クエーサー

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クェーサー から転送)
クエーサーのイメージ

クエーサー (Quasar、QSO) とは、非常に離れた距離において極めて明るく輝いているために、光学望遠鏡では内部構造が見えないため、恒星のような点光源に見える天体(quasi-stellar object)のこと。Quasar、QSOという呼称は quasi-stellar object(準恒星状天体)を縮めたものである。日本語では準星などと呼ばれていた。スペクトルの電波部分が弱いクェーサーのみを区別してQSOと呼ぶ場合もある。

現在では活動銀河核の一種とされ、性質の類似からクェーサーと比べて比較的に近傍に存在する活動銀河核の一種であるセイファート銀河と同じ種族を形成すると考えられている。

クェーサーのスペクトルは大きな赤方偏移を持っている。この大きな赤方偏移は、クェーサーが地球から極めて高速で遠ざかっていることを意味し、そのためハッブルの法則により極めて遠い場所に存在することがわかっている。クエーサーは非常に遠方にあるのにも関わらず地球からも極めて明るく見えるため、実際の明るさを考えると典型的な銀河の100倍程度のエネルギーを放出していると考えることができる。

クエーサーの中には明るさが急激に変化しているものがある。これはクエーサーの本体が非常に小さいことを示唆している。(天体の明るさが変化する周期は、がその天体の端から端まで横断する時間よりも原理的に短くなれないため、変光の周期から逆に天体のサイズを見積もることができる。)

2007年6月11には最も赤方偏移Zの大きいクエーサーは z = 6.43 のものがカナダ-フランス-ハワイ望遠鏡(CFHT)によって発見された。もしこれより遠くにクエーサーがあれば容易に見つかっているはずなので、我々人類は宇宙に存在する最も遠いクエーサーを観測しつつあるのかもしれない、と考えられている。

目次

[編集] 特徴

今まで観測されている数百個のクエーサーは全て大きな赤方偏移を持っており、その値は 0.06 から 6.4 にわたっている。距離に直すと 240Mpc から 5500Mpc という遠距離に存在していることになり、多くのクエーサーは 1000Mpc 以上の距離にある。これほどの遠距離にある天体の光を観測するということは、現在観測しているクエーサーの光は遠い過去にクエーサーから出た光であり、クエーサーを見ることはそのまま遠い過去の宇宙を見ていることになる。観測されるクエーサーは非常に暗いが、これだけ大きな赤方偏移を生じるほど遠方にあることから、実際にはクエーサーは宇宙に存在する天体の中で最も明るいと考えられている。一般的にクエーサーの明るさは 1038 W(最も明るい電波銀河の光度)から 1042 W に達し、平均的には 1040 W の規模である。これは銀河系の明るさの1000倍、太陽の10兆倍である。

クエーサーは活動銀河の一種と認識される場合が多い。すなわち、クエーサーの放射は相対論的ジェットやローブと呼ばれる構造を持つものもある。クエーサーは電波赤外線可視光紫外線X線γ線のあらゆる電磁波で観測される。

クエーサーはまた、時間とともに明るさが変化(変光)することが分かっている。周期は数日、数時間、中には数週間、数ヶ月、数年というスケールで変化するものもある。短い周期で変化することもあることから、クエーサーは非常に小さな領域からエネルギーを放出していると考えられる。なぜなら、短い周期で変光するクエーサーは、変動が光速以下で伝わると考えられるので、光が光速で進む距離よりも小さいはずだからである。

[編集] 放射の発生機構

クエーサーは活動銀河とほぼ同様の特徴を示すので、多くの研究者がクエーサーの放射を小さな活動銀河と比較してきた。クエーサーの正体として最も有力な説は、クエーサーは大質量ブラックホールをエネルギー源に持っている、というものである。1040 W というクエーサーの平均的な光度を生み出すには、大質量ブラックホールは1年あたり恒星を10個飲み込む計算になる。現在知られている最も明るいクエーサーの場合には、毎年1000太陽質量程度の物質を消費しているだろうと考えられている。またクエーサーは、その周辺の環境によって「スイッチ」が入ったり切れたりすると考えられている。例えば、上に挙げたような割合で100億年も「餌」となる物質を供給し続けることはできないと思われる。こう考えると、我々の近くになぜクエーサーが存在しないのかをうまく説明できる。つまり、クエーサーがガスダストを消費し尽くすと普通の銀河に変わるというわけである。

[編集] クエーサーと初期宇宙

クエーサーは、ビッグバン後に宇宙の再電離が始まった時期についても手がかりを与えている。クエーサーのスペクトルを観測すると、クエーサーと我々の間にある様々な物質による吸収線が見える。この吸収線をガン・ピーターソンテストという以下の手法で調べることで、宇宙の再電離が始まった時期を推定できる。

観測するクエーサーが、再電離が起こるより前の(赤方偏移が大きい)時代にある場合、クエーサー周辺の銀河間ガスは中性水素の状態になっているため、クエーサーのスペクトルを見ると、水素のライマンα線より短い波長の光は中性水素によって全て吸収され、連続的な吸収領域が見える。逆にクエーサーが再電離後の(赤方偏移が小さい)時期に存在する場合、銀河間ガスは全て電離水素になっているため、ライマンα線より短い波長域には連続的な吸収は見られず、クエーサーと我々の間に断片的に存在する中性水素の雲によって所々に鋭い吸収線が密集するライマンαの森と呼ばれるスペクトルを示す。前者のような連続的な吸収域を持つ古いクエーサーは長く見つかっていなかったが、21世紀に入って z = 6 付近のクエーサーが見つかるようになるとこれらのスペクトルにガン・ピーターソン効果による吸収域が発見され、再電離前のクエーサーではないかと考えられている。

