバル化の影響である。すなわち、資本の国際移動の自由化により国内産業の流出する可能性が生じたことから、政策決定における経営者団体の発言力が高まっている。また、製造業からサービス産業への産業構造の転換によって労働者の均質性が失われ、労働組織率の低下に伴って労働組合の発言力も低下している。
スウェーデンは従来からネオ・コーポラティズムの典型例と言われてきたが、社会民主労働党の下野(1991年、2006年)に象徴される労働組合の衰退や賃金交渉の分権化など、ネオ・コーポラティズムの著しい衰退が指摘されている。
[編集] 脚注
<references/>
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 山口定 「コーポラティズム」 川田侃・大畠英樹編 『国際政治経済辞典』 東京書籍、2003年。
- 新川敏光他 『比較政治経済学』 有斐閣、2004年。
- 井戸正伸 「コーポラティズムの復権?」 宮本太郎編 『比較福祉政治』 早稲田大学出版部、2006年。
- 宮本太郎 『福祉国家という戦略』 法律文化社、1999年。