クエーサーのもう一つの興味深い特徴は、ヘリウムより重い元素を含むことが分かっていることである。このことは、ビッグバンの後、最初のクエーサーが生まれるまでの間に銀河が恒星(種族IIIの星)を大規模に生成する時期があったことを示唆している。しかし2004年現在、このような第1世代の星が存在した証拠はまだ発見されていないため、今後数年の間にこの種の星が見つからず、重元素を生み出す他のメカニズムも発見されない場合には、現在我々が考えている初期宇宙のシナリオは大きく修正を迫られるかもしれない。

[編集] 観測の歴史

最初のクエーサーは1950年代の終わりに電波望遠鏡によって発見された。多くのクエーサーは可視光では対応する天体が見つからなかったため、電波源として記録された。1960年頃までにこのような天体が数百個見つかり、ケンブリッジカタログ第3版(3C カタログ)に収録された。これを用いて天文学者たちは、これらの天体の可視光での対応天体を探し始めた。1960年、ついに3C48という電波源に付随する光学天体が発見された。電波源の位置には暗く青い星のように見える天体が検出され、この天体のスペクトルが観測された。このスペクトルには正体不明の幅の広い輝線がたくさん含まれており、この奇妙なスペクトルの起源を説明できる者はいなかった。しかし1963年にブレイクスルーとなる発見があった。3C273という別の電波源に同様の可視光の対応天体が見つかり、やはり奇妙な輝線スペクトルが得られたのである。このスペクトルは驚いたことに、水素のスペクトル線が16%も赤方偏移したものだった。マーテン・シュミットによるこの発見は、3C273が時速44000kmという速さで我々から遠ざかっていることを示していた。この革命的な発見によってクエーサーの観測は大きく前進し、他の天文学者たちも他の電波源の輝線スペクトルから赤方偏移を見つけ出した。3C48 は37%の赤方偏移を示していた。これは光速の 1/3 に達するスピードである。

これらの発見とともに、天文学者たちはこの謎の天体を準恒星状天体 (quasi-stellar object) と呼ぶようになり、「クエーサー (Quasar)」という名前が生まれた。後に、全てのクエーサーが強い電波を放射しているわけではない(実際には全体の約10%である)ことが分かり、現在では電波を放射するクエーサーを 'QSR'(radio-loud quasars)、電波を放射しないものを 'QSO'(radio-quiet quasars) と細かく分類する場合もある。

1960年代に大きな議論の的となっていたのは、クエーサーは近傍の天体なのか、それともその赤方偏移が示唆するように遠方にある天体なのか、ということであった。例えば、クエーサーの赤方偏移はハッブルの法則によるものではなく、重力ポテンシャルの深い「井戸」の中から光が放出されているためではないか、という説もあった。クエーサーが宇宙論的な遠距離にあるという説に対する強力な反論として、もしそれほど遠方にあるのなら、クエーサーが放出するエネルギーは膨大な量になり、核融合など、当時知られているどんなエネルギー変換の過程をもってしても説明できない、という問題があった。その頃提案された仮説の中には、クエーサーが未知の安定した反物質からできているとすればその明るさを説明できるだろう、というものもあった。このような反論は1970年代に入って降着円盤のメカニズムが提案されると否定され、今日ではクエーサーが宇宙論的距離にあるという描像はほとんど全ての研究者に受け入れられている。

このように、ほとんどの研究者はクエーサーが宇宙論的距離にある天体であると考えているが、クエーサーが近距離にあるという証拠を挙げている研究者もごく少数はいる。このような立場をとる代表的な研究者はホルトン・アープで、彼は近距離にある通常の銀河と相互作用を起こしているように見えるクエーサーを数多く撮影し、そのような銀河のカタログを作成している。

1980年代に入ると、クエーサーは単に活動銀河の一種であるという統一モデルが提唱され、クエーサーがブレーザーや電波銀河などの他の活動銀河と異なって見えるのは、単純に地球から見た角度の違いに原因があるという見方が広く認知されることとなった。

また、クエーサーの強力な光度は、大質量ブラックホールを取り巻く降着円盤のガスや塵がブラックホールに落ち込む時の摩擦によって生み出されていると考えられている。この物理過程では落ち込む質量の約半分をエネルギーに変換することが可能で、核融合によるエネルギー変換が質量の数%にとどまるのに比べて非常に変換効率が良い。

このメカニズムは、なぜクエーサーが初期の宇宙にのみ見られるのかという問題にもうまく説明を与える。つまり、降着円盤によるエネルギー生成は、大質量ブラックホールの周囲の物質が全て消費し尽くされると停止するのである。このことから、我々の銀河系を含むほとんどの銀河は過去にクエーサーの段階を経験し、現在は中心のブラックホールに質量が供給されていないためにエネルギー放射活動をしない平穏な状態にある、とも考えられる。

[編集] 利用

クエーサーはほぼ無限遠にあり地球に到達する電波は平面波とみなせるので、VLBI(超長基線電波干渉法)を使い2箇所で電波を受信し到達時間のずれを測定すれば2点間の距離が求められ、大陸間の距離、プレートの移動や沈み込み、地球の自転の変動といった大きなスケールを高い精度で測定できる。

ウィキメディア・コモンズに、クエーサーに関連するカテゴリがあります。

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